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第二章 ダンジョン生活
ヴォルティスの部屋
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そこは、6畳程の、単身者用アパートの様な部屋だった。
……と言っても、先に本人が言った通り、キッチンも風呂もトイレも、いわゆる水回りは一切ない。
ただ、居室の6畳があるだけの部屋。
それも床、壁、天井は全て洞窟ダンジョンそのままで。
部屋にあるのは簡素なベッドとソファ、申し訳程度の小さなテーブル。……それだけ、だった。
暇潰しのパソコンやスマホ、テレビはおろか本すらない。
「眠る事だけは唯一、ダンジョン内に客さえ居なけりゃ出来るからな。一人生真面目にずっと突っ立ってるのもアホみたいだし、固い岩の上でゴロゴロしてもキツイんでな」
「けど、これどうやって運び込んだの?」
「自前で作ったに決まってるだろう」
「え、材料は?」
「ダンジョン内の魔物のドロップ品を弄って、自分で魔物を討伐した。……日々の食事を己の血で賄うような苦肉の策ではあったがな」
う、うわぁ……。
「寝たいなら、ベッド位は貸してやる。ただしこの部屋の中は火気厳禁だぞ。ソファの布張りの布もベッドの布団も糸から作らなきゃいけなくてとんでも無い苦労を強いられたんだ。燃やしたら承知しねぇからな」
う、うん。そりゃそうだよね。
日本じゃ裁縫するにも布は店で買ってくるものだった。
それを、糸から自作……。気の遠くなるような話だ。
「分かった……。取り敢えず外でご飯してから寝るよ」
すると……、豚肉どうするかな、――松明の炎はあるし、直火で炙ってみるか。
――結果。味のしない、表面焦げ気味の豚肉はあんまり美味しくなかった。これなら干し肉のがマシかも、と思ってしまったのは内緒です。
豚肉自体は多分それなりに美味しい肉だったと思うから。あー、せめて塩があれば!
でもまぁ、お腹は満ちた。
さて、寝るか。今日は散々気絶したりなんだりしたけど、あれは安眠とは言えないし、とにかく疲れていたから。
そのベッドがヴォルティスの物と分かってはいたけど。
私はベッドに横になるなり即座に寝入っていた。
「みゅー」
私と一緒に寝床に入ろうとするセイランの温かいもふもふを抱き枕にすれば、そりゃあっという間に眠れるよね。
……そして、私はまた夢を見た。
セイランと夢の中でお喋りする夢。
今日あげたチーズが気に入ったらしく、また欲しいらしい。それを落とすモンスターなら僕が狩るからってさ。
どうもセイランは雑食らしい。
そして、何時間寝たのか――それは分からないけど。
ふと気づいた時、セイランとは別の温もりに気づいた。
慌てて目を開けて。
私は思わず悲鳴を上げたのだった。
……と言っても、先に本人が言った通り、キッチンも風呂もトイレも、いわゆる水回りは一切ない。
ただ、居室の6畳があるだけの部屋。
それも床、壁、天井は全て洞窟ダンジョンそのままで。
部屋にあるのは簡素なベッドとソファ、申し訳程度の小さなテーブル。……それだけ、だった。
暇潰しのパソコンやスマホ、テレビはおろか本すらない。
「眠る事だけは唯一、ダンジョン内に客さえ居なけりゃ出来るからな。一人生真面目にずっと突っ立ってるのもアホみたいだし、固い岩の上でゴロゴロしてもキツイんでな」
「けど、これどうやって運び込んだの?」
「自前で作ったに決まってるだろう」
「え、材料は?」
「ダンジョン内の魔物のドロップ品を弄って、自分で魔物を討伐した。……日々の食事を己の血で賄うような苦肉の策ではあったがな」
う、うわぁ……。
「寝たいなら、ベッド位は貸してやる。ただしこの部屋の中は火気厳禁だぞ。ソファの布張りの布もベッドの布団も糸から作らなきゃいけなくてとんでも無い苦労を強いられたんだ。燃やしたら承知しねぇからな」
う、うん。そりゃそうだよね。
日本じゃ裁縫するにも布は店で買ってくるものだった。
それを、糸から自作……。気の遠くなるような話だ。
「分かった……。取り敢えず外でご飯してから寝るよ」
すると……、豚肉どうするかな、――松明の炎はあるし、直火で炙ってみるか。
――結果。味のしない、表面焦げ気味の豚肉はあんまり美味しくなかった。これなら干し肉のがマシかも、と思ってしまったのは内緒です。
豚肉自体は多分それなりに美味しい肉だったと思うから。あー、せめて塩があれば!
でもまぁ、お腹は満ちた。
さて、寝るか。今日は散々気絶したりなんだりしたけど、あれは安眠とは言えないし、とにかく疲れていたから。
そのベッドがヴォルティスの物と分かってはいたけど。
私はベッドに横になるなり即座に寝入っていた。
「みゅー」
私と一緒に寝床に入ろうとするセイランの温かいもふもふを抱き枕にすれば、そりゃあっという間に眠れるよね。
……そして、私はまた夢を見た。
セイランと夢の中でお喋りする夢。
今日あげたチーズが気に入ったらしく、また欲しいらしい。それを落とすモンスターなら僕が狩るからってさ。
どうもセイランは雑食らしい。
そして、何時間寝たのか――それは分からないけど。
ふと気づいた時、セイランとは別の温もりに気づいた。
慌てて目を開けて。
私は思わず悲鳴を上げたのだった。
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