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総動員バトル!桃花の力!?

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 三階から飛鳥にお姫様抱っこされて、校庭に飛び降りる羽目になった桃花。

「きゃあああっ!」

 ぶわっ! と下半身から感じる恐ろしい感触!!

 田舎育ちで、ジェットコースターなんて乗ったことのない桃花。
 あまりの衝撃を感じて、飛鳥の首元に思いきり抱きついていた。
 三階から飛び降りても、飛鳥はまるで階段の二段めから飛んだくらい軽やかに着地した。

「桃花、苦しい」
 
「あっ……ご、ごめんなさい……っ」

「ふっ、まぁいいけど」

 男子に抱きついてしまった! と桃花は真っ赤になる。
 総長飛鳥は照れることもなく、笑った。
 
「(さ、三階から飛んでも平気そうだし……この人は一体……!?)」

「なにやってんだよぉ~紅緒べにお~! ん、女の子ぉ? え~まじでぇ」

「総長! 遅刻がすぎるぞ……しかも女性と遊んでいるとは何事だ!」

「えぇ~~お姉ちゃんどうしたの? べにお兄ちゃんと遊んでたの?」
 
 校庭には降りた柘榴の他に男子が三人。

 会話で名前がわかった。

 珊瑚さんご――長めの金髪を結んでいる。長ラン、長身。
 チャラチャラしてる雰囲気でピアスもしている。

 辰砂しんしゃ――メガネをかけた黒髪。

 普通の学ランで委員長のような真面目な雰囲気。

 いちご――可愛い目がくりくりの茶髪パーマ。
 お姉ちゃんと桃花を呼んだ少年は、私服姿で幼く見える。

 三人ともチャラ男系と優等生系と可愛い系でタイプは違うけど、イケメンだ。
 三人の隣には、先に降りた柘榴がいる。

「遊んでねーよ!」

「紅緒くん……?」

「ん?」

 総長飛鳥の名前は……飛鳥ではないようだ。

「俺の名前は飛鳥紅緒だ」

「飛鳥紅緒くん……」

「あぁ、そうだよ。桃花」

 近い顔の笑顔。
 『べにおくん』
 笑顔と名前。
 なにか記憶の底にある……?
 遠い日に呼んだ記憶……。

「(どこかで会ったことがある……?)」

「紅緒でいいぜ」

 紅緒にお姫様抱っこされたまま、桃花は記憶が交差するのを感じた。

「なんだよなんだよ~新入りって女の子かよ。紅緒が女に紅緒呼び許可とか珍しいじゃーん。どういう関係さ?」

 チャラ男っぽい男の子がニヤニヤと駆け寄ってきた。

「うるせーよ珊瑚。敵は何体いる?」

「ざっと30体。女子なら俺が抱っこしててあげよっか~? ありゃあ、随分と地味な子だなぁ」

「必要ない。桃花、この木の下で待ってろ……いいな」

「う、うん」
 
 学ランを羽織らされた桃花は、イチョウの木の下で降ろされた。
 空は渦巻いて、不気味な紫色だ。
 風も生臭く、ゾクゾクと寒気がする。

「これから……何が始まるの……?」

「戦いだよ。俺達は人間を守るあやかしのチームなんだ」

「戦い……あやかし……?」

 わけがわからない! そんな顔をしていると、眼鏡の男子が叫んだ。

「おい! いい加減にしないか! 今、俺達の先攻で一時撤退しているだけですぐ来るぞ!」

「わかってる!」

 長ランの下は、紅いワイシャツを着ていた飛鳥紅緒。
 腰にはいつの間にか、刀を携えている。
 それは柘榴と珊瑚と辰砂と苺も同じだ。
 それぞれスラリと刀を構える。
 彼らの先には……。

「うそ……あんなに沢山……」

 朝に見た化け物犬が、まだマシに思えるほどの異形の化け物達。
 犬っぽい化け物は頭が3つもあるし、鬼のような人間っぽい化け物もいる。
 恐ろしい咆哮が校庭に響いた。
 
「あいつらは、悪いチームの放つ妖魔だよ~」

 チャラ男の珊瑚がウインクして言った。

「行くぞ」
「おう!」
「はーい」
「了解」
「やっほーい、お姉ちゃん待っててね」
 
 個性豊か過ぎる男の子達が刀を構えて、そのまま化け物たちに向かっていく。

「あっ……危ないよっ!」

 あんな牙と爪が凶暴の化け物にどうやって!! と桃花は叫んでしまった。
 しかし一刀両断されていくのは化け物達だ。
 少年達は人間離れした動きで飛び、走り、時に何か護符のようなものを投げ化け物達の数を減らす。

 中でも紅緒は抜群に強い!
 襲いかかる三体の妖魔を一気に一振りで斬り吹き飛ばす。
 そして斬られた妖魔達は真っ赤な炎で焼き尽くされる。

「すごい……」

 しかし最後の数体になった時、虎のような妖魔が突如として氷の鎧のようなものに包まれた。
 紅緒は数体に囲まれ、斬り伏せたばかり。
 年下であろう苺が、1番巨大な氷の虎に狙われた。
 他の三人もそれぞれ強化された氷の妖魔に襲われ対応している。

「あっ……! あの男の子、危ない!」

「う、うわっ!? なんだよ、こいつ……! 急に強く!」

 氷の虎の牙の一撃をなんとか刀で弾いたが、すぐに爪、そして槍のようになった尻尾でも攻撃してくる。

「苺! 今行く!」

 交わしながら避ける苺に、紅緒が叫ぶがまだ遠い!
 後ろへ歩きながら攻防していたが、あまりの猛撃に転んで尻餅をついた苺。
 
「危ない!!」
 
 自分で何もできるわけがないがない、と思っていたのに桃花はイチョウの木の下から走り出していた。

「お、お姉ちゃん!? 来ないで!」

 氷の虎と苺の間に、盾になるように割り込んだ桃花。

「桃花ぁ!!」

 紅緒の怒声で邪魔をする妖魔は燃え尽きる、しかしその瞬間に氷の虎の爪が切り裂こうとした。
 朝と同じだ!
 でも朝とは違う、何か……怯えて終わるだけではない何かが燃えているのを感じる。

 紅緒や皆の闘いを見て、燃える力を感じたのだ――!

「来ないでぇ!!」

 金色のガラスのような壁が苺の前に立った桃花の前に出現した。
 それは氷の虎の爪を拒絶するように攻撃を弾き返す。

 その防御だけで十分だった。
 紅緒の刀が、一閃。
 氷の虎を粉砕させる。

「桃花っ!!」

「はぁっはぁっはぁっ」

 今、自分が何をしたのか桃花にはわからなかった。
 急に恐ろしさで足が震えだしたのを紅緒に支えられる。

「大丈夫か?」

「は、はい……」
 
「苺は!」
 
「ぼ、僕も大丈……あ、イテテ」

 座り込んだまま、そう言った苺の腕から血が流れていた。
 必死で怪我をしていた事に気付かなかったようだ。

「怪我を……」

「こんなんかすり傷だよぉ……イテテ」

「待って、見せて」

 支えた紅緒の腕から抜け出し、座り込んだ苺の腕に手を伸ばした桃花。
 瞬間に自分の左肩が熱くなる。

「ううっ……!」

 熱さと痛みで呻くが、その代わり右の手のひらに光が現れる。
 その光を苺の傷に当てた。
 
「桃花、お前は……」

「お姉ちゃん? ……えっ傷が治った……?」

「……わ、私どうして……こんなこと」

 桃花が1番、自分のした事に驚いた。
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