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タワマン寮『サンクチュアリ』へ!

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 すごい量のパーティーの荷物を運転手兼ボディーガードさんと夕子さん、四天王達がサクっと車に運び終える。
 
「あそこが寮だ」

 車を走らせる先には、キラキラの高層ビルが見えた。
 
「あれが寮? 想像してたのと全然……違う」

「タワマンすっごいよね~学園に通うお金持ちの子供たちのための豪華施設って感じ」

 桃花の隣に座った茜が、ワクワクしたように笑った。
 
「ジムやらシアタールームにライブラリー、プールやスパなどもございます」

 夕子さんからパンフレットを貰った。

「……ただただ、びっくりです」

 村の実家は平屋に住んでいた桃花。
 広さはあったが、木造で古い家だった。

 エレベーターに乗ることも滅多になかったのに、今高速エレベーターでどんどん上に上がってる。
 ちょっと怖くて、茜の腕にしがみついてしまった。
 
「よ、48階!?」
 
 そして桃花達は生徒達の寮の最上階、生徒達が『サンクチュアリ(聖域)』と呼ぶフロアに着いた。
 
「えっ……すごい広さ」
 
 玄関に入るなり天井の高さと靴用のクローゼットに驚く桃花。
 玄関だけで元の自分の部屋より広い……。

「此処でのお世話は私が責任をもって致します。なんなりとお申し付けくださいね」

 夕子がにっこり笑った。
 一階は寮に住む人に仕える使用人の部屋になっていて護衛も兼ねているらしい。
 茜は夕子と一緒に暮らすとのこと。
 
「ルームシェアといっても、部屋ごとにシャワーもトイレもあるし不便はないよ☆ じゃあ俺も着替えてくるねーん」

「は、はい!」

 珊瑚は桃花にウインクして、自分の部屋に入って行った。

「荷物は部屋に運ばれてる。まぁ急がずに着替えたらリビングに来いよ」

 紅緒に優しく言われた。

「う、うん……ありがとう」

「桃~~私も着替えてくる! あとで部屋に行っていい?」

「茜ちゃん、うん、もちろん!」

 紅緒達と暮らすのはびっくりしたが、茜も同じマンションなのは嬉しい。
 部屋はとっても広くて、一部屋ではなく勉強部屋と寝室、そしてクローゼットルームもある。
 桃花の送った荷物がちょこんと部屋に運ばれていた。
 
「なんか部屋の広さに、荷物の量が……あってない」

 勉強机やベッドなどは新しいものが準備されていた。

「た、高そうだなぁ」

 シーツも上質なものだとすぐわかる触り心地。
 とりあえず桃花は制服から服を着替えようと思った。

「いつもの服でいいのかな」

 年頃の女の子らしく、普段の服も気を遣ってはいたが……。

「あれ、このダンボール」

 ダンボールにお母さんの字で『桃花へ』と書いてある。
 開けると手紙が入ってる。
 つい、読み上げてしまった。

「……桃花へ、理事長さんからお話聞いたかな? お母さん達からお話できずにだますような事になってごめんなさい。新しいお洋服、桃花が好きな雰囲気のものを沢山買ったので送ります」

 大好きなお母さんからの手紙。

「お母さん……だますなんてこと思ってないよ」
 
 きっと心配してるに違いない。
 大好きなお母さんとお父さん。
 
「(泣いちゃ駄目……! まだ、まだ……!)」

 泣かないようにとダンボールの中を見る。
 中には可愛い服がいっぱいあった。

「わぁ! 可愛いのいっぱい! このワンピ素敵!」

 ワンピースを選んでクローゼットの鏡の前に立つ。

「う……でも、この前髪とメガネで台無しだ……」

 するとノックがした。
 開けると茜も着替えてきたようだった。

「わー可愛いワンピだね! ……でもそのダッさいメガネと前髪なに? ……あ~おじさん心配なんだね。でも家にいる時は可愛くしてたっていいじゃん。飛鳥様と四天王しかいないんだし」

「大丈夫かな……?」

「大丈夫! 大丈夫! 前髪可愛くしてあげるよー!」

 茜はいつも桃花の髪を可愛く結ってくれていた。
 鏡の前で、前髪を整えてもらっていると田舎の小学校の教室を思い出す。

「はい、可愛くできた~」

「ありがとう~メガネないとスッキリする!」

「飛鳥様達びっくりするよ!」

「飛鳥様……私もそう呼んだ方がいいのかな??」

「紅緒って呼べって言われたんでしょ? 普段は名前を呼ばれるの嫌がるから、桃花はやっぱ特別なんだね」

「えっ……そうなんだ……」

 紅緒にとっての特別、という言葉にドキッとする。
 茜はそんな桃花をニヤニヤ見ていた。

「うふふ、これからどうなるのかな~~さ、みんな待ってるよ! 行こう桃!」

「うん」

 広くて長い廊下を通って、リビングへ。

「わぁ~教室より広い!」

 大きな窓から夜景が見えるリビングは広々として、パーティー用に飾られている。

「桃花」

「紅緒くん」

 前髪を編み上げ、メガネを外した桃花。
 少し驚いた顔をした紅緒は、桃花をじっと見つめた。
 紅緒の私服姿も、パーカーにズボンだがデザインが凝っていてよく似合っている。

「(紅緒くん、かっこいい……)」

「……桃花……」

「べ、紅緒くん。どうしたの?」

「いや……似合ってるな」

「あ、ありがとう」

 後ろの四天王達も何故か固まって桃花を見ている。

「茜、地味子はどこいったんだよ?」

「なに言ってんのよ、馬鹿柘榴」

 柘榴は同じ女の子だとわからないようだ。

「俺はわかってたけど☆まさかここまでとはね」

 珊瑚がピューッと口笛を吹く。

「とんだ変身だ……姫……驚いた」

 辰砂が下を向いて眼鏡を直す。

「お姉ちゃん、めっちゃ可愛いーー!!」

 苺が笑顔で叫んだ。

「えっ……そ、そんな」

「ひれ伏せ男ども!! 桃花はめっちゃ可愛いんだからね!」

 何故か茜が偉そうに叫ぶ!

「ちょっと、茜ちゃん~何言ってるの」

「はは、茜の言う通りだな」

「べ、紅緒くん!?」

 紅緒が笑って、桃花に微笑む。

「パーティーするか! 桃花」

「うん……!」
 
 柘榴と苺が飾り付けをしてパーティーらしくなったリビング。
 テーブルには、買ってきたご馳走がすでに並べられていた。
 みんなで手際よく食器を並べる。
 五人暮らしが慣れているようで何でも夕子さん任せではないらしい。
 準備が終わると夕子さんはにっこり微笑んでお辞儀をして1階へ降りて行った。

「よし、じゃあ紅炎学園にようこそ桃花、茜! 乾杯!」

「かんぱーーい!!」
 
 一気に出来た友人?達。
 朝の孤独はもうなかった。
 



 
 
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