上 下
35 / 45

打倒追いかけ鬼作戦!最終調整!

しおりを挟む
 
 いつもの朝だ!
 美味しい朝ごはんを食べて、キラキラの朝日を浴びる。
 
「いってきまーす!」

「いってきます」

「はい、いってらっしゃい!」

「にゃあ」

 お父さんと猫のクロに見送られて光と麻那人は家を出る。

「おっす」

「空太?」

 家を出て少し歩くと、空太が待っていた。

「俺も、今日から学校一緒に行く」

「えぇー? 遠くなっちゃうじゃん」

「……心配なんだよ……」

「え?」

 ボソッと空太が言ったことが光にはよく聞こえなかった。

「バッジしてたってさ、追いかけ鬼が襲いに来るかもしれないだろう」

 麻那人が悪魔王子で光を守っていることは、みんな知らないけど誰も『光は大丈夫なの?』とは思わない。
 それは麻那人の自然なさいみん術かなにかなのかと思っていたけど、やっぱり空太にはあんまり効かないのかな? と光は色々考えてしまう。
 
「大丈夫なのに」

「まぁいいから行くぞ」

 ぶっきらぼうに空太が歩き出す。

「良かったね、光」

 麻那人が言った。

「うん……? そうだね、ありがと空太」

「べっ別に」

 ふふっと笑って少し後ろから二人を見る麻那人。
 
「人間の優しさって素晴らしいね」

 ◇◇◇

 昼休みは、みんなでドキマカ祭の準備で盛り上がる。
 学校と裏山の模型は紙粘土や厚紙を使って作るが、その前に設計図を土台になる木の板に書き込んだ。

「この裏山と校舎の角度……ふんふん方角……なるほど」

「麻那人……?」

「あるとしたら、この裏庭……かな」

 地図があるとわかりやすいな、と麻那人は言っている。
 何がなんだか? と思っている光に『魔術クラブ集合だね』と麻那人が言った。

 ◇◇◇

 そして放課後。
 魔術クラブ全員で裏庭にやってきた。
 
 裏庭には花壇や畑がある。
 春に植えたばかりの植物や花がイキイキと育っていた。
 麻那人がキョロキョロ見渡す。

「うん……あれかな?」

 みんなが麻那人の指差す方向を見ると、白く塗られて足の四本ある箱があった。

「あーあれの名前……なんだっけ……なんとか箱」

 四年生の時に習ったような、と光は思う。

「百葉箱だね」

 ルルが言った。
 百葉箱とは気象観測をするための装置だ。
 箱の中には温度計や湿度計が入っている。
 四年生だった時に、勉強した。

「温度を調べるの?」

「いや、これを見てごらんよ」

 麻那人がかがんで百葉箱の下を指差す。

「あ……これは、天使の加護の紋章」

 光が言って、みんなも覗き込んだ。
 百葉箱の底に青い絵の具で書かれた大きな紋章がある。

「ほんとだ……でもちょっと違う?」

 ルルの言葉に空太がバッジをポケットから取り出して確認した。
 確かに百葉箱に書かれている紋章はさらに魔法陣も組み込まれているようだ。
 
「百葉箱は通気のために隙間がある。その隙間を埋める応用魔法陣で……更にここ」

 隠すように真ん中にキラキラとした水晶のような石が設置されている。

「あ、強化してるんだね」

 光の言葉に麻那人が頷く。

「さすが光!」

 ラーが光に抱きついた。

「その通り、この学校のみんなを守っているかなめだ」

「すっげー! そんな秘密があったのか! 安心だな!」

 空太が言って、みんなも頷く。
 でも、学校にこんな秘密があるなんて思いもしなかった。
 
「これを、ドキマカ祭の終わる夕方に……解除する」

「えぇ!?」

 麻那人の言葉に、みんな驚いて光も驚いたけど昨日の『ザボ』の話のあとに聞いた計画を思い出す。

「校舎に、犯人を誘い出すんだね」

「うん」

 裏山からザボはきっとこの子どもがいっぱいの小学校を見ているに違いない。
 夕方になれば、追いかけ鬼を創り出して子どもを追いかけ、恐怖心をいっぱい吸い込みたいであろうザボ。
 一番狙いたい光が結界のない学校にいることを知れば、きっとやってくる!

「これから、光と考えた作戦をみんなに教えるよ」

「うん!」

 みんなに緊張が走る。

「当日、祭が終わって学校から帰る時に、帰るフリをして戻るんだ」

「バレちゃわない~? お母さんが心配しそう」

 リィが不安そうだ。

「大丈夫、その時に必ずこのバッジを身に着けて」

 麻那人が言って手のひらを見せる。

「わぁ~麻那人君、新しいバッジ?」
 
 ラーが嬉しそうだ。
 
 麻那人の手のひらに新しいバッジが六個。
 黒に紅い魔法陣が書いてある。
 でも一個ずつ透明な袋に入れてある。

「これはの加護の紋章だよ。これを身に着ければ当日、大人には本当の僕達の姿は見えなくなる。そして良い子で家に帰って部屋にいると思い込むから」

「へー! 麻那人君って本当にすごいわね! かっこいい!」

 麻那人の言葉にはなんの違和感もないらしい。
 ラーもリィもルルも『どうしてそんなことができるの?』とは言わない。
 
「バッジから通信もできるよ。作戦の時は離れていてもこれで通話して行動しよう」

「えー! すっげー! どういう仕組みだよ!」

 空太のツッコミが入る。
 やはり空太は単純に納得しないようだ。

「ふふ、不思議だよね。光」

 麻那人が光に話を振った。

「ん? あ、そう魔術の力だよ!」

「まじかよ! 魔術すげー!」

 麻那人には納得しなくても、光の言葉にはすんなり頷く空太。
 
「みんな今はまだ天使の加護バッジを着けているんだよ。悪魔のバッジを身に着けるのは祭が終わって夜になる頃。約束だ」

「わかった」

 麻那人の言葉に五人が頷く。

「それじゃあ、当日の動きを説明していこう……でもまずは……」

「ん?」

 麻那人が空太を見る。

「空太、サッカーしようぜ」

 空太が誘うように、麻那人が言った。

「えぇ? そんなサッカーなんか関係あるのかよ」

「うん、ものすごく重要になるよ」

 空太は首をかしげたけれど『ヨシ! お前らみんな鍛えてやるよ!』と笑顔で言った。

 みんなでワーッと公園に走る。

「いくぞー!」
 
 空太は思い切り、サッカーボールを蹴った。
 リィも素早く駆け抜ける。
 ラーも久しぶりにサッカーをして嬉しそうにパスをした。
 光も最後、ゴールを決めた。
 サッカーをしながら麻那人と光が説明をして、みんなもそれを理解していく。
 ルルは計画の流れを図付きで紙に綺麗に書いてくれた。
 そして麻那人はルルにある絵を頼む。
 みんなにもそれぞれアイテムを持ってきてもらうように頼んだ。
 
 魔術クラブ『追いかけ鬼と犯人退治作戦』完成!!
 作戦名は『新月の夜大作戦』に決めた。

「みんなそれぞれ大事な役目があるよ!」
 
 光の言葉に全員が頷く。

「絶対に追いかけ鬼も犯人の悪魔もやっつける!」

 光が強い思いで叫んだ。
 
「「「「「おおー!!」」」」」

 みんなの気持ちが一つになったように、みんなで一緒に拳をあげた。
 
しおりを挟む

処理中です...