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第一章 流行らないダンジョン

掃除人、間違ってはいないけど……。

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 「けど、ダンジョンマスターとして、吸血鬼の寿命さえ突破しちゃったヴォルティスと違って、飲まず食わずじゃ私は数日保たずに死んじゃうんですが?」

 「……ダンジョン内のモンスターのドロップアイテムを、人間の食い物に設定する位は今のオレでもまぁ出来ない事はない。せいぜい黒パンと干し肉程度が限界だが」
 「それでお願いします!」 

 「ただし条件がある」
 「……何」

 いや、何となく何言われるか予想はつくけど。

 「お前の血をよこせ。あの程度の量では、長きに渡る飢えを満たすには到底足らん。……命に別状がある程よこせとは言わんが、美味そうな獲物を前に待てが出来る程の余裕もないんでな」

 ……分かってた。分かってたけどやっぱりか!

 「お前の血で俺の魔力が回復すれば、もっとマシな飯をドロップさせられるぞ?」

 「………………、わ、分かった」
 取り敢えずの飢えを癒やすなら黒パンと干し肉でも十分だけど、これからずっと毎日それじゃ飽きるし、そもそも栄養も偏る。

 他に食料入手の手段が無い今は、受け入れる外に無い提案だった。

 「ああ、ついでにそのタウビット、好きに名前を付けて連れて行くといいよ。少なくともスライムやゴブリンよりは強いから、Lv.1の君には良い護衛になるだろう」

 「え?」

 「……お前の職業ジョブはテイマーだろうが」
 「いや、知らんし。元の世界にそんな職業ジョブ無かったし。元の職はしがない掃除のお姉さんだったし」
 「ああ、だからか。サブの職業に“掃除人”てあるの」

 ……はて。
 確かに私はホテルの清掃員として働いていた。
 だから掃除人の呼称も間違ってはいないだろう。

 しかし、先のテイマーと並べて言われるなら、話は別だ。
 ゲーム的職業のテイマーの意味は知っている。

 ――が。
 ゲーム的職業に於ける“掃除人”って何?

 「あ? そりゃアレだ。ダンジョンに付き物の罠の解除だとか、魔物のドロップ品の回収に便利なスキルを習得可能な職業だよ。まぁ、今のガルディアダンジョンに存在する罠なんざたかが知れてるがな」

 ……まぁ、ダンジョンに有利な職業らしい。
 ここはありがたいと思って、とにかく出来る事をやらなければ。
 ヴォルティスに出して貰った装備を早速身に纏い。

 「それじゃ、ダンジョン入り口までワープよろしく!」
 私はようやく初めての冒険に出発するのだった。

 「きゅいきゅいー!」
 「あ、しまった。名前付けるの忘れてた」

 ワープの魔法陣が放つ青白い光の中で思い出す。
 「ま、入口に着いたら考えれば良いか」

 なんて考えた事を。
 直後に大後悔するハメになるとは思いもしなかった。
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