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第42話
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遥は英樹の死を目の当たりにしてからカイルと共に宿屋に戻っていた。
「そう、気を落とすことはありませんぜ?あれは今までの付けが回ってきただけなんですから。それに旦那だって危なかったんですからね?」
「あぁ、わかってる。分かってはいるんだ。ただ・・・」
気持ちが追い付いていかないんだ。
いくら割りきっていても殺したくはない、そんな甘い考えは命取りになるということはわかっているのだが、なかなか心が割りきれない。
「明日には魔族領の方へと向かいましょう!」
カイルは意気揚々と告げると隣の部屋へと帰っていった。
「はぁ~これからたくさんの人が死んでいくんだよなぁ~」
そう、今からやろうとしていることは魔族側につくということ。
それはすなわち人の敵になるということであった。
魔王であるルイの信頼を得てはいるが他の魔族が自分を認めるかどうかはまだなんともいえなかった。
もしかしたら、魔族領で暗殺される可能性だってあり得るのだ。
「平和って難しいのかなぁ~」
一人ぼやいてみても、なにもかわらない。
これからのやることが正しいなんて思わないけど、人族が勝って君臨し続ける世界もおかしいと思う。
世界は誰にでも平等に有るべきなのだ。
明日の不安を抱えながらその夜は眠りに着いた。
翌朝、宿を出るとカイルの先導のもと早速魔族領に向かうことになった。
昨日のうちに指輪の魔力も補充したので人気がなくなり次第、一気に駆け抜ける事にした。
すると宿屋を出ると、なんだか視線を感じて振り返るとこちらを見ている女性がいた。
何の気なしに見てからその見覚えのある顔に驚いてしまっている自分に気づく。
カイルに小声で合図を送ると早速巻くことにした。
あからさまな態度に向こうは疑問に思ったに違いない。
今は指輪の力で髪の色も、顔も別人になっているが、それでもこちらからは解る。
たった一人の妹なのだから。
自分は死んだことになっているはずである。
しかし、なぜ今更後をつけられたのかが不思議だった。
「旦那、さっきのってバルリア王国の勇者ってやつっすよね?」
「あぁ、さずがにびっくりした。でも、なんだってクルス皇国なんかに?」
「確かに・・・そうっすね?戦争準備で忙しいはずなんすけどね?」
「まぁ、いい。急ごう。」
「そうっすね。魔族領ではあっしから離れないで下さいよ!」
「あぁ、わかってる。」
川を一気に飛び越えると魔族領へと侵入をはたした。
奥へと進むにつれて一気に温度が下がっていき、カイルから渡されたコートを着こんだ。
「なんだってこんなに気温が違い過ぎるんだ?」
「昔からでさぁ~今向かっている北旺城は年間雪に閉ざされた城として攻め込みにくく安全なんですよ!」
「そうだろうね、でも住みにくくないかい?」
「それはどこも一緒っすよ。南に位置するもうひとつの王都がある南陵城は40度を越える暑さが続いているんす。」
「・・・」
暫く黙るとどうしても不公平過ぎる環境に何らかの力を感じる。
「でも、人の住んでいる川向こうはそんな事は全くなかったぞ?」
「そうでしょうね?ここ、魔族領は昔から呪われているんすよ。なんでも神の怒りをかって、川の上流の魔族領深くと、クルス皇国、バルリア王国、エスタニア王国の三国にまたがる険しい山、そして地の果てと呼ばれるルーン王国の南に封印の石碑があって天候などを操っているって話がありますが、誰一人としてそれをみた者はいないんすよ。あっしも探しやしたが、そんなものはありませんでした。」
「へー、後で魔族領の方を案内してよ?」
カイルは首を傾げながら呆れながら頷いてくれた。
「いいっすけど、何にもないっすよ?」
「あぁ、それでも見て見てみたいんだ。」
走ること4時間半。
やっと、城の屋根が見えてきた。
城につくと門番にカイルが話をするとすんなりと中に入れた。
ここでは指輪も外し、元の姿のままうろつく事にした。
「こっちですぜ?旦那。」
カイルに呼ばれるがままに向かうと見覚えのある姿を見つけた。
「あの時の・・・っ・・・」
バルリア王国に入ったときに人の姿でうろついていた女性を発見したのだ。
みるやいなや、いきなり姿が消えると目の前に来ていた。
今まさに遥の首には彼女のしっかりとした腕があり、今にも握り潰しそうな勢いであった。
「ヴァネッサ!何やってるんっすか!離すっすよ!」
カイルの声に反応して腕がパット離された。
「げほっ、、ごほっ、、、」
「なんだい。人族を捕まえて来たんだろう?身の程を分からせてやってるんじゃないか?」
カイルは怒鳴りながら魔王の大事な客だと伝えた。
「わかったら絶対に旦那に手を出さないことっすよ?」
「ふ~ん。こんな弱そうなのがね~?」
苦しそうにしている遥の腕を無理矢理つかんで引っ張りあげると壁に押し付けた。
じろじろと眺めていたが興味が無くなったのか、そのまま立ち去っていった。
「大丈夫っすか?悪い奴じゃ無いんすけど、どうしてもすぐに手が出るのが・・・」
「わかってるって。カイルがいなかったら死んでたかも?」
「うーん、さっさと城の中に入った方が安全っすね?」
それからは城門へと向かうと全てはカイルが話を通してくれた。
なんでも。あらかじめ魔王の方から指示は伝わっていたらしい。
謁見の間に入ると可愛らしい姿のルイが座っていた。
遥を見つけると、微笑みながら席を立ち上がると遥かの方へと駆けてきた。
首に抱きつくと小声でささやいてきた。
すると、皆のいる前でルイは突拍子もないことを宣言した。
「ことに、ルイ・ランドルクはここにいる人族の冴島遥と夫婦となることを宣言する!何人もそれを犯す事は許さない!」
と、言ったのである。
耳元では、『黙って合わせて!』といっていたが、まさかこのような大それた事を認めるのはどうかと思われた。
「そう、気を落とすことはありませんぜ?あれは今までの付けが回ってきただけなんですから。それに旦那だって危なかったんですからね?」
「あぁ、わかってる。分かってはいるんだ。ただ・・・」
気持ちが追い付いていかないんだ。
いくら割りきっていても殺したくはない、そんな甘い考えは命取りになるということはわかっているのだが、なかなか心が割りきれない。
「明日には魔族領の方へと向かいましょう!」
カイルは意気揚々と告げると隣の部屋へと帰っていった。
「はぁ~これからたくさんの人が死んでいくんだよなぁ~」
そう、今からやろうとしていることは魔族側につくということ。
それはすなわち人の敵になるということであった。
魔王であるルイの信頼を得てはいるが他の魔族が自分を認めるかどうかはまだなんともいえなかった。
もしかしたら、魔族領で暗殺される可能性だってあり得るのだ。
「平和って難しいのかなぁ~」
一人ぼやいてみても、なにもかわらない。
これからのやることが正しいなんて思わないけど、人族が勝って君臨し続ける世界もおかしいと思う。
世界は誰にでも平等に有るべきなのだ。
明日の不安を抱えながらその夜は眠りに着いた。
翌朝、宿を出るとカイルの先導のもと早速魔族領に向かうことになった。
昨日のうちに指輪の魔力も補充したので人気がなくなり次第、一気に駆け抜ける事にした。
すると宿屋を出ると、なんだか視線を感じて振り返るとこちらを見ている女性がいた。
何の気なしに見てからその見覚えのある顔に驚いてしまっている自分に気づく。
カイルに小声で合図を送ると早速巻くことにした。
あからさまな態度に向こうは疑問に思ったに違いない。
今は指輪の力で髪の色も、顔も別人になっているが、それでもこちらからは解る。
たった一人の妹なのだから。
自分は死んだことになっているはずである。
しかし、なぜ今更後をつけられたのかが不思議だった。
「旦那、さっきのってバルリア王国の勇者ってやつっすよね?」
「あぁ、さずがにびっくりした。でも、なんだってクルス皇国なんかに?」
「確かに・・・そうっすね?戦争準備で忙しいはずなんすけどね?」
「まぁ、いい。急ごう。」
「そうっすね。魔族領ではあっしから離れないで下さいよ!」
「あぁ、わかってる。」
川を一気に飛び越えると魔族領へと侵入をはたした。
奥へと進むにつれて一気に温度が下がっていき、カイルから渡されたコートを着こんだ。
「なんだってこんなに気温が違い過ぎるんだ?」
「昔からでさぁ~今向かっている北旺城は年間雪に閉ざされた城として攻め込みにくく安全なんですよ!」
「そうだろうね、でも住みにくくないかい?」
「それはどこも一緒っすよ。南に位置するもうひとつの王都がある南陵城は40度を越える暑さが続いているんす。」
「・・・」
暫く黙るとどうしても不公平過ぎる環境に何らかの力を感じる。
「でも、人の住んでいる川向こうはそんな事は全くなかったぞ?」
「そうでしょうね?ここ、魔族領は昔から呪われているんすよ。なんでも神の怒りをかって、川の上流の魔族領深くと、クルス皇国、バルリア王国、エスタニア王国の三国にまたがる険しい山、そして地の果てと呼ばれるルーン王国の南に封印の石碑があって天候などを操っているって話がありますが、誰一人としてそれをみた者はいないんすよ。あっしも探しやしたが、そんなものはありませんでした。」
「へー、後で魔族領の方を案内してよ?」
カイルは首を傾げながら呆れながら頷いてくれた。
「いいっすけど、何にもないっすよ?」
「あぁ、それでも見て見てみたいんだ。」
走ること4時間半。
やっと、城の屋根が見えてきた。
城につくと門番にカイルが話をするとすんなりと中に入れた。
ここでは指輪も外し、元の姿のままうろつく事にした。
「こっちですぜ?旦那。」
カイルに呼ばれるがままに向かうと見覚えのある姿を見つけた。
「あの時の・・・っ・・・」
バルリア王国に入ったときに人の姿でうろついていた女性を発見したのだ。
みるやいなや、いきなり姿が消えると目の前に来ていた。
今まさに遥の首には彼女のしっかりとした腕があり、今にも握り潰しそうな勢いであった。
「ヴァネッサ!何やってるんっすか!離すっすよ!」
カイルの声に反応して腕がパット離された。
「げほっ、、ごほっ、、、」
「なんだい。人族を捕まえて来たんだろう?身の程を分からせてやってるんじゃないか?」
カイルは怒鳴りながら魔王の大事な客だと伝えた。
「わかったら絶対に旦那に手を出さないことっすよ?」
「ふ~ん。こんな弱そうなのがね~?」
苦しそうにしている遥の腕を無理矢理つかんで引っ張りあげると壁に押し付けた。
じろじろと眺めていたが興味が無くなったのか、そのまま立ち去っていった。
「大丈夫っすか?悪い奴じゃ無いんすけど、どうしてもすぐに手が出るのが・・・」
「わかってるって。カイルがいなかったら死んでたかも?」
「うーん、さっさと城の中に入った方が安全っすね?」
それからは城門へと向かうと全てはカイルが話を通してくれた。
なんでも。あらかじめ魔王の方から指示は伝わっていたらしい。
謁見の間に入ると可愛らしい姿のルイが座っていた。
遥を見つけると、微笑みながら席を立ち上がると遥かの方へと駆けてきた。
首に抱きつくと小声でささやいてきた。
すると、皆のいる前でルイは突拍子もないことを宣言した。
「ことに、ルイ・ランドルクはここにいる人族の冴島遥と夫婦となることを宣言する!何人もそれを犯す事は許さない!」
と、言ったのである。
耳元では、『黙って合わせて!』といっていたが、まさかこのような大それた事を認めるのはどうかと思われた。
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