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桃花の決意
しおりを挟む昼休みも終わり、四天王に教室まで送られた桃花と茜が席に着く。
「それにしても桃と私が入学してすぐ、こんな事件だなんてねーっ!!」
「本当に……行方不明になった子、無事だといいな……」
入学直後の嫌な事件。
きっと家族は少女を心配しているだろう、桃花の胸も痛む。
1年生のフロアに戻っても、まだ欠席扱いになっている彼女の話をしている人はいない。
あの時、スマホは光っていた。
直前まで、彼女はスマホを持っていたはず……。
彼女に何かあったんだろう。
つい考えてしまう桃花の耳にクラスメイトの笑い声。
「ね~このスマホゲーム知ってる?」
「素人が作ったゲームなんでしょ? ゲームって作れるんだね」
「隣のクラスのグループチャットで誰かオススメしてたらしいって」
「私は友達のお兄ちゃんがやってるとか聞いたけど~」
平和そうにゲームの話で盛り上がってる。
「桃、大丈夫? 顔色悪いよ」
「あ、うん……なんか心配になっちゃって……」
まだまだ自覚が足りなかった、と思う。
あの氷の少年が率いる『蒼騎審』は人を殺すこともある。
恐ろしい集団なのだ。
「私にももっとできる事……あるかな」
「桃は十分、やってるよ。私だってそこそこ強いから、絶対守るからね」
「うん、ありがとう……」
みんなが自分を守ってくれると言う。
「(私も何かしなくちゃ……)」
クラスメイトが何か新しくゲームを入れたのか?
キャーと更に盛り上がった声がしたところで先生が入ってきた。
◇◇◇
そして今日も放課後に修行を終えて一階に降りる。
本を読むのが好きな事を知っているお祖母ちゃんが術の本を貸してくれた。
「あ、あれ紅緒くん」
「お疲れ」
ロビーに紅緒がいた。
受付のお姉さん二人はかなり年上だろうに、紅緒を見てキャッキャしている。
「ど、どうして?」
「いや、迎えに行くって言っただろ。一人にするわけないじゃん」
驚く桃花を、当然のように見る紅緒。
「でも警察での話もあったし……」
「放課後までに終わって、今まで行方不明者の捜索をしてたよ」
「疲れてるんじゃ……」
「なんか喰えば治る。さ、帰ろう」
「う、うん」
今日の修行中も不安が心にあって、注意力散漫で少し注意されてしまった。
今は身を守る結界術を習っているが、間違えてしまうと時に跳ね返って怪我をする場合があると。
でも紅緒の顔を見たら、なんだか不安が減った……気がする。
「ちゃんと飯食ってるか?」
「う、うん」
「昼もおにぎり一個くらいだったろ。まぁ女子の喰う量はわからんが」
「ちょっと食欲ないなーって……くらいだよ」
「無理して喰えとは言わないが……食えるものがあったら食っておけよ」
「大丈夫、紅緒くんが迎えに来てくれたから……ちょっとお腹減ったかも」
「あぁ、俺も。桃花の顔見たら、更にすげー腹減った」
「えぇっどういうことー」
「わからん」
「ふふ」
またコンビニで買い物して、ベンチに座る。
一人の少女が行方不明になっても、人の波は変わらない。
紅緒の隣で桃花はおにぎりを一口食べた。
「警察ではどうだったの?」
「ん~……まぁ色々教えてもらったよ」
「じゃあ戻ったら報告会議だね」
「……でも桃花、お前は今回の件は関わらないほうがいいかもな」
「えっ」
突然の言葉に驚く。
「関わるなってどうして……?」
「桃花の負担になっている事はわかってる。これから事件がどう動くかはわからない。まだ慣れていないお前は、何も知らないままでいた方がいいと思うんだ」
「……まだ何もできないから……?」
「違う」
「足手まとい?」
「そうじゃない、酷い事件も沢山あるんだ。来たばかりで、ここで桃花が心を痛めるのが……俺は心配なんだ」
「私だけ、何も知らないままでいる方が……もっと辛いよ! 仲間外れにしないで」
「桃花」
「私にだって、きっと何かできるはず……! 心が痛んでも、負けたりなんかしない!」
力強い瞳で紅緒に訴えた桃花。
紅緒は桃花の瞳の奥に燃える不死鳥の炎を見た。
「……そうだな、お前はそういう女の子だったな」
「紅緒くん」
「よし、じゃあ帰るぞ! 四天王も集めて今日の集めた情報を話す!」
「うん!」
紅緒に差し出された手を強く握って桃花も立ち上がった。
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