上 下
23 / 80
第二章 ダンジョン生活

進化しました?

しおりを挟む
 つぶらな黒い瞳の愛らしいその子は、手乗りサイズのハムスター……キンクマちゃんに似ていたけれど、毛色はキンクマちゃんのベージュよりだいぶ赤に寄った色をしていた。

 ゴールデンハムスターの茶色とも違う。色だけ言えば雄鶏の鶏冠のような赤。

 「ホットマウスじゃないか。……これは変異種じゃないな。寒くない場所なら割とどこにでも居る火鼠モンスターだ」

 ……うん。時折鼻息の代わりに鼻から火の粉が散ってる。

 けど、洞窟ダンジョンに炎系モンスターは……。
 しかもこのサイズ、地面を歩かせたらうっかり踏み潰しそうでコワい。
 調理の火種をお願いするのがメインになりそうだなぁ……。

 「よし、決めた! 君の名前は紅星コウセイね」
 「ちゅー!」
 これで風、土、火と揃った。……基本属性コンプリートまで残るは水、か。

 「けど、私の血を飲んでないのに何で?」

 「だからそれを聞きたいんだ。お前、料理に何かしたか? 飯を食えば体力は戻るが魔力は普通は大して戻らん。……その為の吸血なのだからな。吸血では体力はさして戻らんが、魔力と、回復力が爆発的に上がる。……怪我もしてないから回復力がどうだかは分からんが、魔力の回復が著しい」

 「いや、調理風景はあんたも見てたでしょ。この世界ではとうかは知らないけど、私の元の世界的には特別な事は何もしてない……どころか手抜き料理の域なんだけどね。調味料も食材も設備も、最低限しかないから」

 「あ、お前、スキルは……。――あぁ、分かった。ジョブが進化してやがる、コイツのせいだな」

 ……は?

 「掃除人からランクアップして家事達人ハウスキーパーに変わってる。……新しいスキルも増えてる。このスキルの効果だろうな。お前の作る料理には回復効果や補助効果が付くらしいぞ」

 私のステータスをマスター権限で覗き見したヴォルティスがジト目で私を見る。

 「デタラメ女め……」

 「何よ」

 「分かってるか? ダンジョンマスターの俺の魔力が増えればその分は大半ダンジョンに充てられる。それだけダンジョンが進化するんだ。一応進化には俺の意向が反映される。それを、お前は自分の血を差し出すのではなく料理で可能にした。そして、その食材はダンジョン産だ」

 つまり。犠牲なく、永久機関に近しいシステムを稼働可能にしたも同然――らしい。

 それも、私の血を差し出すならば、健康を慮る意味でもペースは抑えられ気味だったけど。
 料理なら、そんな必要も無く。

 「良いだろう。お前の部屋を用意してやろうじゃないか」
 ヴォルティスはニヤリと笑って言った。
 「もう、ダンジョンから出してやらねぇからな」

 あれ。私、なんかおかしなスイッチ押しちゃった?
 ちょ、ヤンデレスイッチとか、冗談だよね!!??
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうやら異世界ではないらしいが、魔法やレベルがある世界になったようだ

ボケ猫
ファンタジー
日々、異世界などの妄想をする、アラフォーのテツ。 ある日突然、この世界のシステムが、魔法やレベルのある世界へと変化。 夢にまで見たシステムに大喜びのテツ。 そんな中、アラフォーのおっさんがレベルを上げながら家族とともに新しい世界を生きていく。 そして、世界変化の一因であろう異世界人の転移者との出会い。 新しい世界で、新たな出会い、関係を構築していこうとする物語・・・のはず・・。

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

異世界帰りの元勇者、日本に突然ダンジョンが出現したので「俺、バイト辞めますっ!」

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
俺、結城ミサオは異世界帰りの元勇者。 異世界では強大な力を持った魔王を倒しもてはやされていたのに、こっちの世界に戻ったら平凡なコンビニバイト。 せっかく強くなったっていうのにこれじゃ宝の持ち腐れだ。 そう思っていたら突然目の前にダンジョンが現れた。 これは天啓か。 俺は一も二もなくダンジョンへと向かっていくのだった。

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

ようこそ異世界へ!うっかりから始まる異世界転生物語

Eunoi
ファンタジー
本来12人が異世界転生だったはずが、神様のうっかりで異世界転生に巻き込まれた主人公。 チート能力をもらえるかと思いきや、予定外だったため、チート能力なし。 その代わりに公爵家子息として異世界転生するも、まさかの没落→島流し。 さぁ、どん底から這い上がろうか そして、少年は流刑地より、王政が当たり前の国家の中で、民主主義国家を樹立することとなる。 少年は英雄への道を歩き始めるのだった。 ※第4章に入る前に、各話の改定作業に入りますので、ご了承ください。

異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。

彩世幻夜
恋愛
 エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。  壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。  もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。  これはそんな平穏(……?)な日常の物語。  2021/02/27 完結

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

ハズれギフトの追放冒険者、ワケありハーレムと荷物を運んで国を取る! #ハズワケ!

寝る犬
ファンタジー
【第3回HJ小説大賞後期「ノベルアップ+」部門 最終選考作品】 「ハズワケ!」あらすじ。 ギフト名【運び屋】。 ハズレギフトの烙印を押された主人公は、最高位のパーティをクビになった。 その上悪い噂を流されて、ギルド全員から村八分にされてしまう。 しかし彼のギフトには、使い方次第で無限の可能性があった。 けが人を運んだり、モンスターをリュックに詰めたり、一夜で城を建てたりとやりたい放題。 仲間になったロリっ子、ねこみみ何でもありの可愛い女の子たちと一緒に、ギフトを活かして、デリバリーからモンスター討伐、はては他国との戦争、世界を救う冒険まで、様々な荷物を運ぶ旅が今始まる。 ※ハーレムの女の子が合流するまで、マジメで自己肯定感の低い主人公の一人称はちょい暗めです。 ※明るい女の子たちが重い空気を吹き飛ばしてゆく様をお楽しみください(笑) ※タイトルの画像は「東雲いづる」先生に描いていただきました。

処理中です...