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第十二章
婚約の承認
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「そうだ。ノアは普段から定期的な吸血を必要とする程に、色濃く我らが先祖の血を継いでしまった。他にもあまり長く強い日差しの当たる場所に居られんかったりと弊害は多々ある。……それを知ればそなたらは今の様な目をノアに向けたであろう?」
王の答えに、今まさにその様な――恐れや嫌悪の眼差しを向けてしまった貴族は反論の言葉を咄嗟には紡げず。
「大人になった今ならその様な扱いも適当に受け流せるであろうが、幼い内はただでさえコントロールの難しいアレコレを抑えながら貴殿らの偏見にも耐えよと言うのは、酷であろうと考えた余の独断である」
「では、その娘は……何故……? 知っていて婚約者に? いや、当初の婚約者はアゼル様で……」
「ああ。これがまだ幼児だった頃、城で秘密を保持するのが難しくなった事があった。その際、ノアを預けたのがかの辺境伯領だった。当主らが常に王都に居る事は知れておったし、念の為と直属の影を潜入させておったので丁度良いと考えてな。しかし、その際に事故でこれの正体が精霊姫にバレてしまった。……吸血衝動を堪えきれず、精霊姫から血を吸った、と。と同時に精霊姫はそれでもこれに嫌悪を示さなかったと」
その言葉に貴族らは驚愕の表情を浮かべる。
「そのままノアの婚約者にしてしまえば良かった、と今なら思う。が、ノアを公の場に出していなかった当時、病弱だと思っていたアゼルの後ろ盾に欲しいと、余はアゼルとの縁談をまとめた。……我ながら大失策であったと後悔しておる。結果、アゼルは精霊の怒りを買った。故にノアを後釜にした訳だが。そのノアを、彼女はこうして体を張って支えてくれている。余は、この婚約を心から祝福したい」
王はそう言い切って。
「彼女の襲爵と同時にノアの身分を一般に明かし、結婚式を執り行う。――これに、反対の者は居るか?」
「し、しかし……、その娘はあの悪名高き辺境伯の……。いくら精霊姫であっても、王族との婚姻は……」
「ほう、確かそなたには娘が居たな。その娘をノアの嫁にしたいのか?」
「へ? い、いえ! そんな畏れ多い……!」
「畏れ多い? そなたの家は侯爵家でも歴史も長く幾度も王女が降嫁しておるではないか。家格としては確かにかの辺境伯より上であるぞ?」
「で、ですが……」
「吸血鬼の血を濃く継ぐノアに娘をやりたくないと、素直に言えばいいものを。それで、他にノアが欲しい者は居るのか? 居ないなら、皆この婚姻に反対はできまい?」
こうして。
少々――いや、かなり強引ながら、私達の関係は貴族達に認められ、近く一般にも公にされることが決定したのだった。
王の答えに、今まさにその様な――恐れや嫌悪の眼差しを向けてしまった貴族は反論の言葉を咄嗟には紡げず。
「大人になった今ならその様な扱いも適当に受け流せるであろうが、幼い内はただでさえコントロールの難しいアレコレを抑えながら貴殿らの偏見にも耐えよと言うのは、酷であろうと考えた余の独断である」
「では、その娘は……何故……? 知っていて婚約者に? いや、当初の婚約者はアゼル様で……」
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その言葉に貴族らは驚愕の表情を浮かべる。
「そのままノアの婚約者にしてしまえば良かった、と今なら思う。が、ノアを公の場に出していなかった当時、病弱だと思っていたアゼルの後ろ盾に欲しいと、余はアゼルとの縁談をまとめた。……我ながら大失策であったと後悔しておる。結果、アゼルは精霊の怒りを買った。故にノアを後釜にした訳だが。そのノアを、彼女はこうして体を張って支えてくれている。余は、この婚約を心から祝福したい」
王はそう言い切って。
「彼女の襲爵と同時にノアの身分を一般に明かし、結婚式を執り行う。――これに、反対の者は居るか?」
「し、しかし……、その娘はあの悪名高き辺境伯の……。いくら精霊姫であっても、王族との婚姻は……」
「ほう、確かそなたには娘が居たな。その娘をノアの嫁にしたいのか?」
「へ? い、いえ! そんな畏れ多い……!」
「畏れ多い? そなたの家は侯爵家でも歴史も長く幾度も王女が降嫁しておるではないか。家格としては確かにかの辺境伯より上であるぞ?」
「で、ですが……」
「吸血鬼の血を濃く継ぐノアに娘をやりたくないと、素直に言えばいいものを。それで、他にノアが欲しい者は居るのか? 居ないなら、皆この婚姻に反対はできまい?」
こうして。
少々――いや、かなり強引ながら、私達の関係は貴族達に認められ、近く一般にも公にされることが決定したのだった。
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