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不死鳥の巫女
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「どういう事だ、覚えてないぞ」
二人が出逢った事があると言われ、驚く紅緒と桃花。
「7年前の事だ。……桃花さんの村は奥深い山奥にある。その山は飛鳥一族が山籠り修行に使う朱見山(あかみやま)のすぐ傍だったんだ」
「朱見山の? 七年前なら俺が二ヶ月の山籠り修行をした時だ」
朱見山という山は桃花も知っている。
しかし入ってはいけない霊山だと言われて桃花は入った記憶はない。
「そう。だが修行も終わりかけた夏の日。大変な嵐が起きて村も修行場でも避難勧告を受けた。……そして不運な事に山道を逃げる際、二台の車が土砂に飲み込まれかけた。車を捨てて命からがら山小屋に逃げ延びた。桃花さんと御両親。紅緒と従者一名がそこで出逢ったのだ」
「えっ……」
桃花と紅緒が顔を見合わせる。
そんな記憶は二人にはない。
「そして山小屋では妖魔の群れが嵐と共に襲いかかり……その時、皆を助けたのはお前だ紅緒」
「俺が……?」
七年前なら、まだ五歳だ。
嵐のなかで幼い少年が必死に桃花達を守ろうと戦ったのか。
「しかしお前も戦い続け、力も使い果たし大怪我をし死にかけた……その時に桃花さんの御両親が持っていたのは村で代々守られていた不死鳥が宿ると言われていた鏡『不死紅蓮の鏡』だった。その鏡と朱雀家を守ったあやかしの少年を助けるために不死鳥は力を使ってくださった!」
「……まさか」
桃花にはわからなかったが、紅緒は何か察したようだ。
「そうだ不死鳥は自分の加護を娘に与えた。桃花さんは不死鳥の巫女に選ばれたのだ」
「「「「ふ、不死鳥の巫女ぉーーーー!?」」」」
「……桃花が……」
紅緒は言葉を失くし、四人も驚きでどよめく。
「ふしちょうの、みこって……一体なんなんですか??」
「数百年、千年に一度現れるという癒やしの存在……傷ついた生命を癒やし、死者おも復活させる力を持つという巫女……! 人間が神から授かる力としては最高峰だと言われている。その時に授かった癒やしの力で貴女は紅緒を助けたのです」
あまりの言葉にぽかんとしてしまった桃花。
「ま、待ってください! 私にそんな力は無いです!! ……誰かと勘違いしてるんじゃ……!?」
でも思い出す。
今日の校庭で、とっさに苺を助けた力。
あれは不死鳥の力……?
「貴女は7年前に紅緒を助け不死鳥の巫女になった。だが、まだ幼い。不死鳥は貴女の力が完全に蘇るのを十四歳の誕生日に決めたそうです」
「十四歳……ちょうど一年後……です」
「あなたが完全に不死鳥の巫女になれば、必ず敵対する『蒼騎審』にも狙われる。再生の力があれば組織にとって強大な力になるからです」
「え……っそんな……」
あの氷のような冷たい少年。
人間に敵対する組織に狙われるだなんて恐怖だ。
「我々『紅刃斬』が貴女を必ず守ります。総長、そして四天王、お前たちは必ず桃花さんをお守りするのだ! 彼女は私達にとって女神に値する存在だ。姫を必ず守れ!!」
ぐるぐるメガネとヘルメット前髪の奥で、桃花は焦りと混乱で目がまわる。
「(私が巫女!? 女神!? 姫~~!?)」
「まさか彼女が不死鳥の巫女だとは……理事長、承知しました」
辰砂が頭を下げる。
「桃花姫かぁ~承知! 大船に乗った気持ちでいてよね☆」
珊瑚がウインクしてきた。
「お姉ちゃんすごい人だったんだね! さっきは助けてくれてありがとう! 僕に任せてください!」
苺が嬉しそうに笑う。
「この地味子が昔、総長を助けた……?? わかりましたけど……まじで? ……わかったけど……まじで?」
柘榴は納得しながら疑いながら、桃花を眺めていた。
まぁその気持ちはわかると桃花は思う。
そして紅緒を見ると、呆然としている。
「俺はなんで覚えてないんだ……。六歳の朱見山の修行は覚えているのに」
「……私も全然、覚えてないの。聞いた今でも信じられない……でも『べにおくん』って名前を聞いた時に、何か懐かしい気がした」
朝に出逢ってから、感じてた不思議な感覚。
「不死鳥が二人の記憶を消したのです。この事は『紅刃斬』と『朱雀家』の間で絶対の秘密として隠されてきた。しかしもう不死鳥の巫女となる一年前になった。苺を助け癒やしたように、桃花さんは徐々に才能が開花していくと考えられています。だから貴女をここに呼んだ」
「……そんな……こ、怖いです」
突然そんな事を言われても今は恐怖しか感じない。
「大丈夫。我々は人間と友好的に付き合い、混ざり合ってきたあやかしです。神に仕えし人間達とは特に交流も深い。貴女に力のコントロールを教え守る人間も手配しています。茜、入ってきなさい」
「(あ、あかね?)」
「はい」
姿を現したのは、黒髪ボブカットでツリ目が強気な少女。
まさにそれは村でずっと仲良しだった茜ちゃん……!!
「あ、茜ちゃん!? えっどうして!?」
桃花は驚いて立ち上がった。
同じ赤いセーラー服姿で茜はにっこり微笑んだ。
二人が出逢った事があると言われ、驚く紅緒と桃花。
「7年前の事だ。……桃花さんの村は奥深い山奥にある。その山は飛鳥一族が山籠り修行に使う朱見山(あかみやま)のすぐ傍だったんだ」
「朱見山の? 七年前なら俺が二ヶ月の山籠り修行をした時だ」
朱見山という山は桃花も知っている。
しかし入ってはいけない霊山だと言われて桃花は入った記憶はない。
「そう。だが修行も終わりかけた夏の日。大変な嵐が起きて村も修行場でも避難勧告を受けた。……そして不運な事に山道を逃げる際、二台の車が土砂に飲み込まれかけた。車を捨てて命からがら山小屋に逃げ延びた。桃花さんと御両親。紅緒と従者一名がそこで出逢ったのだ」
「えっ……」
桃花と紅緒が顔を見合わせる。
そんな記憶は二人にはない。
「そして山小屋では妖魔の群れが嵐と共に襲いかかり……その時、皆を助けたのはお前だ紅緒」
「俺が……?」
七年前なら、まだ五歳だ。
嵐のなかで幼い少年が必死に桃花達を守ろうと戦ったのか。
「しかしお前も戦い続け、力も使い果たし大怪我をし死にかけた……その時に桃花さんの御両親が持っていたのは村で代々守られていた不死鳥が宿ると言われていた鏡『不死紅蓮の鏡』だった。その鏡と朱雀家を守ったあやかしの少年を助けるために不死鳥は力を使ってくださった!」
「……まさか」
桃花にはわからなかったが、紅緒は何か察したようだ。
「そうだ不死鳥は自分の加護を娘に与えた。桃花さんは不死鳥の巫女に選ばれたのだ」
「「「「ふ、不死鳥の巫女ぉーーーー!?」」」」
「……桃花が……」
紅緒は言葉を失くし、四人も驚きでどよめく。
「ふしちょうの、みこって……一体なんなんですか??」
「数百年、千年に一度現れるという癒やしの存在……傷ついた生命を癒やし、死者おも復活させる力を持つという巫女……! 人間が神から授かる力としては最高峰だと言われている。その時に授かった癒やしの力で貴女は紅緒を助けたのです」
あまりの言葉にぽかんとしてしまった桃花。
「ま、待ってください! 私にそんな力は無いです!! ……誰かと勘違いしてるんじゃ……!?」
でも思い出す。
今日の校庭で、とっさに苺を助けた力。
あれは不死鳥の力……?
「貴女は7年前に紅緒を助け不死鳥の巫女になった。だが、まだ幼い。不死鳥は貴女の力が完全に蘇るのを十四歳の誕生日に決めたそうです」
「十四歳……ちょうど一年後……です」
「あなたが完全に不死鳥の巫女になれば、必ず敵対する『蒼騎審』にも狙われる。再生の力があれば組織にとって強大な力になるからです」
「え……っそんな……」
あの氷のような冷たい少年。
人間に敵対する組織に狙われるだなんて恐怖だ。
「我々『紅刃斬』が貴女を必ず守ります。総長、そして四天王、お前たちは必ず桃花さんをお守りするのだ! 彼女は私達にとって女神に値する存在だ。姫を必ず守れ!!」
ぐるぐるメガネとヘルメット前髪の奥で、桃花は焦りと混乱で目がまわる。
「(私が巫女!? 女神!? 姫~~!?)」
「まさか彼女が不死鳥の巫女だとは……理事長、承知しました」
辰砂が頭を下げる。
「桃花姫かぁ~承知! 大船に乗った気持ちでいてよね☆」
珊瑚がウインクしてきた。
「お姉ちゃんすごい人だったんだね! さっきは助けてくれてありがとう! 僕に任せてください!」
苺が嬉しそうに笑う。
「この地味子が昔、総長を助けた……?? わかりましたけど……まじで? ……わかったけど……まじで?」
柘榴は納得しながら疑いながら、桃花を眺めていた。
まぁその気持ちはわかると桃花は思う。
そして紅緒を見ると、呆然としている。
「俺はなんで覚えてないんだ……。六歳の朱見山の修行は覚えているのに」
「……私も全然、覚えてないの。聞いた今でも信じられない……でも『べにおくん』って名前を聞いた時に、何か懐かしい気がした」
朝に出逢ってから、感じてた不思議な感覚。
「不死鳥が二人の記憶を消したのです。この事は『紅刃斬』と『朱雀家』の間で絶対の秘密として隠されてきた。しかしもう不死鳥の巫女となる一年前になった。苺を助け癒やしたように、桃花さんは徐々に才能が開花していくと考えられています。だから貴女をここに呼んだ」
「……そんな……こ、怖いです」
突然そんな事を言われても今は恐怖しか感じない。
「大丈夫。我々は人間と友好的に付き合い、混ざり合ってきたあやかしです。神に仕えし人間達とは特に交流も深い。貴女に力のコントロールを教え守る人間も手配しています。茜、入ってきなさい」
「(あ、あかね?)」
「はい」
姿を現したのは、黒髪ボブカットでツリ目が強気な少女。
まさにそれは村でずっと仲良しだった茜ちゃん……!!
「あ、茜ちゃん!? えっどうして!?」
桃花は驚いて立ち上がった。
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