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不思議な駄菓子屋でお買い物
しおりを挟む駄菓子屋の店員さんが、姿を見せた。
背が低くて髪が真っ白……でもおばあちゃんではない。
長い髪に牡丹の花を刺して、ピンク色の着物を着て白いフリルのエプロンをした女の子だ。
瞳がキラキラしてて可愛い。
「こんにちは!」
「こ、こんにちは(私と同じくらいに見える?)」
悪魔王子が挨拶したので、光も挨拶した。
「はい、こんにちは~。珍しいお客さんだねぇ~~ちょっと、いやかなりおどろいてるよ~」
ゆっく~りなしゃべりかた。
でもにっこりしている。
「(おどろいてるようには見えないけど……)」
「僕らは人間だよ。お菓子を買ってってもいい?」
「(いや、あんたは悪魔でしょ!)」
「そりゃ~あ、もちろん買ってってよぉ~。でも人間の子供に払えるかい~?」
「お代はなに?」
「(……この女の子は人間じゃないんだよね……じゃあ、やっぱり人間の命が代金……?)」
余裕な麻那人の後ろで、光はドキドキソワソワだ。
「そうだね~~せっかくの人間の子どもだし~~~キラッキラの楽しい気持ちをもらおうかな」
ニコニコしたまま女の子は言う。
「な、なにそれ!?」
「ふふふ! いいよ、僕は今すっごく楽しいからね。いくらでも出てくるよ。はい」
おどろく光を横にして、悪魔王子は小銭を渡すように手を女の子店員の方へ向ける。
「ほ~い」
「ほらほら、いっぱい出るよ!」
キラキラとした光の粒がコインのように、女の子の手に落ちた。
「え!? どゆこと!?」
「だから、僕の楽しい気持ちさぁ~」
なんだか麻那人まで喋り方が移ってる!?
「あ~~らすごいねぇ~。でも此処は~駄菓子屋だよ~。こんなに払ったって大きな丸い高級ケイクなんか~ないんだよ~~」
「(丸い高級ケイクって、ホールのケーキかな……? あれがお金のかわりになるのぉ!?)」
「駄菓子がほしいんだ。お釣りはいらないよ。じゃあこの子と二人で買い物するね」
「変な子だ~~あんた~~本当に人の子かい?」
「へへっまぁ人の子だね。じゃちょっと買い物させてよね」
「どうぞ~~」
「(バレそうじゃん!)」
疑われてヒヤッとするけど、麻那人は笑ったままだし、店員さんはそれ以上何も言わない。
麻那人は、店内を見渡して狭い店内を歩く。
たしかに駄菓子が置いてある。
でも、見慣れたような駄菓子だが……。
パッケージや名前は似てるけど、何かが違うお菓子ばかり。
「……へるへるへるね……? イヤンイヤンつけないぼー……なんか変」
キョロキョロしてしまう光。
「この飴玉いいね。これを……えっと六個ください」
麻那人は、大きなガラスの瓶に入った飴玉を指差す。
大きくて丸い飴玉が、キラキラしたフィルムでまかれている。
両端がキュッとなってリボンみたい。
可愛くて綺麗な飴玉だ。
「あはは~いいね。コレ食べてたら、あんしん。あんし~ん」
「だよね」
パカッとフタを開けて、六個取り出すと女の子は紙袋に入れてくれた。
「はぁ~いどうぞ。ありがとうね~」
「どーも~」
またキョロキョロしていると、瓶に入ったマシュマロがうごいた!?
古い天井のすみっこに何かいるような気がした。
おもわず、麻那人に近寄ってしまう。
「じゃあまた来まーす」
「はぁ~い。ありがとさん。またきてね~~」
一緒に店から出て、振り返るともう汚いレンガの壁しかなかった。
「どえーーーー!?」
実際に目に見てもおどろきで、あんぐり口を開けてしまう。
「ふふ、口に虫が入りそうだよ」
面白そうに、麻那人が笑う。
「あっやだ! もう~だれだってビックリするよ!」
「まぁ、そうだよね」
「あの子は悪魔?」
「いいや、あの子は、この壁を気に入っている神様のお使いみたいな感じかな。この壁すごいなぁ」
何がすごいのかわからないが、この汚い壁はすごいらしい。
「か、神様? 悪魔もいて、神様もいるの?」
「そりゃいるよ。人間だって、いろんな人種がいるし国も違うでしょ」
「……うん。そういうもの?」
「そういうものだよ」
わかるような、わからないような……。
「精霊様もいる?」
「いるいる。妖精もいるよ」
「ふ~ん……(あぁ……妖精様もいるのに! どうして魔法陣間違えちゃったの!?)」
「あはは、それなのに悪魔召喚の魔法陣をえらぶなんてさー光は面白いよね」
同じことを麻那人に突っ込まれてしまう。
「もう! それは知らなかっただけだもん」
「あはは、まぁ僕は、今がすっごく楽しいから良かったと思うよ」
「……楽しい……」
「うん。光と一緒だと、なんでもすごく楽しいよ」
「えっ……」
麻那人の笑顔がまぶしく感じた。
こんな、なんでも真っ直ぐに言ってくる人ってあんまりいないと光は思う。
「(いや、人じゃない。悪魔だし……でもでも、なんかドキドキする!?)」
照れくさくなって、あっちを向いた。
「じゃ、じゃあ行こう」
「うん」
でもちょっとだけ、悪魔王子と一緒にいるのも楽しくなってきた光だった。
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