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第一章 流行らないダンジョン

ガルディアダンジョンの実態

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 ……詰んだ。

 そうとしか思えない現状がある、が、残念ながら少なくとも私はまだ生きている。
 今はまだ空腹も喉の渇きも感じていないが、このまま餓死にしたくないなら最低限水と食料は必要だ。

 そして、出来るならば暖かい服もほしい。
 暖かい寝床も。

 更に贅沢を言えば、お風呂……せめてシャワー……それもダメなら水浴びでも良い、汗を流したいし、用を足すにはどうすれば良い?

 ただ生きるだけでこれだけの課題がある。

 さて、そこで注目すべきは先程この男が口にした“ダンジョン”のワード。
 地球の現実世界には存在しないが、RPGゲームではメジャー過ぎる代物だ。

 ゲームでダンジョン攻略といえば。

 基本、魔物を倒して経験値とドロップアイテムを得て。
 ダンジョンの罠をかいくぐり宝箱を見つけ。……運次第とはいえ、レアアイテムなんか見つけちゃったりして。
 ボスを倒してそのご褒美に更なるレアアイテムゲットを目指す。

 ――そう言う場所の、はずだ。

 「アンタ、ダンジョンマスターって言ったわよね。だったら。レアアイテムなんて我儘は言わないからさ、宝箱から出す最低限実用に耐え得るクラスの武器や装備を出せない? ついでに私のステータスが見れるって言ったわよね。そのステータス、このダンジョンの最弱モンスターと戦える程度にはあるのかしら?」

 私はしがない清掃員で、勿論剣道やら格闘技など習ったことはないし、ブルーカラーな仕事だから基礎体力は最低限持ち合わせているけど、運動神経は平均のちょい下。

 ゲーム的冒険者稼業なんてガラじゃない。
 むしろ今流行の縁の下の力持ち的ポジション希望なんだけど、今日のご飯と安眠のためには戦わなきゃいけないみたいだし。

 だから、ヴォルティス相手にガンガン要求を突きつける。

 遠慮なんかしてる余裕は無い!

 「……ガルディアダンジョンは三階層。一階層はスライムしか居ない。二階層はゴブリン。三階層はボス部屋でオークとゴブリンのパーティが待つ。まぁ、いわゆる超初心者ダンジョンだ」

 ふむふむ、某国民的RPGゲームの定番モンスターですね。それも超序盤の……。

 「これが二階層で見つかる宝箱に入っているレアクラスの武器だ。……ちなみに宝箱はノーマル、レア、スーパーレアの三種類がある」

 そうして出されたのが。
 「鉄の剣と革の鎧、ですか……」
 ヒノキの棒と布の服よりかは若干マシではあるけれど。

 いや、まぁ相手がスライムとゴブリンなら問題ないか……?
 ボスのオークは若干不安だけど……

 「つーか、ダンジョンそのものがショボくない?」
 さっき散々高貴だとか誇りがどうとか言ってたくせに!

 「……俺の資質と、未熟なダンジョンコアの性能に関連性は無い。故に、このダンジョンがショボ……ゲフン、初心者ダンジョンクラスに留まっているのは俺のせいではない!」
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