不死鳥の巫女はあやかし総長飛鳥に溺愛される!~出逢い・行方不明事件解決篇~

とらんぽりんまる

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茜の転入!桃花呼び出し!?とある少女

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 朝の学活。

「みんな~おはようございます! 今日も転入生です、皆さん仲良くしてくださいね」

鴻谷こうたにあかねでーす。皆さんよろしくおねがいしまーす!」

 茜の明るい声が教室に響く。
 昨日挨拶した桃花とは対象的に、みんな『おお~』と好意的な反応だ。

「(茜ちゃん、すごい!)」

「それでは、えーと……す、朱雀さんの前の席にどうぞ」

 一瞬、桃花の名前を忘れてたっぽい野崎先生。
 周りの女子はヒソヒソと桃花と茜を交互に見る。
 
「桃~よろしくねぇ」

「うん、茜ちゃん。嬉しい」

 桃花が喜ぶ姿を隣の席の紅緒も見て、微笑んでいる。
 総長飛鳥と桃花、そして茜の関係を周りがヒソヒソと話しているのがわかる。
 そして三時限目の後。
 
「桃花。俺、行ってくるわ」

「え……」

「心配するな。すぐ済む……茜、頼むな」

「はい、飛鳥様」

 誰にも聞こえないような小声。
 紅緒は教室を出ていった。
 
「茜ちゃん……紅緒くん、また戦い?」

「だろうね」
 
「こんなに……毎日……」

「だから不良って見せかけた方が都合がいいんでしょ」

 みんなのために……と桃花の心が痛む。

「ねぇ~朱雀さん。ちょっと来てくれない??」

「えっ?」

 三人の女生徒が桃花の机の横に仁王立ちのようにして立っていた。

「桃になんか用事?」

 桃花より先に茜が答える。

「あんたには言ってない。朱雀桃花に言ってんの」

 強気、というよりは失礼な言い方だ。

「お嬢様達が随分な口の聞き方だね~?」

「ふん! 鴻谷家なんて、聞いたこともないし~……寄付もできない一般市民でしょ?」

「寄付……?」

「だっさいビンボー平民達! あたし達の事知らないのぉ~? 寄付金ランク・プラチナなんだけどぉ??」

「寄付金ランク~? あっはっは!! どういう価値観で生きてんの、ここの人間は? 金持ちだろうが寄付金してよーが、あんた達も一般市民でしょーが!」

 思わず茜が立ち上がる。

「貧乏人と一緒にしないでよね!」

 三人相手にも物怖じしない茜。
 教室中が、注目する。

「待って、茜ちゃん! 私、話を聞きに行きます! だから喧嘩みたいな事は、やめてください」

 今まで平和に、少人数の村で生きてきた桃花。

 茜は気が強く男子相手でも、いつも対等に言い返す子だった。
 その強さに、桃花は憧れてきたのだ。

「ふーん。いい度胸じゃん」
 
「桃、そんな一人で危ない! 私も行く!」

「だから、朱雀桃花だけに用があるって言ってんの! あんたは来るなよ!」

「3対1で卑怯じゃん!」

「茜ちゃん、大丈夫! 化け物じゃないんだもん。これくらい私もどうにかしないと……」

 コソッと桃花が茜に言う。

「桃、だめだって!」

「大丈夫」

「……あんたって、大人しいのに度胸はなんか人五倍くらい、ある子なんだよね。わかった」

 苦笑いして、茜が椅子に座った。
 それを見て桃花が立ち上がる。
 紅緒達が必死に戦って、茜までわざわざ自分のために転校してきてくれた。

 こんな対応くらい自分でしなければ、と思う。

「さっさと来なよ」

「えぇ、行きます」

「桃……」

 呼ばれたのは、トイレ横の階段。
 当然、綺麗な校舎だが少しだけ薄暗い場所だ。
 黙ってついていくと、三人の女生徒が振り返り桃花を睨んだ。

「あんた、飛鳥様と、四天王とどういう関係なの?」

「どういう関係? ……ええと……なんていうか」

 ルームシェアしている事は言ってもいいんだろうか? どこまで話していいのか悩んでしまう。
 
「ブスが粋がってんじゃないよ!?」

 黙ってしまった桃花に一人の女生徒が怒鳴ると次々に他の二人も言い始めた。

「そうよ! 貧乏人が夢見ない方がいいよ? あんたみたいなブスが、飛鳥様に似合うわけないじゃん!」

「飛鳥様はただ単に、お前みたいな可哀想な地味女に同情してるだけに決まってるだろ? バーカ!」

「同情……」

「あの茜って女と、二人で教室のすみっこでひっそり生きてろ! この学園は財力で階級わけされてんの! 平民はおとなしくしてな! ブス!」

「きゃっ!」

 突き飛ばされて、倒れ込んだ桃花を三人は笑って行ってしまった。

「あはは! 這いつくばってろ!」

「ヘルメット女! ざまぁー!」

 キャッキャと去っていく三人。

「いたたた」

 転んで痛んだ腰をなでる。
 田舎にはあんな怖い子達はいなかった。
 酷い事を言われて、酷い事をされた。

「(でも案外、大丈夫……妖魔より怖くない。これから私も戦っていかなきゃいけないんだもん。人間の女の子に負けてられないよ……でも)」

 紅緒との関係。
 どう答えたらいいのだろうか、夕子さんに聞いてみた方がいいだろう。

「(私は……紅緒くんのことをどう思ってるんだろう? それに紅緒くんは……あんなに優しいけど、私のことをどう思ってるんだろう……?)」
 
 そんな事を考えた。
 
「(でも紅緒くん達がいてくれるって思うと、私も頑張れる! 負けない!)」
 
 授業の始まりのチャイムが鳴った。

「あっ! 授業は始まっちゃう!!」
 
 慌てて戻ろうかと思った、その時トイレからも数人出て来て走り去っていく。
 何か言い合うような声が聞こえたが……。

「……誰かいるの?」

 もしや、と思いトイレを覗くと一人女子生徒が立っていた。
 暗い顔をしてブツブツと呟いている。
 
「あなた大丈夫?」

「……あんたこそさー……いじめられてたでしょ……ククク」

 逆に言われてしまい、ギクッとなる。

「え、私は大丈夫です……」

「そうなの……あんたは強いんだ……」

「強くはないけど……あなたは大丈夫なの?」

「……ふふ……もう大丈夫……あいつらなんか、どうとでもできるんだぁ」

 ギラッと少女の瞳が輝いて、桃花はゾクッと寒気がして一歩下がった。
 
「えっ……」

「いいの、もう王子様がおしえてくれた……あいつらを……あいつらを……ゲームしよ~っと……ふふ」

 ぶつぶつと呟く少女。
 片手にはスマホを持って、桃花の肩にぶつかりながらトイレを出て行った。

「……おうじさま……? ……ゲーム? ……あ! 授業!!」

 ハッとして授業に戻った桃花。
 授業が始まっていたが転校生なので、少しお小言を言われただけで済んだ。
 
 そして昼休み。
 無事に戦いを終えた紅緒に誘われ、また四天王達とテラスで昼食をとることになった。

「ねぇ、桃。本当に大丈夫なの?」

 コソッと茜に耳打ちされる。

「うん、私は大丈夫」

「なんだ? 何かあったのか?」

 既にハンバーガーを食べ終えた紅緒が桃花を見た。

「ううん、紅緒くん達こそ大丈夫?」

「あぁ園外だったからバイクとばして行ってきた」

「バ、バイク……!?」

「ただの公園に湧いた雑魚を退治しただけだ。俺と柘榴だけで行ったさ」

「そっか……良かった」 

 学園都市内での紅緒達の行動は、特例措置がされると聞いた。
 彼らがバイクに乗ることも、特別に許可されているのだろう。

「心配してくれたのか?」

「もちろん、いつだって心配だよ」

「サンキュ」

 紅緒が微笑むと、つい桃花も微笑んでしまう。
 そんな桃花を見て、また紅緒も微笑んで二人のまわりにポカポカと陽が集まるようだ。

「……そういえば、今日トイレでね」

「ん、何があった?」

 桃花は自分のことよりも、あのトイレで会った少女のことが心配になって紅緒に話すことに決めた。


  
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