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走って走ってまだ走る!光のひらめき

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 光と麻那人は走り続けていた。
 やっと光の家から一番近い、川岸のサイクリングロードに着いたが此処からまた距離がある。

 パジャマ姿で靴下を履く時間もなかった。
 足がベタベタして、中の小石が足の裏に刺さって痛い。

「ハァ……ハァ…………ラー……」

 それでも光は走る!
 叫んで探そうと思っても、ヒューヒューとした小さな声しか出なかった。

「光……頑張れっ」

 さすがの悪魔王子も疲れ知らずというわけではない。
 彼も額に汗を流して、荒い息で走っている。

「ど、どうしよ……場所か……移動か……」

「どうする……」

「ねぇ……本当に……ラーは襲われる……の?」

 どうか無駄であってほしいと、光は望んでしまう。
 元気にランニングしていたラーに『なにやってんの?』と馬鹿にされたい。
 
「人間の生命の流れ、闇の流れ、よどみの流れ、それが時計の文字板と秒針、分針のように合わさった時に怪異は起きる……この暗さ、このよどみ……蘭子ちゃんは九割方狙われるだろう」

「うそ……じゃあやっぱり……ラーは」

 泣きそうになって涙をこらえて光は、走る。
 でももう限界も近い。
 麻那人もそれはわかっていた。

 三番目の魔術は、追いかけ鬼へのためにとっておかなければならない。

 だからラーの元へたどり着くまで使えるのは、あと一回!
 
 場所を特定できないまま、移動しても意味がない。
 場所を特定できても、それが何キロも先だったら間に合わないかもしれない。

「君なら、わからないかっ!? 光……!」

「ハァ……ハァ何が!?」

「この街の怪異が特に起きそうな情報を知らないか……!?」

 脳みそに酸素が足りない!
 苦しい泣きそう疲れた!
 ラー!
 そんな状況なのに、変な質問をしてくる悪魔王子に光はイライラもあって叫ぶ!

「どういうこと!? 意味分かんないよ!」
 
「追いかけ鬼だって繁華街には出ないと言っただろう、人が多い光が多い場所には出ない! 暗いもの、よどみが、けがれが溜まる場所……そういう場所を知らないか!?」

「えっ……」

「魔術クラブリーダー! 思い出せ!」

「(何言ってるの!?)」

 おじいちゃんのステッキをバトンのように持って走っている。
 暗いのに、キラッと光った。

「あ……!!」

 光のひらめき!
 発動!

「ラーの家の方に、工事中の古い橋がある! あそこは前から……!」

「不気味だったんだね!?」

「……そう!」

「そこだ! 手を!」

 苦しくて、途切れ途切れになった光の言葉を麻那人は理解した。
 先を走る麻那人が振り返って、手を差し出す。

「えっ……?」

 疲れ果てて転びそうになる光の手を麻那人は掴んで、支えた。

「……そこに飛ぶ……!」

 ファルゴンが慌てて光の頭にまんじゅうのような身体を乗っけてくる
 何か魔法陣のようなものが出現したかと思った瞬間、二人と一匹の姿はその場所から消えた。



 
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