上 下
60 / 159
第六章

侍女になります!

しおりを挟む
    「後ろで立っていなさい!」
    ……なんて。サ○エさん家のカ○オ君やドラ○もんのの○太君とか、アニメの世界ではあっても、ここ最近の学校じゃ体罰だ何だで、こんな事があったらニュースになるレベルの大問題だけど。

    騎士、及び侍女侍従にとってこれは必要な訓練の一環なのです。
    騎士の基本のお仕事――特に近衛隊に配属された騎士は立ち番や歩哨がメインの任務になります。
    侍女や侍従も主人に仕事を言いつけられない限りは部屋の隅で目立たず気配を消して立って待機がデフォルトです。
    これが出来ないと、いくらお茶を淹れるのが上手くても、主人の着付けや髪のセットや化粧が出来ても傍付きにはなれません。

    と、言う訳で。
    運動部ではないけれど、部活初日、私達一年生には「取り敢えず立ってろ!」と命じられ、上級生のお茶淹れ講習の見学をしました。

    ですが、これまで侍女・侍従に世話されるのが当たり前だった貴族の坊っちゃんやお嬢様にはこれが結構な苦行だった模様で。

    私?
    私は昔からアクアと一緒に船に乗ってましたからね。漁には加われなくても揺れる船の甲板に立って毎日見学してましたから。
    揺れない平らな床の上で立つ位は楽勝ですよ?

    「まぁ、流石騎士様と決闘をなさる野猿は体力だけはある様ですわ」
    「『精霊姫』と言っても、要はど田舎の森の中を猿のように駆け回るお仕事なのでしょう?」
    「第三とはいえよくその様な立場で王子と婚約等出来ましたこと……」

    おいおい、あの決闘騒ぎを見て尚言うかい、君ら?
    あんな男、いつでもアンタ達にノシ付けて差し上げますのにね?

    まだ当分、新入生の私達はひたすら姿勢良く立つ訓練の繰り返しらしい。そしてそれに音を上げて別の部に移っていくリタイア組は毎年そこそこ出るらしい。
    ……厳しい部あるあるだな。

    あの子達、初回から私の嫌みを言って満足してるようじゃ、続かないんじゃないの?
    なんて。私の心配する事じゃないか。

    それより私は図書館で勉強がしたいんだ。

    煩い椋鳥ムクドリみたいなご令嬢達を尻目に、私は静かな図書館へ移動する。

    「個室を借りたいんですけど」
    「はい、では2番の部屋へどうぞ」
    鍵を借りて部屋に入る。
    二畳程の部屋に机が一つ。足元に屑籠と空調の吹出口。机の上には卓上ランプ。
    窓の外の景色はグリーンが主となり色とりどりの花が目を楽しませてくれる。

    早速書棚から本を借りてきて机に積み上げる。
    ただでさえ静かな図書館は、個室の扉を閉めれば本をめくる音すら大きく聞こえる程に静かで。

    この贅沢な空間だけは、あちらの学校には無いものだ。勉強に集中するにはもってこいの環境で、私は勉強に没頭するのだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

処刑された悪役令嬢は、時を遡り復讐する。

しげむろ ゆうき
恋愛
「このバイオレットなる者は王太子であるフェルトの婚約者でありながら、そこにいるミーア・アバズン男爵令嬢や隣国の王太子にロールアウト王国が禁止している毒薬を使って殺害しようとしたのだ。これは我が王家に対する最大の裏切り行為である。よって、これより大罪人バイオレットの死刑執行を行う」 そして、私は断頭台で首をはねられたはずだった しかし、気づいたら私は殿下の婚約者候補だった時間まで時を遡っていたのだった……

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!

アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。 「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」 王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。 背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。 受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ! そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた! すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!? ※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。 ※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。 ※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!

みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した! 転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!! 前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。 とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。 森で調合師して暮らすこと! ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが… 無理そうです…… 更に隣で笑う幼なじみが気になります… 完結済みです。 なろう様にも掲載しています。 副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。 エピローグで完結です。 番外編になります。 ※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。

断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!

ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」 ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。 「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」 そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。 (やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。 ※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。

悪役令嬢らしいのですが、務まらないので途中退場を望みます

水姫
ファンタジー
ある日突然、「悪役令嬢!」って言われたらどうしますか? 私は、逃げます! えっ?途中退場はなし? 無理です!私には務まりません! 悪役令嬢と言われた少女は虚弱過ぎて途中退場をお望みのようです。 一話一話は短めにして、毎日投稿を目指します。お付き合い頂けると嬉しいです。

転生令嬢の涙 〜泣き虫な悪役令嬢は強気なヒロインと張り合えないので代わりに王子様が罠を仕掛けます〜

矢口愛留
恋愛
【タイトル変えました】 公爵令嬢エミリア・ブラウンは、突然前世の記憶を思い出す。 この世界は前世で読んだ小説の世界で、泣き虫の日本人だった私はエミリアに転生していたのだ。 小説によるとエミリアは悪役令嬢で、婚約者である王太子ラインハルトをヒロインのプリシラに奪われて嫉妬し、悪行の限りを尽くした挙句に断罪される運命なのである。 だが、記憶が蘇ったことで、エミリアは悪役令嬢らしからぬ泣き虫っぷりを発揮し、周囲を翻弄する。 どうしてもヒロインを排斥できないエミリアに代わって、実はエミリアを溺愛していた王子と、その側近がヒロインに罠を仕掛けていく。 それに気づかず小説通りに王子を籠絡しようとするヒロインと、その涙で全てをかき乱してしまう悪役令嬢と、間に挟まれる王子様の学園生活、その意外な結末とは――? *異世界ものということで、文化や文明度の設定が緩めですがご容赦下さい。 *「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも掲載しています。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

処理中です...