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60話 大事な想い
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弁解の余地も無かった。
帰ってきてすぐに見た光景が、息子同士がキスし
ているなどあってはならない事だった。
そのあと、キッチンに場所をかえて話をする事と
なった。
「歩夢くん、まさかと思うけど郁也と?」
『まさか本気で郁也と付き合うつもりじゃないで
しょうね?』
「あ……えっと………」
「母さん、聞いてくれよ。俺が……」
「あんたは黙ってなさい。私は歩夢くんに聞きた
いの。君はどう思ってるの?」
「………」
気まずい。
一番知られたくない人に、一番先に知られてしま
ったのだ。
「この前、歩夢が俺のせいで襲われて……外泊し
た日あっただろ?俺と付き合ってるんじゃない
かって疑われたんだ…でも、俺は本気で歩夢の
事が」
「黙ってなさい。郁也、あんたの意見はいいの。
私が聞きたいのは歩夢くん、君の事なの。それ
によっては私達は……」
『違うって言ってよ?そうじゃないと、このまま
家族ではいられないのよ!』
「ちがっ……そんなつもりじゃ……」
悪意じゃないが、押しつぶされそうなくらいに息
が苦しい。
目の前がクラクラする……。
「歩夢?」
「歩夢くん……歩夢くん!」
いきなりの事で焦る声がこだまして聞こえてきた。
声が遠くで聞こえている。
倒れたのだと知ったのは、そのあとだった。
「おい、歩夢っ!」
息ができないくらいに苦しくて、たまらなかった。
自分でもまだ、わからないのに、問い詰められた
せいだろう。
いきなりの過呼吸に流石に驚いたのだった。
一応落ち着くと、今は部屋で寝かせておいたのだ
った。
「郁也、あんたはどうして歩夢くんに手を出した
の?」
「まだ何もしてないって…歩夢が拒絶してたから、
何もできてねーって。それにキスだけだし」
「キスだけって……もう、どーせ本気じゃないん
でしょ?」
「違う……今度こそ、本気なんだ。歩夢が欲しい。
俺のモノにしたい。絶対に離したくないんだ。
大学卒業したら、ここを出ていく。その時に、
もし………」
郁也の決意は硬いのだと知った。
まどかさんにとって、どっちももう自分の息子な
のだ。
もし、郁也の我儘なら叱ってやるつもりだった。
だが、もし歩夢くんも本気で好きなのだとしたら、
覚悟を決めなければならなかった。
「今は黙っててあげるわ、でもね郁也、歩夢くん
には手を出さないでちょうだい。本人が同じ気
持ちだって分かるまではなし崩しに関係をもつ
のは禁止よ。それに未成年に手を出すんじゃな
いわ!」
「分かったって、俺も今回ばかりは戸惑ってんだ
っていつもはこんな気持ちになった事なかった
からさ。歩夢が大事なんだ。襲われそうになっ
た時、マジで肝が冷えた気がしたんだ」
「そう、その言葉信じるわよ?幸樹さんをまさか
こん な形で裏切るなんて………あぁ、どうし
ましょ」
「言わなきゃいいだろ?」
「あんたはぁ~、誰のせいで悩んでると思うのよ!
まさかあんた美咲ちゃんにまで手を出してないわ
よね」
「ないない、最近はずっと歩夢の事ばっか考えて
るしそれに、歩夢も知ってるよ。初めっから俺
の声聞こえてたっぽいし」
「声?」
「いや、なんでもね~よ」
郁也はそのまま部屋に帰ったが、いてもたっても
いられずに、すぐに横の部屋に向かったのだった。
シングルのベッドは少し狭いが、歩夢の横に寝転
がったのだった。
帰ってきてすぐに見た光景が、息子同士がキスし
ているなどあってはならない事だった。
そのあと、キッチンに場所をかえて話をする事と
なった。
「歩夢くん、まさかと思うけど郁也と?」
『まさか本気で郁也と付き合うつもりじゃないで
しょうね?』
「あ……えっと………」
「母さん、聞いてくれよ。俺が……」
「あんたは黙ってなさい。私は歩夢くんに聞きた
いの。君はどう思ってるの?」
「………」
気まずい。
一番知られたくない人に、一番先に知られてしま
ったのだ。
「この前、歩夢が俺のせいで襲われて……外泊し
た日あっただろ?俺と付き合ってるんじゃない
かって疑われたんだ…でも、俺は本気で歩夢の
事が」
「黙ってなさい。郁也、あんたの意見はいいの。
私が聞きたいのは歩夢くん、君の事なの。それ
によっては私達は……」
『違うって言ってよ?そうじゃないと、このまま
家族ではいられないのよ!』
「ちがっ……そんなつもりじゃ……」
悪意じゃないが、押しつぶされそうなくらいに息
が苦しい。
目の前がクラクラする……。
「歩夢?」
「歩夢くん……歩夢くん!」
いきなりの事で焦る声がこだまして聞こえてきた。
声が遠くで聞こえている。
倒れたのだと知ったのは、そのあとだった。
「おい、歩夢っ!」
息ができないくらいに苦しくて、たまらなかった。
自分でもまだ、わからないのに、問い詰められた
せいだろう。
いきなりの過呼吸に流石に驚いたのだった。
一応落ち着くと、今は部屋で寝かせておいたのだ
った。
「郁也、あんたはどうして歩夢くんに手を出した
の?」
「まだ何もしてないって…歩夢が拒絶してたから、
何もできてねーって。それにキスだけだし」
「キスだけって……もう、どーせ本気じゃないん
でしょ?」
「違う……今度こそ、本気なんだ。歩夢が欲しい。
俺のモノにしたい。絶対に離したくないんだ。
大学卒業したら、ここを出ていく。その時に、
もし………」
郁也の決意は硬いのだと知った。
まどかさんにとって、どっちももう自分の息子な
のだ。
もし、郁也の我儘なら叱ってやるつもりだった。
だが、もし歩夢くんも本気で好きなのだとしたら、
覚悟を決めなければならなかった。
「今は黙っててあげるわ、でもね郁也、歩夢くん
には手を出さないでちょうだい。本人が同じ気
持ちだって分かるまではなし崩しに関係をもつ
のは禁止よ。それに未成年に手を出すんじゃな
いわ!」
「分かったって、俺も今回ばかりは戸惑ってんだ
っていつもはこんな気持ちになった事なかった
からさ。歩夢が大事なんだ。襲われそうになっ
た時、マジで肝が冷えた気がしたんだ」
「そう、その言葉信じるわよ?幸樹さんをまさか
こん な形で裏切るなんて………あぁ、どうし
ましょ」
「言わなきゃいいだろ?」
「あんたはぁ~、誰のせいで悩んでると思うのよ!
まさかあんた美咲ちゃんにまで手を出してないわ
よね」
「ないない、最近はずっと歩夢の事ばっか考えて
るしそれに、歩夢も知ってるよ。初めっから俺
の声聞こえてたっぽいし」
「声?」
「いや、なんでもね~よ」
郁也はそのまま部屋に帰ったが、いてもたっても
いられずに、すぐに横の部屋に向かったのだった。
シングルのベッドは少し狭いが、歩夢の横に寝転
がったのだった。
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