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弐ノ巻

宝物探し 〜 王ノ巻 〜

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 「……して、どうなさるのです?」

 仏の御石の鉢を結納品とすれば婚姻話を受け入れる。

 その文を受け取った王は。
 「ふん、確かに美しい姫ではあるが、所詮竹取百姓の小娘よ。余らの様に優れた審美眼等持つまいよ」
 薄ら笑いで答えた。が、その直ぐ後で面倒臭そうに顔を顰めた。

 「……とは言え流石にそこらの鉢を持てば、他の公達に笑われかねん」
 小娘の目は簡単に誤魔化せても、もしもその宝物が今後、他の公達の目にも留まる様な場所に飾られでもすれば?

 “本物”と言って差し出すのだから、彼女の物となった後にあまり下手にしつこく「飾るな」と命じるのも不自然だ。

 「で、あるからして、だ。手の空いている者に命じて、由緒正しい寺を回らせよ。ありがたそうな古い鉢を見つけるのだ。複数みつかれば、余自ら、よりありがたそうな鉢を見繕ってやろう。さすればあの娘は余の物。今から楽しみだのう」

 「――よろしいので?」

 「ふん、余は王だ。遣唐使ですら命懸けと言われ嫌われるのだ。さらにその先、どれだけかかるか分からん場所になぞ行けるか!」

 かくして。
 王の命を受けた者たちが各地に散った。
 とは言えほぼ徒歩の旅、それも場所によっては道なき道を行く旅は、大陸に渡るよりは多少マシ、と言う程度のもの。

 近場の紀伊や近江であればそう時は必要ないが、出雲国やましてや筑後など……。

 一応、建前としては天竺まで旅をしている事になっている為、下手に外出も出仕も出来ずに王は退屈を持て余す事となった。

 その暇に任せて好き放題飲み食いをした結果、彼の身体は随分とふくよかになり。

 ようやく出揃った鉢の候補に、王は遠くうしとら(東北)の方角にある出羽近隣の寺院にあった、見るからに古いと、どんなに学の無い者にもひと目で分かる、しかし候補の中では美術的価値のありそうな鉢を選び、仰々しく桐の箱に入れて丁寧に包装させた。

 「さあ、誰ぞ先触れを。かぐやは余のものよ」

 ――しかし。
 まさか自分と似た様な事を考えた公達が他にも居たとは。
 この時の王はこれっぽっちも思ってはいなかったのだ。

 そして、翁の家の前でその者と鉢合わせし、共に宝物を見せ合う事になる等。
 知る由もないまま、王はうきうきと車に乗り込むのであった。
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