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ドキドキ!肝だめし!
しおりを挟む宝さがしも楽しく終わり、三年生以下の生徒のための肝だめしが終わって一旦閉会式。
そして三年生以下は下校した。
四年生、五年生、六年生はみんなワクワクが止まらない。
でも魔術クラブのメンバーは、その後にある『作戦』のほうがずっとずっとドキドキしている。
それを隠しながら、薄暗くなった校舎での肝だめしが始まった。
廊下はもちろん、窓にも黒い布がかけられて真っ暗だ。
肝だめしの会場は、体育館の廊下からすぐの階段を上がって二階へ。
廊下がもうお化けでいっぱい!
突き当たりにある理科室から『肝だめしチャレンジ完了証』をもらって行きとは違う階段を降りて帰ってくる。
二階以上は、立入禁止だ。
グループで行くか、二人で行くか、一人で行くか……それは各クラスで話し合いがされた。
五年一組はくじ引きをした二人で行く事になった。
「麻那人君と一緒! 麻那人君と一緒! お願い~~!」
ラーはドッキドキで麻那人と一緒になるように願ったけれど、結局は空太とペアだった。
「んも~~! なんでよ! なんで空太よぉ」
「ラー悪かったなっ!」
悔しがるラーに空太が言い返す。
後ろで、それを羨ましそうに見ていたリィは同じ班の女の子とだった。
ルルも後ろの席の女の子。
そして麻那人が引いたくじで、麻那人は光とペアになったのだった。
「光っていっつも、麻那人君とペアだね!」
みんなに、からかわれてしまう。
「ち、違うよ! 偶然だし今回だって偶然!」
「一緒でよかったね」
麻那人はなんにも動じないように、サラッと言う。
そんな麻那人を見て、女子のみんなは『外国で育ったから、きっと恥ずかしくなったりしないのよ。かっこいい』と思ったのだった。
四年生から、肝だめしは進む。
キャーキャーわーわー! みんなの叫び声が聞こえる。
本当に怖くて苦手な子のために、先生と一緒で部屋を明るくしてみんなが作ったお化けの展示物を見回って帰ってくるコースも用意されたけど、それを選んだ子は誰もいなかった。
そしていよいよ五年一組!
ラーと空太が、言い合いをしながら体育館から出て暗闇の廊下へ消えていく。
みんなで座って、順番を待った。
「魔術クラブのみんなは肝だめし大丈夫かなぁ」
「これからもっと怖いことが起きるかもしれないからね……」
「ひぃいいいい!」「うわぁあああ!!」
ラーと空太ががっちり手を握り、叫びながら走って体育館に戻ってきたのだった。
二人で戻ってきても、ギャアギャアと喚いている。
四年生の時よりも、かなりレベルアップしていたらしい。
「二人とも……作戦、大丈夫かな……」
「あはは、まぁ大丈夫でしょ」
光はこれからの作戦が、ちょっと不安になってしまう。
麻那人はただ笑ってる。
「ひ、光ーー! 怖かったわぁ!」
ラーが抱きついてきた。
「光! お、俺は演技だよ! 演技ぃ!」
空太が言い訳をするが、実は小さい頃からお化けが苦手なのは知っていた。
魔術クラブに入るなんて言うから、平気になったとばかり思っていたけど……。
「空太もラーも……大丈夫? 放課後の作戦……」
「そ、それとこれとは別よ!」
ラーが慌てて言う。
「ぜってー大丈夫だって! できるって! めっちゃ頑張るし!」
空太も慌てて『大丈夫だ』と繰り返す。
「そう……?」
「心配するなって!」
「そうよ! あ、ほら順番じゃないの?」
リィもキャーッと戻ってきて、光と麻那人の番だ。
「僕達の番だよ。行こう」
にっこり微笑む麻那人と一緒に光も立ち上がった。
光も少しドキドキする。
そして暗い廊下を二人で進んだ。
「あ……人魂だ」
お出迎えは人魂。
蓄光で光る玉に、スズランテープを付けたのだろうか。
「本当だ」
うう~~っとうめき声のBGM。
キャー! と悲鳴のBGM。
お墓の絵に、幽霊の絵。
そして並んだ追いかけ鬼の顔の像。
こっちの方は可愛く思える。
みんなの力作だ。
光は関心して、ひとつひとつのお化けを眺めた。
「光は平気そうだね」
「へへ、魔術クラブだしね」
怖いというよりは、あれはあの妖怪かな?
あの悪魔かな?
そんな興味がわいてくる。
しかし、スーーーッッと歩く日本人形。
「あ……あれは……」
「あぁ、あれは本物だね。こういうのって本物が混ざってくるってよく言うでしょ」
「だって……結界は?」
「あの結界は、よほどな悪意をもつ大物を避ける結界だから、小者達はいくらでも入ってくるよ」
そう言われれば……。
ゾクッとして足元を見ると、白い手が伸びて光に触れた。
「ぎゃあっ!」
「あはは、大丈夫?」
いくら魔術クラブでも本物にはビックリする!
こんなのは絶対、麻那人が此処にいるからだ! 光はそう思う。
「行こう」
つい叫んでしまった光に、麻那人は手を差し出してくれた。
「えっ」
「ほら、これなら怖くないでしょ」
「……うん」
こんな事を平気でする男子は、今まで見たことがない。
女子でも見たことがない。
そう思いながらも、光は麻那人の手をとった。
握った手はあったかくて、人間と同じだ。
と思ったけれど……その手がどんどん冷たくなっていく。
これはきっと麻那人が……悪魔に……なっていっているんだ。
「……これって……悪魔になってってるの……?」
「うん。そろそろかな」
日が落ちていく……二人で『肝だめしチャレンジ完了証』をもらって体育館へ戻る頃には、すっかり暗くなっていた。
新月の夜がくる。
麻那人は悪魔王子に戻ったのだ。
見た目は小学生だけど、中身はもう悪魔王子だ。
「麻那人……」
「さぁ、作戦が始まるよ」
それでもいつもの笑顔の麻那人。
「……うん!」
不安でいては負けてしまう、心は元気でいなくちゃ! と光は力強く頷いた!
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