29 / 39
行方不明者二人目:情報収集
しおりを挟む紅緒から告げられた『行方不明者二人目』
桃花が見つけたスマホの持ち主は紅炎学園中学部1年東部梨加、という女生徒だった。
「まさか行方不明者が増えるだなんて……」
朝のリビングで告げられた桃花は顔を青ざめる。
「……俺達は情報収集も兼ねて学校へ行く。桃花、お前はどうする? 此処の警備は万全だ。休んでもいいんだぞ」
「そんなのイヤ! 行く!」
「やっぱりか。俺の傍にいろよ」
「うん……!」
「じゃあ四天王も茜も情報を集めろ。放課後に集まる」
「「「「「了解!」」」」」
調査をするには学園へ行かなければならない。
全員で学園へ向かう。
昨日に会議で話したように、それぞれで情報収集を行う事になった。
紅緒と桃花は二人で学園をまわり生徒への聞き込みをする事にした。
女生徒A「わぁ飛鳥様……! え? ふくしゅう鬼ごっこゲーム? あ~流行ってるって聞いて! 一回入れましたよ。でも運ゲーみたいなもんだから、すぐやめましたぁ。総長、一緒に写真撮ってください!」
女生徒B「飛鳥様ー!! あぁ、ふくしゅう鬼ごっこ~グループチャットでオススメしてくる人がいたから、入れてみたけど~やってないです。放送かっこよかったですー!! 飛鳥様! 握手してください! え?ダメ?」
女生徒C「あ、飛鳥様……! と、隣のそのダサい女は……い、いえ失礼しました! え? ふくしゅう鬼ごっこ。知ってます~なんかSNSで流行ってるって聞いたから~何回かやったけど、つまんなくて」
女生徒D「飛鳥様~私と付き合ってくださいー! 私、総長だったら、何されてもいいです! ふくしゅう鬼ごっこ? あーあのクソゲー知ってますー。あのー飛鳥様ってフリーですよね?」
休み時間ごとに話を聞いて、昼休みにぐったりする飛鳥。
今日はそれぞれ別行動なので、また屋上に二人で来た。
夕子が持たせてくれた上質なレジャーシートを広げて沢山のおかずが入った弁当を食べる。
紅緒はご飯を食べた後、そのまま床に寝っ転がる。
空は青空が広がっている。
「あ~~~~~~~~」
「だ、大丈夫? 紅緒くん……」
「男に話しかけようとしても、女しかいないし……なんなんだ……関係ないことを……ペラペラと……」
紅緒が歩くと男子は逃げ、女子が群がってくる。
「みんな、嬉しいんだよ。紅緒くんが好きで憧れてるんじゃないかな」
桃花も視線と嫉妬が痛かったけど、憧れの男子が近くに来てその隣にいるのだから仕方ないことだと理解している。
「……桃花は……?」
「え?」
「いや、なんでも」
「う、うん……」
「こういう状況だから……なぁ落ち着いてからだな」
桃花の膝の横で寝転がる紅緒に、見つめられてドキンとする。
「(な、なんのこと……? ドキドキしちゃった)」
「それにしても人気はないのにゲームの存在は知ってるやつが大半だった」
「みんな誰かにオススメされたって言ってた……誰かが流行らせたのかな」
「出処は不明だが、そうらしいな」
「……あのゲームやってみた?」
「あぁ。俺も四天王達もそれぞれやってる。だけど俺達がゲームをしても、何も起きない。柘榴なんかつまらんいいながらずっとやってるが……異変は起きてないようだ。キャラも全員使ったし、クリアもそれなりのパターンもしてるが、あの黒い霧の怨念は一切見えない」
「そうなんだ」
「誘い出したんだとしても、何か干渉するための呪符になるようなものが絶対に必要なはずなんだ」
「ゲームが関係してるはずなのに……証拠がないなんて……どうして……?」
二人が最後にスマホで開いていたのは『ふくしゅう鬼ごっこ』
それなのにゲームには何も問題はない……?
「制作者は『KS信者』っていう名前だ。このゲーム。深く潜る必要があるかな」
「ふかくもぐる……?」
「あぁ儀式の準備が必要だ。とりババに要請しておくか……」
とりババとは、桃花のおばあちゃんの事だ。
紅緒はスマホを取り出して、メールを打っている。
実はおばあちゃんもSNSをやっていて、桃花にメールをしてくるハイカラおばあちゃんなのだ。
「儀式……危なかったりしない?」
「大丈夫さ。俺はお前が傍にいると、普段より力が湧く気がする……いや、実際にそうなんだと思う。俺は炎を操る鬼のあやかしの一族なんだ。桃花が不死鳥の巫女だから恩恵を受けてるんだと思う」
「そうだったんだ……わ、私も紅緒くんと一緒にいると安心……する」
一瞬、紅緒がこっちを見た。
「あっ……こ、これは関係なかったかな……へ、変なこと言っちゃった」
「いいんじゃないか」
そう言うと、紅緒は目を閉じて寝始めた。
二人きりの少しの時間。
桃花も目を閉じると、紅緒の温かいオーラを感じて安心する気持ちになれた。
「ふわーあ。少しだけど、まぁ疲れもとれたか」
「うん、あ私ちょっと……」
「じゃあ先に戻ってるな」
「うん」
昼休みが終わる前に、桃花はトイレに行こうと寄った。
誰もいないトイレ……かと思ったが下を向いた一人の少女。
「(あ……前に……いた子かな……)」
今日も暗い雰囲気で下を向いて、桃花が個室から出ても棒立ちしている。
先日にも会った少女だ。
「……あの、大丈夫?」
「……なにが……」
「いえ、一人でいるから……大丈夫かなって」
「前にも会ったよね、あんた」
「うん……前にもトイレで会ったよね」
「……あんた、総長飛鳥と一緒にいる子でしょ」
「えっ……あ、そう……だけど」
情報集めを二人でしているのを見られたのだろうか。
「あんな放送してもらって、守ってもらって良い立場にいるのにさ……あたしに同情してるの?」
「そんな事ないよ! そういうんじゃない……」
まさかそんな事を言われると思っていなかった桃花は焦る。
「あたしにだって王子様くらいいるから!」
「ご、ごめんね。そんなつもりじゃなかった……何か助けにと思って」
王子様? と思ったが、それより誤解を解きたかった。
「助け……あんたが?」
「あ、あの……うん……」
「……じゃあさ、面白いゲームしてみない……?」
「えっ……」
「この『ふくしゅう鬼ごっこ』っていうの面白いよぉ……」
ギクッとした。
スマホをこちらへ向けた時、暗くてギラリと光る目と目が合ったからだ。
0
お気に入りに追加
18
あなたにおすすめの小説
クール天狗の溺愛事情
緋村燐
児童書・童話
サトリの子孫である美紗都は
中学の入学を期にあやかしの里・北妖に戻って来た。
一歳から人間の街で暮らしていたからうまく馴染めるか不安があったけれど……。
でも、素敵な出会いが待っていた。
黒い髪と同じ色の翼をもったカラス天狗。
普段クールだという彼は美紗都だけには甘くて……。
*・゜゚・*:.。..。.:*☆*:.。. .。.:*・゜゚・*
「可愛いな……」
*滝柳 風雅*
守りの力を持つカラス天狗
。.:*☆*:.。
「お前今から俺の第一嫁候補な」
*日宮 煉*
最強の火鬼
。.:*☆*:.。
「風雅の邪魔はしたくないけど、簡単に諦めたくもないなぁ」
*山里 那岐*
神の使いの白狐
\\ドキドキワクワクなあやかし現代ファンタジー!//
野いちご様
ベリーズカフェ様
魔法のiらんど様
エブリスタ様
にも掲載しています。
絆の輪舞曲〜ロンド〜
Ⅶ.a
児童書・童話
キャラクター構成
主人公:水谷 陽太(みずたに ようた)
- 年齢:30歳
- 職業:小説家
- 性格:おっとりしていて感受性豊かだが、少々抜けているところもある。
- 背景:幼少期に両親を失い、叔母の家で育つ。小説家としては成功しているが、人付き合いが苦手。
ヒロイン:白石 瑠奈(しらいし るな)
- 年齢:28歳
- 職業:刑事
- 性格:強気で頭の回転が速いが、情に厚く家族思い。
- 背景:警察一家に生まれ育ち、父親の影響で刑事の道を選ぶ。兄が失踪しており、その謎を追っている。
親友:鈴木 健太(すずき けんた)
- 年齢:30歳
- 職業:弁護士
- 性格:冷静で理知的だが、友人思いの一面も持つ。
- 背景:大学時代から陽太の親友。過去に大きな挫折を経験し、そこから立ち直った経緯がある。
謎の人物:黒崎 直人(くろさき なおと)
- 年齢:35歳
- 職業:実業家
- 性格:冷酷で謎めいているが、実は深い孤独を抱えている。
- 背景:成功した実業家だが、その裏には多くの謎と秘密が隠されている。瑠奈の兄の失踪にも関与している可能性がある。
水谷陽太は、小説家としての成功を手にしながらも、幼少期のトラウマと向き合う日々を送っていた。そんな彼の前に現れたのは、刑事の白石瑠奈。瑠奈は失踪した兄の行方を追う中で、陽太の小説に隠された手がかりに気付く。二人は次第に友情と信頼を深め、共に真相を探り始める。
一方で、陽太の親友で弁護士の鈴木健太もまた、過去の挫折から立ち直り、二人をサポートする。しかし、彼らの前には冷酷な実業家、黒崎直人が立ちはだかる。黒崎は自身の目的のために、様々な手段を駆使して二人を翻弄する。
サスペンスフルな展開の中で明かされる真実、そしてそれぞれの絆が試される瞬間。笑いあり、涙ありの壮大なサクセスストーリーが、読者を待っている。絆と運命に導かれた物語、「絆の輪舞曲(ロンド)」で、あなたも彼らの冒険に参加してみませんか?
閉じられた図書館
関谷俊博
児童書・童話
ぼくの心には閉じられた図書館がある…。「あんたの母親は、適当な男と街を出ていったんだよ」祖母にそう聴かされたとき、ぼくは心の図書館の扉を閉めた…。(1/4完結。有難うございました)。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
ちびりゅうの ひみつきち
関谷俊博
児童書・童話
ともくんと ちびりゅうの ひみつきち づくりが はじまりました。
カエデの いちばん したの きのえだに にほんの ひもと わりばしで ちびりゅうの ブランコを つくりました。
ちびりゅうは ともくんの かたから とびたつと さっそく ブランコを こぎはじめました。
「がお がお」
ちびりゅうは とても たのしそうです。
大嫌いなキミに愛をささやく日
またり鈴春
児童書・童話
私には大嫌いな人がいる。
その人から、まさか告白されるなんて…!
「大嫌い・来ないで・触らないで」
どんなにヒドイ事を言っても諦めない、それが私の大嫌いな人。そう思っていたのに…
気づけば私たちは互いを必要とし、支え合っていた。
そして、初めての恋もたくさんの愛も、全部ぜんぶ――キミが教えてくれたんだ。
\初めての恋とたくさんの愛を知るピュアラブ物語/
王女様は美しくわらいました
トネリコ
児童書・童話
無様であろうと出来る全てはやったと満足を抱き、王女様は美しくわらいました。
それはそれは美しい笑みでした。
「お前程の悪女はおるまいよ」
王子様は最後まで嘲笑う悪女を一刀で断罪しました。
きたいの悪女は処刑されました 解説版
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる