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春とコンビニ吸血鬼
しおりを挟む私の街にやっと春が来た。
それと同時に季節遅れのインフルエンザが大流行。
両親と弟が寝込んじゃって、頼みの綱は私だけ。
まだ元気のある私はマスクをして、コンビニへ買い物に来た。
そんな場合じゃないのはわかってるけど、買ったばかりの春っぽいピンクのカーディガンを羽織っている。
桜みたいな可愛いお花の刺繍がお気に入り。
ボリュームマスカラもしたし、よし、可愛い、はず。
「いらっしゃいませー! あ、こんばんは」
「こんばんはです」
吸血鬼の彼はカウンターから声をかけてくれた。
かけてくれたってお客様には当然の挨拶なんだけど。
ちょっと違うの。他の知らないお客様とは、もうちょっと親しい笑顔……なはず。
でもあの冬の肉まんから、特に距離は縮まる事はなく今に至る。
結局クリスマスも、このコンビニのケーキにしてもらってサンタさんの吸血鬼が家まで届けに来てくれた。
小学生の弟と何故かお母さんまでキャッキャ喜ぶから、私は笑ってるくらいしかできなかった。
でもホントに笑っちゃったの。
吸血鬼がサンタの格好なんて、面白すぎるでしょ。
サンタって本来は、聖なんとか? っていう存在だもんね。
吸血鬼はサンタコスは特に影響がなかったみたいだから良かったけど~。
そして弟はグッジョブな事をした!
吸血鬼に写真を一緒に撮る事をねだって、お母さんが撮った。
私だって撮りたかったけど、次の配達があるでしょ。だから我慢した。
そして私はなんだかんだ理由をつけて、お母さんから吸血鬼の写真もらうことができたんだ。
で、お正月。
吸血鬼はお正月もずっと働いていた。
お父さんと一緒にコンビニ行って、お父さんはお酒買ったりして私は付録でポーチ付きの本を買ってもらった。
吸血鬼は、いつもいつも働いている。
きっと、みんなが休みたい時に頑張って出てるんだと思う。
あぁ思い返してばっかりじゃなくて、インフルエンザの家族みんなのこと考えなきゃ。
長女は大変だよ。
「これ……と、これ……」
私はポカリやパウチのお粥、アイスや飲むゼリー、おにぎりなんかを大量にかごに入れた。
病人三人と私の分、結構な量になる。
やったぁ……今は店内に誰もいない。
私は足早に吸血鬼の待つレジに行く。
いっぱいスキャン大変そうで、申し訳ないけどレジにいる時間が長いから嬉しいな。
あ、青白い顔もかっこいい。
「あれ、御家族で体調が悪い人がいるのかな?」
「はい……家族みんな、インフルエンザでちょっと……ごめんなさい」
私ももう保菌者かもしれないし、店に来ちゃってごめんなさい、っていう気持ち。
「大変だね! 謝る事じゃないよ~店のみんなもみんな倒れちゃってさ。すごく流行ってるよね」
「えーそうだったんですね、じゃあずっと働いてるんですか?」
なんだか吸血鬼の顔色がいつもよりもっと青白いと思っていた。
「うん~連勤20日目、昼も出てるし……」
「えぇ!? それって労働基準法とか……」
「ほら、僕は吸血鬼だから」
「労働基準法は関係ないの?」
まぁ、労働基準法がなんなのか全然わからないのだけど。
「うん、吸血鬼だからね」
そっか、吸血鬼は人間の法律は適用されないのか……。
どうして……?
「吸血鬼だって疲れちゃうのに」
「人間よりは頑丈だし、こんな時くらい役に立ちたいからね」
アハハと吸血鬼は笑う。
「あ、あのお会計ちょっと、待ってください!」
「え? はい」
大量の買い物のスキャンが終わりそうだったので、私は栄養ドリンクの棚に走った。
そして、なんだかすごく色々な種類があるから迷っちゃうけどお父さんがたまに飲んでいるのに決めた。
また走ってレジに戻る。
「あぁ栄養ドリンクも、いいかもね」
吸血鬼は栄養ドリンクもスキャンしてくれて、お会計を済ませた。
「ありがとうございました。看病大変だと思うけど、無理せず頑張って。皆様お大事に」
「あの、これ……どうぞ」
私はエコバッグから、栄養ドリンクを出して吸血鬼の前に出した。
「え?」
「あの、倒れちゃったら困るから……あ、これニンニク入ってるかな!?」
「だ、大丈夫だけど……でも、それは頂けないよ」
困った顔をして、吸血鬼はブンブンと顔と手を振る。
「どうしてですか?」
「えーっと、こどもに……いや」
「むぅ! に、肉まんのお礼です!」
「あ、いや、でも……」
今、絶対子供って言おうとした!
子供じゃないもん!
女子高生だもん!
「お礼です、吸血鬼さんも身体に気をつけてくださいね……」
私は少し、そう、近所のお姉さんが朝の挨拶で微笑んでくれる仕草を真似して言った。
ニコッとして、ちょっと顔を傾かせて……そのあと颯爽と歩くの。
同時に、ピンポーンと来客の合図。
「あっ……いらっしゃいませー! あ、ありがとうございました! ご自愛くださいませね!」
お客さんがなだれ込んできて、私はそれに紛れるように栄養ドリンクを置いて店を出た。
後ろをちょっと振り返ったら、吸血鬼が栄養ドリンクを手に持って、指差して、ペコペコしてた。
ゴジアイ? ってなんだろ。
それより、うわー私……すごい事しちゃった??
差し入れ……?
プレゼント?
引かれちゃったかな……?
だって、でも、吸血鬼だって……人間と一緒だもん。
もっと、みんなが優しくしてあげないと……。
私が優しくしてあげないと、なんて……キャ!
妄想して家に帰ると、私なんかより家族みんなが真っ赤な顔をしていて慌てて看病した。
お母さんはちょっと良くなったら、すぐに家事をしようとするから私も色々手伝った。
そして家族全員がよくなった……!
と思ったら、私がインフルエンザになった。
久しぶりのインフルエンザは、辛くて辛くて……薬をもらったから、効くまでの我慢。
ハァハァ言いながら、スマホを握りしめた。
サンタの吸血鬼を見たら、元気が出るかもって思って……。
「はぁ……かっこいい……」
……熱があるからか、いつもよりカッコよく見える……。
寒気がひどいよぉ……。
「お姉ちゃん、これ」
熱が上がりきって、寒気からは解放されたけどアツアツの私にところへ弟がやってきた。
弟はまだ小学三年生で、子供。
生意気だけど、可愛いと思ってる。
「……どうしたの?」
きっと同じウイルスだから弟はもううつらないよね……。
「さっき、お母さんとコンビニに行ったの。そしたら吸血鬼のお兄ちゃんがこれ、お姉ちゃんにって」
「え……!?」
「お母さんが、ムスメが熱出して~って話したから」
宅配ケーキのあれだけで、私がお母さんの娘だって気付いたの?
うそぉ……やだ……うれし……!!
ピタッて私のおでこに、弟が何かをくっつけた。
「つめた……」
冷たいそれは、ちゅーちゅー食べるアイスだった。
溶けてシェイクみたいになるアイス。
私の大好きなアイス。
「え……吸血鬼が? 私に……?」
「うん。お兄ちゃんの手、すごく冷たいね。僕がお姉ちゃんに渡すねってもらったよ」
肉まんのお返しに、栄養ドリンク渡したのに、今度はアイス……。
やだ……恥ずかしい……嬉しい……?
熱で朦朧としてるし、なんかわかんない。
そして気になる弟の言葉。
「吸血鬼の手……冷たいの……?」
「うん、冷たかった」
おでこにくっつけてもらってる吸血鬼からのアイスが心地良い。
「この、アイスくらい……?」
「これよりは、あったかい」
「……どのくらい……?」
「ええとぉ、僕の手よりはぁ……冷たくて……机くらい……?」
「……机……? どの机? リビングの? 私の部屋の?」
「えぇっ……えー」
私が吸血鬼の手の温かさの再現を、しつこく弟に求めたから『お姉ちゃんが変』って言われてお母さんが慌てて様子を見に来た。
お母さんは色んな意味で心配そうだった。
まさか自分の娘があのコンビニの吸血鬼と……? って思ってるのかな。
まだ、全然お友達にもなってないよ……。
でももちろんインフルエンザ真っ最中の娘に何か言うわけでもなく。
私はちゅーちゅーバニラのアイスを飲んで、眠った。
次の日にはもう、熱は下がってた。
アイスのゴミはもう捨てられていて、仕方ないけど……ちょっと、残念。
お母さんは私がブランチを食べるのを見てから仕事に出掛けた。
ベッドに入った私に、みんなから心配のメールが届いてる。
またクラス替えがあるんだよな。
色々あったけど、今は仲良しクラスだから残念だ。
色んな人からくるメールに、自動書記みたいに当たり障りのないメールを返す。
私はいつの間にか自分の勉強机の椅子に座って、ほっぺたを机にくっつけていた。
彼の手は……こんな感じ?
机、冷たい……。
でも机は固い。
彼の手はどんなだろう?
私のふれあいと言ったら、お母さんの腕に絡んだり、弟とソファでコチョコチョしたり。
お父さんとは会話くらいで。
家族以外で、手に触れる事なんか……ない。
手を繋ぐって……どんな感じなんだろう。
私はまだ、自分の脳みそが正常ではないな――と自覚しながら学校へ行けるようになるまで数日過ごした。
◇◇◇
そして、私が学校へ行けるようになった朝。
お昼ご飯にパンを買おうかと思ったら、ヨレヨレになった吸血鬼が黒いトレンチコートを着て事務所から出てきた。
朝は結構混んでるから、この列から外れたらもう時間がない。
でも……。
「ごめんねー! お疲れ様! 本当に助かったよ! ゆっくり休んでね! しゃっせー! おはざす!」
店長さんがレジをしながら、帰ろうとする吸血鬼に声をかける。
「ひゃい……おっ……した……」
あぁ……あの日から、私がインフルエンザになって、そして今日まで休みなしで働いていたの?
ヨロヨロと店を出ていく吸血鬼を、列に並んだ人達も心配そうに見てる。
私は列から外れて、パンを戻してコンビニから出た吸血鬼を追いかけた。
「あ、あの……っ」
「ひゃい……? あ……」
吸血鬼は相当疲れ切った顔をしていた。
でも私が声をかけたってわかると、にっこり笑ってくれた。
疲れて帰るっていう人を引き止めて、何やってるの私。
「ありがとう。栄養ドリンクのおかげで頑張れたよ」
一人でアワアワしてる私に、先に吸血鬼が答えてくれた。
朝陽が眩しいのに、大丈夫なのかな。
「あのアイスありがとうございました、私もおかげで元気になれました」
「うん、良かった。頑張ったね」
……もう……優しい……優しいの……。
「か、身体、大丈夫ですか?」
「うん、これから三日間、休みもらえたよー」
かなりボロボロになってるように見えるのに。
「たったの三日……」
「十分、十分。今から寝て~明日の夜に起きるよ、桜が散る前でよかった。じっくり桜を眺めたかったんだ」
あ、そうだ。
いつの間にか、桜が満開になってる。
私も桜が大好きなのに、全然ゆっくり見れてなかった。
吸血鬼の後ろにも、大きな桜が朝陽に揺れている。
「あの、いつ桜見るんですか?」
「うん、明日の夜に起きたら……かなー?」
「夜桜とか?」
「に、なるね~」
「どこの桜が綺麗なのかな~?」
直接聞くのは恥ずかしいから、とぼけて言ってみた。
「あっちの丘の桜が、綺麗なんだ」
ああわかる。
そこに行くの……?
そこに行ったら、会えるのかな……。
「あ、学校大丈夫?」
「えっ!? あぁ!」
私の横を同じ制服の子が自転車で通り過ぎていく。
やばい!
電車が!!
「いってらっしゃい! 頑張って……!」
青白いのに、あったかい笑顔。
「はい! いってきます!」
吸血鬼はフラフラなのに、私はなんか思いっきり元気のいい返事をしてしまった。
時間もないから私は走って駅まで行った。
汗だく!
でも、素敵な朝だった……。
学校でも、クラスのみんなが私が来た事を喜んでくれたの。
私はとても嬉しいけど久々の学校で、ちょっと疲れて吸血鬼の事を考える。
「桜か……」
ずっと働いて、やっとできた休みに桜を見に行くなんて吸血鬼ってロマンチックだな。
私だって、桜は好きだけど彼が好きならもっと特別に思えちゃう。
私も偶然を装って、あの丘へ行こうかな。
でも、会えるわけもないよね。
三日の間は私は学校だし……普通は昼間にお花見行くよね。
でもでも、夜もって言ってたような。吸血鬼だし?
恋をしてると、妄想が炸裂しちゃう。
あれこれ、沢山のパターンを考えてしまう。
そう、私は彼に……恋してる。
恋してる女の子はキラキラしてるってよく言うけれど、なんだか気持ちがわかっちゃう。
そんな呑気な楽しい恋心を私は心地よく、自分の胸のなかで転がしていた。
可愛い可愛い恋心。
「あ、雨……」
クラスの誰かが言った。
ボツ……ボツ……ボツボツボツボツボツ……ザーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!
あんなに晴れていた空は一気に暗くなって急に雨が降ってきた。
校庭の茶色が黒になっていく。
風も嫌な音をたてて吹き始めて、雷が鳴って教室のみんながキャーキャーうるさい。
せっかくの桜が散っちゃうよ。
あんなに頑張って働いて、やっとのお休みで……お花見ができるって言ってたのに……。
つまらない授業は誰も聞いていない。
そのくらい外の天気の変化は凄まじかった。
巫女でもない私なんかの願いなんか届くわけもなく、ますます雨は酷くなって、風も酷くなった。
学校が終わると、黒い空が渦巻いていた。
吸血鬼は今朝に寝て、明日の夜に起きるって今朝言ってたけど……。
暗い道の水溜りに、桜の花びらが震えるように落ち重なってる。
丘の上はもっと、風が強いかも……。
どうか、どうか桜よ散らないで……。
ささやかな想いを私は願う。
彼がこんな状況を見たらどう思うだろう。
せめて明日起きる彼が、晴れ空の桜を見られたら……いいのに。
でも、次の日も雨だった。
まだ雨は降って、降って、降って、やまない。
こんな暗い雨の夜には女子高生は出掛けられない。
でも、私は出掛けた。
お母さんが帰ってきたから19時なら、まだ大丈夫。
コンビニに、キャラクタークジを引きに行くって……嘘を付いた。
ごめんね、お母さん。
でも少し、雨は弱まってたし……少しなら……と思って。
丘の公園へ……。
いるわけないし、すぐ帰ろう。
そうだ、吸血鬼はいなくても帰りにコンビニに行けば嘘じゃない。
少し走った。
カーディガンじゃ、少し寒くて失敗したかなって思う。
可愛い雨用ブーツで公園のレンガの道を歩く。
暗い……。
怖い……。
「あ……」
丘の公園の一番の丘の上に、吸血鬼がいた。
……彼は傘も差さずベンチに座って雨に撃たれてた……。
もう桜は沢山散ってしまっている。
桜は雨に落とされて、風に揺さぶられて落ちていく……
少しだけ桜の花びらが風に揺れても、雨が落とす。
それを、彼は見ていた。
彼は右手を少し上げて、桜の花びらを受け止めるようにして上を向いている。
優しい表情だった――。
誰かと会話するように、優しい顔。
でも、雨と花びらは撃たれ落ちていく……。
黒い髪も黒いトレンチコートもびっしょりだ。
いつも優しさを漂わせてる彼から、今は生を感じない。
絶望のような絵図なのに……どうしてか彼に美しさを感じる……。
切れ長の瞳も整った鼻も、冷たい雨に晒されて……。
彼に美しさを感じた時、
あぁ……人間じゃないんだなって……私はすごく思った。
雨のなか、ベンチに座って桜を見る人間だって、いるかもしれない。
でも、私は彼の、その姿が遠く遠く遠く感じてしまった。
その時、小さな雷が鳴った。
「きゃ……っ!」
「えっ……?」
あ……見てる事、バレちゃった。
「えぇ……どうしたの? 一人?」
吸血鬼が私に気付いて、素っ頓狂な声をあげた。
……よかった……いつものコンビニにいる吸血鬼だ。
「あ、あの……きゃっ……」
ま、また雷!
家のなかでは平気だけど、外だと怖い……丘の上だし。
「だ、大丈夫?」
彼は驚きながらも私の傍に来てくれた。
「あ、あの僕、びちゃびちゃで不気味だけどコンビニの……」
「わ、わかります」
「そ、そっか。こんな場所に女の子が一人で危ないよ……待ち合わせ?」
「い、いえ……散歩です」
「さ、散歩って……」
「散歩です」
私は自分の傘を吸血鬼の頭上にかざした。
でも、吸血鬼が優しく私の頭上に傘を戻す。
「僕は風邪ひかないから」
「吸血鬼だから……?」
「そうだよ。君はまだ病み上がりなんだから……散歩は済んだ?」
「……はい、でも一人で帰れます……」
彼の一人での……あんな切ない儀式を見せられて邪魔しちゃいけないと思った。
「僕も、そろそろ帰るよ」
「……そうなんですか……?」
「うん、だから家まで送るよ」
「狼男にはならないから?」
「うん、僕は吸血鬼だからね」
べっちゃり濡れた髪を彼はかきあげた。
オールバック?
わ……印象変わるっと思ったら、彼はざざっとまた長めの前髪を元に戻す。
「あはは、行こうか」
「あの、邪魔してごめんなさい。一人で帰れます」
こんな場を汚してしまったって私はすごく、申し訳なく思ったの。
「いや、帰してくれて、ありがとう」
「え……」
「ずっと、いてしまうところだったから」
……そうなんですか?
でもわかった。
彼の寂しさが切なさが、雨に溶けて――
一緒に桜と散っているような気がした。
私が怖かったのは、雷より吸血鬼が雨と桜と消えてしまいそうだった事……。
私と吸血鬼は雨のなか、公園を歩き出した。
「……あの、桜……雨で残念でしたね……」
「うん、でも会えたから良かったよ」
「……会えた……」
「あ、おかしいよね。桜の花が見れただけでいいってこと」
吸血鬼は何回も、私が彼に傘を向けると優しく私の頭上に戻される。
私が濡れないようにってわかってるけど――私と、相合い傘はダメですか……?
そして私はコンビニの前で吸血鬼とバイバイした。
私が此処でいい! って強く言ったから。
吸血鬼はずぶ濡れで店に入ると汚してしまうからって……帰って行った。
言い訳にしたキャラクタークジは、なんと1等のフィギュアが当たって弟がめっちゃ喜んだ。
お母さんには帰りが遅いって、少し怒られた。
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でも、私は百均で桜の花びらのシールを買っちゃった。
手帳のダイアリー。
あの雨の日。
そこに一枚、花びらのシールを貼った。
高校二年生になる春。
彼との事は、どんな事でも思い出にしたかったから。
シールを貼ったの。
自分の貪欲さも知った、春。
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