上 下
6 / 80
第一章 流行らないダンジョン

孤立状態のダンジョン

しおりを挟む
 ヴォルティスが言うには、だ。

 「その時は……まぁ、何と言うか……寝ぼけてたんだよ」
 この世界の吸血鬼は基本亜人扱いで、魔物モンスターとは明確に別物扱いされているらしい。

 故に、不老不死ではない。
 不老不死ではない――が。

 「吸血鬼の寿命はおおよそ700~900歳、長寿のヤツは1100歳近いのが居たか」
 ……地球の人間の寿命のおよそ十倍の寿命があるらしい、上に、だ。

 赤ん坊が肉体的に成人するにはおよそ15、6年、精神的にも大人になるには24、5年程かかると言う。……その辺は人と変わらないらしい。
 しかも一度成人した後は一旦体の老化が停止する。
 そして、寿命の約十年前から一気に老化が進む――らしい。

 で、人間以上の膂力に魔力、驚異の回復力がある。

 不老不死ではないが、人間からみたら不老不死に限りなく近い。そんな種族であるらしく。

 「だから、暇を持て余す同胞はそれなりに居るんだよ」
 で。その暇潰しとして最もお手軽な方法が。
 「“昼寝”だな」

 昼寝と言っても、太陽の出ている時間にちょっと惰眠を貪る、と言うスタンダードな意味じゃない。
 あ、この世界の吸血鬼は基本夜行性だけど、太陽の下に出たからって死ぬわけでも、力が弱るなんて事もないらしい。

 ――が。
 彼の言う“昼寝”は、短くて数カ月、長ければ数年に及ぶ、私の感覚じゃ“冬眠”に近いもので。
 その間飲まず食わずなものだから。

 「昼寝から目覚めて……取り敢えず飯にする為街を目指そうとして、たまたま通り掛かった魔素溜まり、それがここだった」

 長い眠りから覚めたばかりで、動きは緩慢だった。しかも空腹で頭もあまり回っていなかった。
 それでも、吸血鬼は強い種族なので、そこらの魔物如きに遅れを取るなど有り得ない。

 ……で、油断したまま魔素溜まり付近を通り掛かったところ。

 「器を求めていた魔素に取り込まれ、俺はダンジョンマスターになり、ダンジョンコアが生まれて――洞窟ダンジョンが発生した。それがこのガルディアダンジョンだ」

 ただでさえお昼寝直後で空腹だったところを、ダンジョンに魔力を粗方食われ、更なる空腹に見舞われたまま囚われた。

 「当然追加の階層を作る魔力なんかある訳がない」

 ダンジョンとは、宝物で冒険者を呼び、蛮勇を誇る冒険者の失敗を誘発し、それを喰らって力とし、成長するものだ、が。

 「このダンジョン周辺に出る魔物は初心者に倒せるレベルの魔物じゃない」
 当然初心者は近寄らないエリアだ。

 そして、そのエリアを歩けるレベルの冒険者は初心者ダンジョンなど当然見向きもしない。

 故にダンジョンは成長しないまま、ダンジョンマスターは空腹を抱えたまま。

 「あれ、じゃあこの魔物タウビットは……?」
 「きゅう?」
 不思議そうに首を傾げた可愛いもふもふの魔物。
 この子の強さは……分からないけど。
 スライムとゴブリンのダンジョンには……似つかわしくないような……?

 「久方振りの食事のおかげか多少魔力が戻った……ら、ダンジョンコアがそいつを生み出した。――つまり、お前の血があればこのダンジョンは成長可能だって事だな」

 ……うん?
 何かヴォルティスがやけにイイ笑顔なんですが。

 どうにも嫌な予感がするのは……気のせいと言う事にしておきたい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し

gari
ファンタジー
 突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。  知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。  正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。  過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。  一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。  父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!  地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……  ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!  どうする? どうなる? 召喚勇者。  ※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。  

異世界で神様に農園を任されました! 野菜に果物を育てて動物飼って気ままにスローライフで世界を救います。

彩世幻夜
恋愛
 エルフの様な超絶美形の神様アグリが管理する異世界、その神界に迷い人として異世界転移してしまった、OLユリ。  壊れかけの世界で、何も無い神界で農園を作って欲しいとお願いされ、野菜に果物を育てて料理に励む。  もふもふ達を飼い、ノアの箱舟の様に神様に保護されたアグリの世界の住人たちと恋愛したり友情を育みながら、スローライフを楽しむ。  これはそんな平穏(……?)な日常の物語。  2021/02/27 完結

魔女の弟子ー童貞を捨てた三歳児、異世界と日本を行ったり来たりー

あに
ファンタジー
|風間小太郎《カザマコタロウ》は彼女にフラれた。公園でヤケ酒をし、美魔女と出会い一夜を共にする。 起きると三歳児になってしまってさぁ大変。しかも日本ではなく異世界?!

異世界に召喚されたが勇者ではなかったために放り出された夫婦は拾った赤ちゃんを守り育てる。そして3人の孤児を弟子にする。

お小遣い月3万
ファンタジー
 異世界に召喚された夫婦。だけど2人は勇者の資質を持っていなかった。ステータス画面を出現させることはできなかったのだ。ステータス画面が出現できない2人はレベルが上がらなかった。  夫の淳は初級魔法は使えるけど、それ以上の魔法は使えなかった。  妻の美子は魔法すら使えなかった。だけど、のちにユニークスキルを持っていることがわかる。彼女が作った料理を食べるとHPが回復するというユニークスキルである。  勇者になれなかった夫婦は城から放り出され、見知らぬ土地である異世界で暮らし始めた。  ある日、妻は川に洗濯に、夫はゴブリンの討伐に森に出かけた。  夫は竹のような植物が光っているのを見つける。光の正体を確認するために植物を切ると、そこに現れたのは赤ちゃんだった。  夫婦は赤ちゃんを育てることになった。赤ちゃんは女の子だった。  その子を大切に育てる。  女の子が5歳の時に、彼女がステータス画面を発現させることができるのに気づいてしまう。  2人は王様に子どもが奪われないようにステータス画面が発現することを隠した。  だけど子どもはどんどんと強くなって行く。    大切な我が子が魔王討伐に向かうまでの物語。世界で一番大切なモノを守るために夫婦は奮闘する。世界で一番愛しているモノの幸せのために夫婦は奮闘する。

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

神の使いでのんびり異世界旅行〜チート能力は、あくまで自由に生きる為に〜

和玄
ファンタジー
連日遅くまで働いていた男は、転倒事故によりあっけなくその一生を終えた。しかし死後、ある女神からの誘いで使徒として異世界で旅をすることになる。 与えられたのは並外れた身体能力を備えた体と、卓越した魔法の才能。 だが骨の髄まで小市民である彼は思った。とにかく自由を第一に異世界を楽しもうと。 地道に進む予定です。

神々の間では異世界転移がブームらしいです。

はぐれメタボ
ファンタジー
第1部《漆黒の少女》 楠木 優香は神様によって異世界に送られる事になった。 理由は『最近流行ってるから』 数々のチートを手にした優香は、ユウと名を変えて、薬師兼冒険者として異世界で生きる事を決める。 優しくて単純な少女の異世界冒険譚。 第2部 《精霊の紋章》 ユウの冒険の裏で、田舎の少年エリオは多くの仲間と共に、世界の命運を掛けた戦いに身を投じて行く事になる。 それは、英雄に憧れた少年の英雄譚。 第3部 《交錯する戦場》 各国が手を結び結成された人類連合と邪神を奉じる魔王に率いられた魔族軍による戦争が始まった。 人間と魔族、様々な意思と策謀が交錯する群像劇。 第4部 《新たなる神話》 戦争が終結し、邪神の討伐を残すのみとなった。 連合からの依頼を受けたユウは、援軍を率いて勇者の後を追い邪神の神殿を目指す。 それは、この世界で最も新しい神話。

じいちゃんから譲られた土地に店を開いた。そしたら限界集落だった店の周りが都会になっていた。

ゆうらしあ
ファンタジー
死ぬ間際、俺はじいちゃんからある土地を譲られた。 木に囲まれてるから陽当たりは悪いし、土地を管理するのにも金は掛かるし…此処だと売ったとしても買う者が居ない。 何より、世話になったじいちゃんから譲られたものだ。 そうだ。この雰囲気を利用してカフェを作ってみよう。 なんか、まぁ、ダラダラと。 で、お客さんは井戸端会議するお婆ちゃんばっかなんだけど……? 「おぉ〜っ!!? 腰が!! 腰が痛くないよ!?」 「あ、足が軽いよぉ〜っ!!」 「あの時みたいに頭が冴えるわ…!!」 あ、あのー…? その場所には何故か特別な事が起こり続けて…? これは後々、地球上で異世界の扉が開かれる前からのお話。 ※HOT男性向けランキング1位達成 ※ファンタジーランキング 24h 3位達成 ※ゆる〜く、思うがままに書いている作品です。読者様もゆる〜く呼んで頂ければ幸いです。カクヨムでも投稿中。

処理中です...