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お風呂上がりのアイスを、悪魔王子と食べる

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 悪魔王子・麻那人との夕飯後。
 麻那人、光の順番に、お風呂に入って大好きなチョコたっぷりアイスを頬張る。
 
「このアイス美味しいね。チョコっていうの僕好きだなぁ」

「うん! 最高なんだよね~パリパリで」

 チョコアイスに、更にパリパリのチョコが練り込んである最高のアイスバーだ。

「やっぱ人間界はご飯が格別だなぁ」

「そうでしょ~」

「うん! やっぱり来てよかった!」

「うふふ」
 
「あはは」

 二人でにっこにこ!
 にっこにこ~~~☆

「……ってちっがーーーう!!」
 
「えぇ?」

「(夕食から流されて、二人でパジャマ姿でアイスを食べっちゃってるけど! こいつは悪魔王子!)」

 アハハ? と笑いながらアイスをパクパク麻那人は食べる。

「あ、悪魔王子! あんた!」

 お父さんは今お風呂に入っているから自由に話せる。

「麻那人だって。マナト~言ってみて? はい、ご一緒に~、マナト~」

「……マナト~~~」

「マナト~」

「……マナト~~~」

「よくできました!」

 一緒に何度か英語の時間のように繰り返した。
 ハッ! と、光はまた我に返る。
 
「ど、ど、どういうつもりなのよぉ!」

「ん~? だから異世界留学みたいな感じかな?」

 異世界とは、こことは別の世界。
 つまり悪魔界から、人間界への留学……??

「お父さんに、さいみん術にかけたの?」

「うん。でも別に悪い影響はないよ?」

 そうは言われても、安心はできない。

「悪魔のツノとか尻尾は? なんで無いの?」

「麻那人様の~~偉大なる魔術で、人間化されたんじゃあ!」

 悪魔王子と光の間に現れたのは、丸い悪魔。

「あ! まんじゅう悪魔おじさん! 隠れてたんだね!?」

「誰がまんじゅうじゃい! ワシにもチョコアイスちょうだい」

「ん、もう~6個入なのに! もうあと1個しかないじゃん~!」

 いつもお父さんと半分こしているから、急に同居人が増えてアイスの減りが早い!

「というわけで、麻那人様の偉大なる魔術で人間化されたんじゃあ! 人間化されたんじゃあ! 大事なことなのでニ回言ったわい! んー美味しいチョコアイスおいちい」

「人間化も魔力が必要だから、一日に使える魔術が三回までになっちゃうんだけどね」

 魔術が使える回数?
 そんな事は私に関係ないよ、と光は思う。

「……いつ帰るのよぉ?」

「まぁ十分に~いろんなことをして、満足したらかな?」

「早く帰ってよぉ~!」

 悪魔の王子が家にいるなんて、ぜったいによくない! と光は思う。
 妖精の王子だったら……よかった? とも考える。

 うぬぬ……と頭を悩ませる光。
 麻那人はクスっと笑う。

「僕が早く帰っちゃったら、光はどうやって身を守るのさ?」

「どういうこと……?」

「さっきの追いかけ鬼のこと忘れちゃった?」

「わ、忘れるわけないよ」
 
 追いかけられた時のことを思い出すと、背筋がゾクッとする。
 
「あいつは、また来るよって言っただろ?」

「でも……もう追いかけてこなかった」

 そう。
 帰宅して、オムライスを食べて、お風呂に入って、アイスを食べても何も起こらない。

「君のニオイを覚えているよ。今来ないのは、この家にいるからさ」

「家の中だと、襲ってこないの?」

「いや……この家は特別なんだよ。君のおじいちゃんが、強い結界を張っている」

「えっ……」

「僕達は超上級悪魔だから、人間の作った結界くらいは、まぁ大丈夫だけどね。あの鬼にはバリアになる」

「一体何者なのか……お前の祖父は……あ~甘いチョコアイスのあとにしぶいお茶が美味い」
 
 ファルゴンはもうアイスを食べ終えて、勝手に急須で淹れたお茶を飲んでいる。
 
「おじいちゃんは……魔術の研究をしててすっごい人だったんだよ!」
 
 でも、誰にも認められず誰にも理解されず……ひっそりと研究していたおじいちゃんだった。

「すっごいのは、わかるよ」
 
 にっこりと悪魔王子は微笑む。
 こういう時の微笑みが、近所の高校生のお姉さんみたいな、大人っぽくて余裕がある微笑みで……。
 悔しくて、なんだか腹が立つ!

「だから、この家の中にずっといるならいいけど……君は明日も学校へ行くよね?」

「うん、もちろん」

 光は学校が、大好きだ。
 だから毎日、早起きする。
 明日も、絶対に行くし今から楽しみ!

「追いかけてくるよ……?」

「えっ……」

 麻那人がニヤッと悪魔のように笑ったのでゾクッとした。

「僕がいないと……食べられちゃうかもねぇ」

「う、嘘でしょ!?」

 せっかくお風呂で温まったのに、光はゾクゾクしっぱなしだ!

「まぁ……明日になればわかるかな?」

 悪魔王子はまたケラケラ笑う。

「ねぇ冗談でしょ?」

「うーん、どうだろ。僕は追いかけ鬼じゃないからなぁ」
 
「(からかって遊ばれてるだけだよね……?)」

 悪魔王子が笑っているので、そんな風に思う光。
 お父さんがお風呂からあがってくる気配がした。
 光はコソッと、悪魔王子に言う。

「あ、あんたは明日からどうするの!? 家にいるわけ!?」

「ん? 学校へ行くよ」

「ええ!? ど、どこ?? どこの学校? 中学校?」

「もちろん、光と同じ眠子寝子小学校の、五年ニ組だよ」

「えええええええええ!?」

「よろしくね☆」

 また、悪魔王子……麻那人はにっこり微笑んだ。
  

 
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