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第八章

明暗の逆転 - 側妃視点 -

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 「ああ、陛下。此度の件、誠に申し訳御座いません。全ては私の責任に御座います」

 往生際の悪い息子が王の兵によって退室させられていく。

 アゼルは側妃である私が生んだ子だ。
 双子としてほぼ同時に生まれたノアはそれを冷めた目で見送る。

 「――そなただけのせいではあるまい。少なくともノアは生まれついての事情を除けば真っ当に育ってくれた」
 その事情からこれまで公には居ない者とされてきたもう一人の息子。

 異形の血を引く王家と言っても彼程強くその特徴が出た者はここ数代居らず持て余し、逆にアゼル程全く特徴が現れなかった者もまた居らず、少々過保護にしすぎてしまった。

 何しろ二人が揃って双子として生まれてこず、どちらか片方だけだったら。私の不貞が疑われかねない、そういう事態だったのだから!

 居ない者とされてきたノアより、私はアゼルを可愛がり甘やかした。
 我儘放題だと、問題になった時点で陛下にご相談申し上げていれば、もっと早く、もっと別の選択肢もあっただろうに。

 「陛下、私はあれと共に離宮へ宿下がり致したく存じます」

 せめてもの罪滅ぼしだ。
 「……そうか」

 「王妃陛下。大変勝手なお願いでは御座いますが、もう一人の息子の事、よろしくお願い申し上げます」
 「――愚か者は一人で沢山。これ以上精霊を怒らせる訳には参りません」

 私は愚かな母親。それで良い。

 「――ノア」

 こう彼を呼ぶのはこれが最後かもしれない。

 「……元気で。レーネ様の事、大事にするのよ」
 「言われるまでもありません」

 とうに覚悟を決めた顔でノアは言った。

 ……可愛い子には旅をさせよ、という格言があるけれど、あれは本当だったようですね。
 私は色々間違えてしまったのですね。

 私は息子の未来が明るい事を願いながら、王のもとを下がらせていただきました。
 きっと後宮の者は私を笑うのでしょう。それを恐れた結果が今なのですから、卑屈な私にやはり責任の一端があるのでしょう。

 息子達の道を尽く狂わせた、愚かな妃。
 願わくば、今後の世代に私の子達の様な子供が生まれた際、同じ轍を踏まぬ様、日記でも残して行きましょうか。

 二度と、哀れな子が育たぬ様に。
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