不死鳥の巫女はあやかし総長飛鳥に溺愛される!~出逢い・行方不明事件解決篇~

とらんぽりんまる

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決戦!!桃花の願い火

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 蒼玉の放った妖魔の群れと、彩子の妖魔、そして変化し始めている彩子とのバトルが始まった。
 
「妖魔の数、およそ150!! 女生徒の妖魔には三人が拘束されている模様! 女生徒は妖魔化が進行中! みんな気を付けて!!」

 公園の外から結界を張っている茜が、四天王達に叫ぶ。
 なんという数!
 しかし四天王も、もちろん紅緒にも怯えなどかけらもない。

「柘榴!! そっちに行ったぞ!」

「オッケーーい!!」

 辰砂の言葉に応えるように、柘榴が滑り台の上から大ジャンプをして大きな妖魔を二体頭から足まで一刀両断する。

「苺! 上空の二体は任せた!!」

「うん!」

 兄の珊瑚に応え、苺が自分の刀を振るうと炎のブーメランのような衝撃波が走って夜空を舞う二体の妖魔が粉砕された。
 真っ暗な公園が彼らの戦う火の粉によって照らされる。
 空に無数の花火が舞い上がるようだった。

「す、すごい……!」

「桃花、お前は此処にいろ」

「紅緒くん」

 紅緒は抱き上げていた桃花を、そっとブランコの周りの仕切りの中に立たせる。
 紅緒が護符を手から投げると、そこは炎の結界になった。

「彩子が闇に紛れた。でもあいつには、この結界は破れない」

「うん、信じてる……!」

「あぁ!」
 
 紅緒がキッと、強い瞳で微笑んだ。
 そして皆が戦う戦場の状況を一瞬で把握し、燃える刀を持って紅緒が走る。

「辰砂、珊瑚! 俺の援護をしろ!! まずはあの妖魔の内部から三人を救い出す……!」

「了解!」「はいよ☆」

 巨大な袋のような醜い妖魔が、ベタベタとよだれを撒き散らしている。
 しまいには側にいる小さな妖魔すら、喰い始めた。

「うぉおおおおおおお!!」

 紅緒が踏み込むと一気に間合いが詰められ、向けられた牙と舌をも巻き込んで粉砕し、顔部分が吹き飛んだ。
 そのまますぐに、首から腹へ目掛けて切り裂く。

「辰砂! 珊瑚! やれ!!」

 袋に切れ目が入り、次に辰砂と珊瑚が避けた皮を左右にふっ飛ばすようにして斬りつけた。
 内臓がひっくり返るようにして、妖魔が今まで飲み込み続けたものが一気に吹き出す!!

「出てきた!!」

 人影が黒いヘドロのようなものにまみれて、ドサッと出てきた。

「行方不明の三人……!! 良かった!!」

 ブランコの結界内から見ていた桃花も、ホッとする。
 すぐに辰砂が持っていた聖水を顔にかけ、紅緒が浄化の術を施していた。

 その間も柘榴は無数の敵を飛び跳ねるように斬り落とし、苺は上空の敵を撃ち落としている。
 珊瑚は、茜を狙おうと動く妖魔を撃退していた。

「桃花、今行く!」

 ある程度の浄化を終えたのか、紅緒が桃花に叫んだ。

「紅緒くん! 私は大丈夫!!」

 守ってくれる強い結界はまだ燃え盛っている。
 しかし……。

 キィン……!!!

「えっ?」

 何かが結界を貫いた。
 氷の弾丸――!!

 結界の護符が凍りつき、飛散した。
 炎が消える。

「くそ! 桃花!」

「邪魔が消えたぁ! シねぇえええええええええええええええ!!」

 どこに潜んでいたのか、暗闇から半妖魔化した彩子が牙をむき出しにして、ブランコの前にいる桃花に襲いかかる!!

「桃花ぁあああ!!」

 紅緒のオーラが燃え盛る!!

「あっ……」

 紅緒の炎が、桃花を守るために迫る。

 それが着火になったように、キィイイイイイイイイイン!! と金属音のような鳥の鳴き声がして桃花の周りに業火の炎が立ち上がった。

「ぎゃああああああああああああああああ!!」

 桃花に噛みつこうとした彩子が、燃え上がる。

「桃花!」

「わ、私は大丈夫……! 彩子さんが!」

 すぐに紅緒が桃花を背に守り、刀を構えるが彩子は燃え上がった炎を受けて苦しみ転がる。
 この数十分のうちに妖魔化のスピードは紅緒の想像を超えていた。

「これは……8割妖魔化してる……すぐビルに収容してババの治療を……いやこの距離では間に合わないかっ!?」

「そんな……そんなの駄目……!!」

 桃花は守られていた紅緒の背後を抜けて、倒れ苦しむ彩子のもとへ行き座り込んだ。

「桃花!」

「絶対に助けなきゃ……!!」

 燃え上がる炎も、桃花には熱くない。
 苦しんでいる彩子を、抱き上げる。
 確かに顔も身体も、もう人間らしさがなくなっている。

「それでも……!! この子を助けて不死鳥ーーーー!!」

 炎が更に舞い上がり、暗闇の空から流星のような光が桃花と抱き上げた彩子の元へ落ちた。

「異空間内に侵入しただと!? 桃花!!」

 激しい衝撃波だった。

 内部から輝く光と衝撃に煽られ、茜の結界も吹き飛び紅緒の別界術べっかいじゅつ展開てんかいも空間がネジ曲がりふっ飛ばされた。

「桃花ーーーーーーーーーーー!!」

 弾け飛ぶ瞬間に、紅緒が桃花と彩子を抱きとめて、ジャングルジムにぶち当たった。

「「「「総長ーーーーーーーーーー!!」」」」

 四天王の声が響く。
 公園の外では車が走り、マンションの灯の中には、日常の家族の団らんがある現実世界。

「はぁ……大丈夫だ……」

 頭から血が滴り落ちても、紅緒は腕の中で眠るように気を失っている桃花と、人間の姿に戻った彩子を見て安堵の息を吐いた。

 その様子をビルの上空から見ていた蒼玉。
 後ろには四人の影。

「……ふふ、今日はもういいよ。十分にわかった……想像以上だよ。彼女の力。……また来るよ桃花ちゃん……」

 そう言うと雪が舞って、五人の姿は消えた。
 
 
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