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第13話
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エスタニア王国では冴島遥が消えてから魔族の砲火に晒されていた。
突然目の前の川を渡って押し寄せて来たのである。
エスタニア王国の北にあるクルス皇国でも同様に川を挟んで対岸は魔王領になっていたのでお互い同時に攻め込まれていた。
エスタニア王国とクルス皇国は、ともに川を隔てており、橋は一ヶ所だけかかっているが商人が往き来する位で、それ以上の交流はなかった。
そして西南に位置するルーン王国とも真ん中に深い、迷いの森を挟んでおり、なかなかそこを抜けようと思う者はいなかった。
名前の通り、一度入ったら最後。
同じくところをずっといったり来たりで体力を消耗し森の肥やしになると言われている。
それは昔から言われていることではあるが一部間違ってもいる。
そこはかつて隠れエルフの里があったのだ。
その為、エルフが張った結界によってこのようになってしまったのだ。
今もラセツがご丁寧によそ者を寄せ付けないように張っている。
それから、南にあるバルリア王国とは標高の高い山を境にしているため、エスタニア王国からもクルス皇国からも険しい道のりであった。
しかし、ルーン王国からは平地づたいにこれるので交易が盛んであった。
今、もっとも勇者を欲っしているのはルーン王国であった。
唯一の女王が納める国とあって格下にみられがちだが、この国では奴隷制度がないのだ。
種族に隔たりがなく、人族も40%しか住んでいない。
そういうロザリア・スプリットも一見人に見えるがそうではない。
隠し通しているがドワーフなのだ。
しかし、彼女はドワーフとしての腕力も勿論、並外れた魔力も持っていたのだ。
人前に出るときは人に化けて自らを偽った。
王は人でなければならぬと言われていたからだった。
ロザリアの父は前王オスロエスと言って、れっきとした人族だった。
しかし、伯母にドワーフがいたのだ。
そのせいで彼女は先祖帰りしてしまったのだ。
「バルリア王国に勇者が降臨したとはホントか?」
「はい。そのようでございます。」
奥から大臣である太った男性が声を荒げてきた。
「陛下、これは由々しき事態ですぞ!このままでは我が国だけが防衛に劣るではありませぬか?」
「ええーい。黙っておれ!そのこと、陛下も重々承知じゃ。口を挟むでない。」
陛下の側についている女性がいきなり叱りつけた。
「もうよい。皆下がるがいい。それとスズシロを呼んでおいてくれないか?」
「はっ。直ちに文をしたためて参ります」
それから一羽の鳥が迷いの森に向けて飛んでいった。
遥が逃げたことはバルリア王国城内で密かに噂になっていた。
勇者が気に入った商人の男を奴隷にしようとして逃げられたと。
あまりにも恥さらしな事であったために箝口令がしかれたが、噂は瞬く間に流れていった。
「あんなに強くて綺麗な勇者様でもねー?」
「そうよね?無理矢理はよくないわねー?」
「しっ、来たわよ。くすくすっ。」
廊下からヒソヒソと聞こえてくる声はどこにいても美咲には耐えがたい屈辱だった。
「ねぇ、奴隷の首輪は絶対に主人以外には外せないんじゃなかったの?」
「いえ、美咲様、それはもっともでございます。しかし、奴隷の首輪を作った魔法使い以上の実力の持ち主でないとこのように溶かすことは不可能にございます。」
「じゃー何で壊れてるのよ?」
「それは助けに来た者がとんでもない魔法の使い手だったとしか・・・」
「・・・」
勇者は魔法が使えない。
言い伝えではそうなっていた。
勿論美咲も試してみたがマナがないため、使うことは愚か感じることさえ出来なかった。
その代わりに手に入れたのが強靭な体と身体能力。
誰にもひけをとらない腕力だった。
しかし、同じく召喚されて来たはずの兄にはそれがなかった。
体も最初に壁に激突したときに嫌な音がした。
まるで骨が軋むような、そんな音だった。
魔法使いに治癒させたが完全には治りきらなかった。
美咲は自分の腕にナイフを当てた。
少し切ってみた。
痛みと血が滴り落ちた。しかし、次には肌が盛り上がり再生したのだ。
気になっていたことを牢の囚人でも試してみた。
しかし、傷は自然に治ることはなかった。
腕を切り落として治療を施したが魔法で治るのは切り落とすぎりぎりの傷だけだった。
さすがに自分の体で試すのは躊躇われたので遥を縛りつけたとき腕にはまっている物が気になった。
誰かから貰った物だとしたら・・・?
そう思うといてもたってもいられずに腕を切り落とす実験をすることにした。
奴隷の首輪の威力も知りたかったので思いっきり引っ張ってみて、どれ程の電撃が走るのかを確かめた。
威力は大概のもので暫く目を覚まさなかったので、本当の死んでしまったのかと冷や冷やした。
起きるとロープで肘の上をきつく縛ると斧で腕をブレスレットごと切り落とした。
一発で綺麗に切れたのには驚いた。
激痛に叫ぶ姿を眺めながら自分はきっと心が壊れてしまったんだと認識した。
泣き叫ぶ遥を眺めながら実験を繰り返す。
魔法使いを呼び出して腕の治癒をさせた。
すると驚いたことに綺麗にくっついたのだった。
勇者として召喚された者は他の人と比べて治癒が良く効くと言うことが分かった。
毎日でも好きなように楽しむことができることに胸踊らせながら自室に戻ることにした。
「明日こそは料理を食べさせてあげるからね?」
そう言うと、部屋に鍵をかけると出ていったのである。
それから助けが来たと?
違う、多分魔法が使えるのだ。
能力事態が違うのかも知れない。
もっと、早く気づくべきだった。
どんなに悔しがっても仕方がない。
ただ、今は逃げ出した囚人2名と街に出た魔族の討伐が責務だった。
突然目の前の川を渡って押し寄せて来たのである。
エスタニア王国の北にあるクルス皇国でも同様に川を挟んで対岸は魔王領になっていたのでお互い同時に攻め込まれていた。
エスタニア王国とクルス皇国は、ともに川を隔てており、橋は一ヶ所だけかかっているが商人が往き来する位で、それ以上の交流はなかった。
そして西南に位置するルーン王国とも真ん中に深い、迷いの森を挟んでおり、なかなかそこを抜けようと思う者はいなかった。
名前の通り、一度入ったら最後。
同じくところをずっといったり来たりで体力を消耗し森の肥やしになると言われている。
それは昔から言われていることではあるが一部間違ってもいる。
そこはかつて隠れエルフの里があったのだ。
その為、エルフが張った結界によってこのようになってしまったのだ。
今もラセツがご丁寧によそ者を寄せ付けないように張っている。
それから、南にあるバルリア王国とは標高の高い山を境にしているため、エスタニア王国からもクルス皇国からも険しい道のりであった。
しかし、ルーン王国からは平地づたいにこれるので交易が盛んであった。
今、もっとも勇者を欲っしているのはルーン王国であった。
唯一の女王が納める国とあって格下にみられがちだが、この国では奴隷制度がないのだ。
種族に隔たりがなく、人族も40%しか住んでいない。
そういうロザリア・スプリットも一見人に見えるがそうではない。
隠し通しているがドワーフなのだ。
しかし、彼女はドワーフとしての腕力も勿論、並外れた魔力も持っていたのだ。
人前に出るときは人に化けて自らを偽った。
王は人でなければならぬと言われていたからだった。
ロザリアの父は前王オスロエスと言って、れっきとした人族だった。
しかし、伯母にドワーフがいたのだ。
そのせいで彼女は先祖帰りしてしまったのだ。
「バルリア王国に勇者が降臨したとはホントか?」
「はい。そのようでございます。」
奥から大臣である太った男性が声を荒げてきた。
「陛下、これは由々しき事態ですぞ!このままでは我が国だけが防衛に劣るではありませぬか?」
「ええーい。黙っておれ!そのこと、陛下も重々承知じゃ。口を挟むでない。」
陛下の側についている女性がいきなり叱りつけた。
「もうよい。皆下がるがいい。それとスズシロを呼んでおいてくれないか?」
「はっ。直ちに文をしたためて参ります」
それから一羽の鳥が迷いの森に向けて飛んでいった。
遥が逃げたことはバルリア王国城内で密かに噂になっていた。
勇者が気に入った商人の男を奴隷にしようとして逃げられたと。
あまりにも恥さらしな事であったために箝口令がしかれたが、噂は瞬く間に流れていった。
「あんなに強くて綺麗な勇者様でもねー?」
「そうよね?無理矢理はよくないわねー?」
「しっ、来たわよ。くすくすっ。」
廊下からヒソヒソと聞こえてくる声はどこにいても美咲には耐えがたい屈辱だった。
「ねぇ、奴隷の首輪は絶対に主人以外には外せないんじゃなかったの?」
「いえ、美咲様、それはもっともでございます。しかし、奴隷の首輪を作った魔法使い以上の実力の持ち主でないとこのように溶かすことは不可能にございます。」
「じゃー何で壊れてるのよ?」
「それは助けに来た者がとんでもない魔法の使い手だったとしか・・・」
「・・・」
勇者は魔法が使えない。
言い伝えではそうなっていた。
勿論美咲も試してみたがマナがないため、使うことは愚か感じることさえ出来なかった。
その代わりに手に入れたのが強靭な体と身体能力。
誰にもひけをとらない腕力だった。
しかし、同じく召喚されて来たはずの兄にはそれがなかった。
体も最初に壁に激突したときに嫌な音がした。
まるで骨が軋むような、そんな音だった。
魔法使いに治癒させたが完全には治りきらなかった。
美咲は自分の腕にナイフを当てた。
少し切ってみた。
痛みと血が滴り落ちた。しかし、次には肌が盛り上がり再生したのだ。
気になっていたことを牢の囚人でも試してみた。
しかし、傷は自然に治ることはなかった。
腕を切り落として治療を施したが魔法で治るのは切り落とすぎりぎりの傷だけだった。
さすがに自分の体で試すのは躊躇われたので遥を縛りつけたとき腕にはまっている物が気になった。
誰かから貰った物だとしたら・・・?
そう思うといてもたってもいられずに腕を切り落とす実験をすることにした。
奴隷の首輪の威力も知りたかったので思いっきり引っ張ってみて、どれ程の電撃が走るのかを確かめた。
威力は大概のもので暫く目を覚まさなかったので、本当の死んでしまったのかと冷や冷やした。
起きるとロープで肘の上をきつく縛ると斧で腕をブレスレットごと切り落とした。
一発で綺麗に切れたのには驚いた。
激痛に叫ぶ姿を眺めながら自分はきっと心が壊れてしまったんだと認識した。
泣き叫ぶ遥を眺めながら実験を繰り返す。
魔法使いを呼び出して腕の治癒をさせた。
すると驚いたことに綺麗にくっついたのだった。
勇者として召喚された者は他の人と比べて治癒が良く効くと言うことが分かった。
毎日でも好きなように楽しむことができることに胸踊らせながら自室に戻ることにした。
「明日こそは料理を食べさせてあげるからね?」
そう言うと、部屋に鍵をかけると出ていったのである。
それから助けが来たと?
違う、多分魔法が使えるのだ。
能力事態が違うのかも知れない。
もっと、早く気づくべきだった。
どんなに悔しがっても仕方がない。
ただ、今は逃げ出した囚人2名と街に出た魔族の討伐が責務だった。
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