ダンジョン・ホテルへようこそ! ダンジョンマスターとリゾート経営に乗り出します!

彩世幻夜

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第三章 リゾートを作ろう!

来訪者

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 誰かが、物凄く珍しくダンジョンに入ってきた、と。
 食事中のヴォルティスが言った。

 ちなみに私はダンジョン……と言えばダンジョン内ではあるが、入り口から入ったのではなく突然ダンジョンマスターの部屋に現れたんだから、カウント外であるらしい。

 「周囲の魔物も滅多に入ってこない。1層のスライムじゃ腹は満たせんし、2層のゴブリンも、餌としちゃ不人気な部類だしな。特にこの辺りの魔物のレベルなら、な」

 たまーに迷った冒険者が迷い込んで来る事もあるにはあるらしいが――

 「一人、だな。だが、やすやすと3層を突破しやがった。……どうやら人間じゃない、俺の同族らしいな」

 そして食事が済み、片付けも終わる頃。

 「……来たな」

 サブマスター権限を貰った私にも、それは分かった。
 サブ権限じゃ来訪者のステータスは見られないけど。

 6層のボスが倒され、魔法陣が起動した事は分かった。

 そして、そいつは現れた。

 「よう、ヴォルティス。久しぶりだな。まさかこんなところでショボイダンジョンマスターに落ちぶれてるとは思わなかったが……」

 薄ら笑いを浮かべるイケメン。

 少し粗野な雰囲気のあるヴォルティスと違い、見た目だけはやり手の銀行マンみたいな、乙女ゲームなら眼鏡ドSキャラにされてそうな顔だけイケメン。

 「……チッ、マジで面倒な野郎が来やがったな。で、要件は何だ、ウィリアム。こんなトコまで俺を貶しに来る程マメな野郎じゃ無かっただろうに」

 「あー、うん。俺もお前のツラなんざ見たくもなかったんだが、そうも言ってらんなくなったんたよ、その女の件でな」

 「……何?」

 「お前、つい最近まで寝こけた挙げ句にこのザマだから知らないだろうけどな、先日一族総出でとある儀式を行ったのさ」

 「儀式? ……何もの儀式だか知らんが、それがどう関係あるんだ」

 「我らが王の孫息子、つまり王孫子様のお望みでな。彼がそこいらの女の血は飽きたと。古文書を読み、そこで異世界召喚魔術の存在を知った王孫子様は、異界の娘の血をお望みになった」

 「――おい。異世界召喚魔術は色々欠陥が発覚してお蔵入りになった魔術だろうが。まさか、王族とは言え俺らより遥かに若い者のそんな我儘を聞いたのか?」

 「……お孫様の我儘だけなら退けられただろうが、陛下がその王孫子様を目に入れても痛くない程可愛がっておられてな。莫大な予算と人員をかけて実行を命じた。……欠陥についてご説明申し上げたが、『その欠陥が原因の失敗については許そう』『下手な弓矢も数撃ちゃ当たる』『一度でも成功すれば良い』――とまで言われちゃあねぇ?」

 ……つまり。
 私は、そのワガママ坊ちゃんのせいで、元の世界の全てを奪われたのか。

 事故なら仕方が無いと。
 誰が悪いわけでもないのだからと、一度は宥めた黒い気持ちが。

 私の心の中で一気に吹き出した。
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