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第七章

優雅でない船旅

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    一泊二日の船の旅。

    今回は王子も居るとはいえ、少なくとも名目上は学校行事の一環なので、専用の船ではなく、いつも荷物を島に運んでいる商船兼客船を使っての旅だ。

    私はこの春学校に行く為に島を出るのにこの船を使った。そして私は島の領主の娘で、他に伯爵家の人間の居ないあの島で唯一の貴族で、『精霊姫』だった。

    当然の様に特別室が用意されようとしていたけど、グレストも居たし、雑魚寝部屋やカプセルホテルの様な部屋は御免だけど、一人でスイートルームも寂しい。だからグレストと同じ、普通の個室を使っていたんだ。

    「……なんだ、この狭い部屋は」

    この船のスイートには、ツインの寝室が二部屋とリビング、専用の風呂、洗面所、トイレが付いている。
    ちなみに以前私が使った個室には、寝台一つと机が一つ。風呂もトイレも洗面所も船の共同のを使っていた。
    二段ベッドの部屋だってあるのに、ここのベッドは個室のより大きいし、勿論二段ベッドでもない。

    男子部屋と女子部屋で綺麗に分かれられるし良いよね?
    とへらりと笑ったローデリヒ以下の同行者は例の個室を使うらしい。……使うふりして天井裏辺りに居ても驚かないけど。

   「以前乗った船より随分と狭いではないか!」

    ……そりゃ、ね。
    スイートって言っても基本は裕福な大商人を想定して作られた部屋だ。
    アンタが前に乗って来た王様専用の船と一緒にするなや……。

   「しかも相部屋だと?    個室を用意しろ!」

    ……ここはスイート、ツインルームは相部屋とは言わないよ。本当の相部屋や増して雑魚寝部屋なんか見たらアゼルは何と言うだろう?

    「エコノミー部屋とツーリストの部屋の空きはあったかしら?」
    私はウチの影執事に尋ねる。
    ――この船の最終責任者は伯爵家だ。
   彼に尋ねれば答えは返ってくる。
   「はい。荷物はともかく客にかんしては閑散期ですからな」

   「――では王子、せっかくの機会ですので民の暮らしをご見学くださいませ」

    彼の我が儘にプチっと血管の切れかけた私はアゼル含めメンバーを連れ出し、カーペット敷きの雑魚寝部屋と二段ベッドにカーテンを付けただけの真の相部屋を見て貰う事にした。

   「あれ、レーネ姫じゃねぇか、もう夏休みかい?」
    まずはエコノミー部屋から……と、その部屋の並ぶ廊下を歩いていると。
    「おお、久しぶりだな。学校はどうだい?    俺らは姫さんのお陰で儲けさせて貰ってるからなぁ!    また新しい商品案、待ってるぜ」
    「くくくっ、帰ってアクアに会ったらビックリすると思うぜぇ?    ははははは!」

    見慣れた顔に取り囲まれた。
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