「君が手に入るのならば」※短編詰め合わせ※

恭谷 澪吏(きょうや・みおり)

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「precious love-01」

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最近、藤原から誘いのメッセージが、来ない。
『ニューアルバム作成の為の充電期間』として3週間の休みが入っていた。たまに進捗状況を確認するメッセージは入るが、個人的な連絡は一切、来なかった。心が休まるような、不安なような、気持ち。
(このまま消えちゃうんじゃないかな)
藤原に体を渡しているうちは、ユーリピオンズのメンバーでいられる。逆に言えば藤原が竹田を求めなくなったら、自動的に終わりの可能性が、非常に高かった。綱渡りのような、関係。けれど自分から誘う様な真似は、死んでも出来ない。プライドが、許さなかった。
『千鳥ヶ淵の ボート乗り場で 君だけがいない夏です』
自分の曲の、着信が鳴る。藤原からだった。
「はい、竹田です」
(藤原、曲、出来てる?)
「うん、まあまあかな」
(相談したい事があってさ、うちに来てくれないかな)
お誘いが、ある。心臓がばくっと、跳ねた。
「いいよ、いつ?」
(これからとか、都合悪い?)
「いいよ、じゃ、そっちに行くわ」
(ギター、持って来てくれる?出来ればアコギ)
「おっけー」
アコースティックギターを、ケースに入れて背負う。帰りはおそらく、背負える体ではないだろう。覚悟を決めて、ドアを開けた。

「いらっしゃい」
「これ、お土産。ハイネケン」
「サンキュー」
当たり前のように1本取ると、プシュっと開けた。竹田にも、勧めて来る。有難く飲む事にした。
「今、3曲くらい迷ってるのがあって・・・。ちょっと合わせてくれる?」
パソコンで書かれた、楽譜。専用のソフトが必要なため、メッセージアプリでは開けないので、呼んだようだった。アコースティックギターで合わせながら、ハミングする。
「・・・いい声だな、竹田」
「それは、どうも。一応プロで歌わせて頂いてます」
軽口にけたけたと笑いながら、藤原がウッドベースを手に取った。アコースティックギターと、ウッドベースのセッション。
「聞かせて 君だけの メロディー・・・」
「あ、いいなその歌詞。使わせてもらうよ。仮タイトルは、『メロディー』。他、2曲の作曲、アレンジを手伝った。
「うん、いい曲になった。ありがとな、竹田」
「どういたしまして。歌詞早くつけてよ、歌いたいな」
「竹田は最近、どうしてる?曲出来てる?」
ビールを飲みながら、雑談が続く。アーモンドの小袋を、竹田が差し出した。有難く、頂く。
「バラードのいいのが、出来なくてなあ・・・」
「無理に考えなくてもいいんじゃないのか?出来る時は、出来るよ」
「んーでも今回のアルバム、ちょっと同じような曲が多くてさ」
「なら、似たようなのは次に使えばいいじゃないか。またアルバム予定、あるだろ?本当にストイックなんだから・・・」
少し、目がとろんとしている。酔っぱらってきたようだ。底なしの酒飲みである竹田は、まだ、どうもない。
「な、なあ、藤原?・・・今日は、・・・しない、のか?」
「んー?なんのことぉ?」
トレードマークの帽子を被らないと、藤原は幼く見える。顔が、赤くなっていた。
「え、え、エスエム・・・」
「酒飲んだら危ないから、出来ないよ。今日はする気、なかったし」
目が、泳ぐ。これでは自分から求めているようで、恥ずかしすぎた。
「なぁに、竹田ぁ、欲しかったの?」
「や、そんなわけ、な・・・」
「解ってるんだよ」
藤原がキスを、する。初めて唇から舌が、出て来た。酔った勢いもあり、うっとりと受け止め、舌を絡ませる。堪らない。男とキスをした事など、なかったのに。
「竹田の中にはな、被虐の相がある。最初から、解ってた。初めて、欲しいと思った」
ソファに寝転び、にやにやしながら、話す。もう一度、唇を重ねた。
「明日、来いよ。・・・それと、駅前のアジアン雑貨の店で、ジンジャー(生姜)の香りのお香、買ってきて」
千円札を一枚、くしゃっと渡されて、家に帰された。

翌日。
傷痕が目立たないように濃い紺色のタートルネックを身に着け、革ジャンを羽織る。下は、揃いの革パン。少しオーバーサイズのブーツを、履く。足に何かされたら、きつめの靴は、もう履けない。
(・・・出るか)
頬を叩いて、覚悟を決める。藤原の家に、向かった。今日はアルコールは、買わない。ジンジャーのお香も、手に入れた。千円渡されたので高い物かと思ったが、200円くらいで呆気に、取られる。
「・・・来たか」
「ああ」
これ。お香の入ったビニール袋につり銭を放り込み、渡す。サンキュ、と律儀に藤原が言い、受け取った。
「先に部屋、入ってて。用意してくる」
「うん・・・」
正直、気が重い。熱いのにも痛いのにも、反応してしまう自分の身体が心底嫌だった。豆絞りのタオルを抱えて、藤原が部屋に入って来た。
「欲しかったんだろ?全部脱げよ」
「・・・うん」
言われて渋々、服を脱ぐ。期間があいてしまったので、随分体は綺麗に、戻っていた。オイルを直接垂らされて火をつけられたところが、ぶよぶよになっている以外は。
「どうされたい?」
珍しく、藤原が聞いて来る。目を、閉じた。
「う・・・解らない・・・」
「なら、身体に訊いてやろうか」
そう言うと、腕を前に出させ、豆絞りのタオルで縛り上げる。腕を、いつも吊りプレイに使っているウッドベーススタンドに、ひっかけた。ちょうど正座から少し、身体が浮くくらい。
「顎、あげとけよ」
ぎっ、ぎっ、とスタンドが揺れる。藤原が補強に補強を重ねているため、体重65キロの竹田が全体重をかけて暴れても大丈夫なようになっている。いつも使っている、ギターストラップを二つ折りにして、構える。今日はそれに、長さ調節用の金属を、はめ込んでいた。
「ほらっ」
バシっ。強烈な音と共に、血が飛び散った。
「あぁぁ・・・」
「金属つけて叩くと、血が飛ぶんだよ、最初から」
何度も何度も、打ちのめす。その度に胸から、腹から、血が噴き出していた。量は大したことはなくても、おどろおどろしく竹田を怯えさせるには、十分だった。
「ははっ、腹も胸も血まみれだ」
「あぁ・・・はぁ・・・」
「綺麗だよ、竹田」
次は背中な。そう言うと藤原が、消える。すぐに鋭い鞭が、降って来た。スタンドをぎしぎしと鳴らしながら、耐える。たまに漏れる声が、相変わらずセクシーだった。100発ほど叩きのめすと、藤原が満足そうに、笑った。
「どうだ、いい声聞かせてくれて、有難うな」
ほら。姿見のキャスターを引いて、持ってくる。全身から血を噴出させている自分が、映っていた。ぼんやりとそれを眺めていると、藤原が頭に手を乗せて、言った。
「歌ってる竹田も、好きだよ。ギターを弾いている姿も。けど、俺が一番好きな竹田は、ここに映ってる、竹田だ」
「・・・そりゃ、どうも」
「ちょっと準備するから、待ってて」
足が、痺れている。手を解いて欲しかったが、そのような素振りは全く見せて、くれなかった。仕方なく、耐える。
「ほら、さっき買ってきてくれた、これ」
10本ほどのお香を、丁寧に縛ってある。本当に藤原は手先が器用だ。ちょうど10円玉くらいの、大きさ。Zippoで一気に、火をつけた。
「焼き印、入れてやるよ」
言うが早いか下腹部に、押し当てる。
「ひ、あぁぁぁぁっ!!」
ジュゥゥゥッと肉の焦げる音、豚の生姜焼きの、匂い。すぐには離してくれないから、おこうとはまた違う煙が、出て来た。
「ふふっ、綺麗に痕がついてるぞ」
良く見えないが、穴があくほど深くえぐれているようだ。続けて陰茎の、ピアスが入っていない場所を慎重に選んで、押し当てる。
「うぁ、あぁぁっ、やぁぁぁっ」
「大丈夫だぞー、チンポは治りが、早いから」
「ゆっ、許してっ、おねがっ」
「俺が今まで許してやった事なんて、ある?竹田は耐える事しか、許されてないんだよ」
嬉しそうに笑いながら、根元から亀頭まで、ピアスの入っていない所は全て、焼き尽くされる。どす黒い水膨れが次々に、出来ていた。
「はっは、見ろよ竹田。チンポ、勃起させてんぜ」
「そ、んな・・・」
「おかげで裏筋にも、押し当てられるな、サンキュ」
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