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第六章
アゼルのトリセツ
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そもそも。
アゼルはノアと双子の兄弟として生まれた。一応アゼルの方が兄とされているが、ノアの存在はそもそも公にはされていないから、あまり意味はないのだけど。
何故そんな事を――と言えば、この兄弟が“訳アリ”だからだ。
王家に僅かに混じった吸血鬼の血をこれ以上なく色濃く継いだノアと、全くと言って良い程受け継げなかった双子。
血を受け継がなかった双子の兄は、つまりごく普通の人間だった。……が、王家のお世話係は多少の血の濃さの違いはあれ、基本身体は丈夫に出来ている子の面倒を見るのに慣れすぎていた。
故に、すぐ病を患うアゼルを病弱と見なし甘やかした。
……普通の庶民の子なら、幼児まではすぐに風邪を引いて熱を出したり、おたふく風邪やら水ぼうそうやらの子供特有の流行り病なんて珍しくもなく、それだけで病弱扱いなんてあり得ないのに、だ。
何しろ王族は――アゼルの兄二人も、父も祖父もそんな病とは無縁だったのだ。勿論、公になっていない双子の弟も。
そして、彼は王族ではあるが、第三王子で既に兄が上に二人居て、王位には遠い存在だった。
だから、兄の様に厳しい教育を受けずに済んだ。
しかもその簡単な勉強でさえ嫌になれば“気分が悪い”と逃げ出す事も容易だった。
片や双子の弟はその特殊な生まれと体質の為、兄達とは別の意味で厳しい教育を受けていたが、兄弟別々に育てられていた為、そんな事とは知らずにただ噂だけを信じ、自分の方が弟のノアより優秀だと信じて疑わない。
……流石に全ての成果が公になる兄二人には敵わないと事実は理解していた様で、公の場で彼らに膝を付き頭を下げるのは嫌々ながらもやらなければ不敬罪、だからやる。
けれど弟や臣下に対しては絶対に謙らないし、ましてや使用人には偉ぶるだけで労る事を知らない。
王やその側近の前では良い子ぶるから、彼らはアゼルの酷さの一端程度しか知らない。
だから気軽に“婿に”等と言えたのだ。
――流石に先日の旅行とこの間の決闘騒動で王様もようやく気付いた様だけど……
「いや、今までアゼルの上澄みしか知らなかったのが、ようやく化けの皮一枚剥いだ姿を見ただけだよ、あれは。あいつの面の皮はそんな薄くないよ」
……これは……もう、言葉の通じない幼児を相手にする覚悟をするしかないのか。それも躾の悪いチビッ子ギャングと戦う覚悟を。
「料理長には、当分消化の良いスタミナ料理を中心にしたメニューにする様に注進しておきます」
できる従者はすぐに私の胃を心配する。
ああ。もっと勉強したいのに。貴重な青春が無駄な仕事に費やされていく……。
アゼルはノアと双子の兄弟として生まれた。一応アゼルの方が兄とされているが、ノアの存在はそもそも公にはされていないから、あまり意味はないのだけど。
何故そんな事を――と言えば、この兄弟が“訳アリ”だからだ。
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そして、彼は王族ではあるが、第三王子で既に兄が上に二人居て、王位には遠い存在だった。
だから、兄の様に厳しい教育を受けずに済んだ。
しかもその簡単な勉強でさえ嫌になれば“気分が悪い”と逃げ出す事も容易だった。
片や双子の弟はその特殊な生まれと体質の為、兄達とは別の意味で厳しい教育を受けていたが、兄弟別々に育てられていた為、そんな事とは知らずにただ噂だけを信じ、自分の方が弟のノアより優秀だと信じて疑わない。
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けれど弟や臣下に対しては絶対に謙らないし、ましてや使用人には偉ぶるだけで労る事を知らない。
王やその側近の前では良い子ぶるから、彼らはアゼルの酷さの一端程度しか知らない。
だから気軽に“婿に”等と言えたのだ。
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「いや、今までアゼルの上澄みしか知らなかったのが、ようやく化けの皮一枚剥いだ姿を見ただけだよ、あれは。あいつの面の皮はそんな薄くないよ」
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「料理長には、当分消化の良いスタミナ料理を中心にしたメニューにする様に注進しておきます」
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