上 下
47 / 75

47話 劇の配役

しおりを挟む
王子様……多分貧乏で暮らしていくのも辛いのな
らそれが嫉妬渦巻く城内の暮らしでも幸せと言う
のだろうか?

物語りの最後はいつもそう。
城でいつまでも幸せに暮らしましたとさ…………
おしまい。

本当にそれって幸せ?
意地悪な姑はいない?

継母の次が皇后の虐めにあうんじゃないの?
だって、その後の物語なんて何も伝わっていない
のだから。

もし、シンデレラが心を読む事ができたら?

きっととっくに逃げているか、この世に未練なく
逝くかもしれない。

希望の持てない世界で生きていくのは辛いから…。

「おーい、終わったし、帰るか?」

「あ、うん」

綾野は楽しそうに継母役をやっている。
歩夢もそっちだったら、もっと楽しかったのだろ
うか?

当日メイクは女子がやる事になっている。
衣装はそれまでに届くらしい。

服選びでさえ、あんなに詳しく寸法を測る事はな
かった。
女子の服とは難儀なものだった。

家に帰ると机の上に台本を置くと、飲み物を取り
に一階へと降りていく。
そして帰ってきた時には、郁也が真剣に台本を読
んでいたので驚くと素早く取り上げたのだった。

「お前らの文化祭の出し物は劇なのか?定番だな」
『懐かしいなぁ~、俺王子役だったんだよな~』

「郁也兄さんはハマり役が王子役だったんだね」

「まぁーな……で!歩夢は何をやるんだ?」

「……勉強教えてくれるんでしょ!」

椅子に座ると教科書を並べる。
言いたくない。

だって、シンデレラなんて言えるわけないじゃな
いか!

「俺さ、母さん達誘って見に行くからな!」

「来ちゃダメ!」

「なんでだよ?せっかくの劇だろ?ビデオに残そ
 うぜ?」

「絶対にダメ!見に来たら二度と口きかないから」

「なんでだよ?いいじゃん、せっかくの晴れ舞台
 だろ?」

冗談じゃない。
揶揄われるってわかってて教えるつもりはなかっ
た。

「なんでもいいから、絶対に来ないでよ?」

流石にわざとらしいとは思ったが、絶対に見られ
たくないのだった。

食事中など、両親の前で何か言うのではないかと
ヒヤヒヤした。
が、郁也兄さんは何も話さなかった。

「ねぇ~、九月の第一土曜日にクラスの出し物や
 るんだ~ぜひ家族に見に来て貰いなさいって言
 うんだけど空いてるよね~?」

丁度、歩夢の文化祭の時期と被る。
これなら、見に来る心配はなさそうだった。
美咲は見に来て欲しい、そして歩夢は見に来て欲
しくない。

ある意味利害関係が一致していた。

「そういえば歩夢くんもその日文化祭でしょ?」

まさか、まどかさんから言われるとは思わなか
った。

「あ、うん。でも、僕は平気だから美咲の方を
 行ってあげなよ」

気を遣っているいいお兄ちゃんのように聞こえ
はするが、実際は見られたくないのだった。

「歩夢、俺だけ行こうか?」

「来なくていい!!美咲が郁也兄さんには来て
 欲しそうだけど?」

話を振ると、郁也へのアピールをしっかり忘れ
てはいなかったらしい。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺を助けてくれたのは、怖くて優しい変わり者

くるむ
BL
枇々木尚哉は母子家庭で育ったが、母親は男がいないと生きていけない体質で、常に誰かを連れ込んでいた。 そんな母親が借金まみれの男に溺れたせいで、尚哉はウリ専として働かされることになってしまっていたのだが……。 尚哉の家族背景は酷く、辛い日々を送っていました。ですが、昼夜問わずサングラスを外そうとしない妙な男、画家の灰咲龍(はいざきりゅう)と出会ったおかげで彼の生活は一変しちゃいます。 人に心配してもらえる幸せ、自分を思って叱ってもらえる幸せ、そして何より自分が誰かを好きだと思える幸せ。 そんな幸せがあるという事を、龍と出会って初めて尚哉は知ることになります。 ほのぼの、そしてじれったい。 そんな二人のお話です♪ ※R15指定に変更しました。指定される部分はほんの一部です。それに相応するページにはタイトルに表記します。話はちゃんとつながるようになっていますので、苦手な方、また15歳未満の方は回避してください。

何故か正妻になった男の僕。

selen
BL
『側妻になった男の僕。』の続きです(⌒▽⌒) blさいこう✩.*˚主従らぶさいこう✩.*˚✩.*˚

【完結・BL】DT騎士団員は、騎士団長様に告白したい!【騎士団員×騎士団長】

彩華
BL
とある平和な国。「ある日」を境に、この国を守る騎士団へ入団することを夢見ていたトーマは、無事にその夢を叶えた。それもこれも、あの日の初恋。騎士団長・アランに一目惚れしたため。年若いトーマの恋心は、日々募っていくばかり。自身の気持ちを、アランに伝えるべきか? そんな悶々とする騎士団員の話。 「好きだって言えるなら、言いたい。いや、でもやっぱ、言わなくても良いな……。ああ゛―!でも、アラン様が好きだって言いてぇよー!!」

光る穴に落ちたら、そこは異世界でした。

みぃ
BL
自宅マンションへ帰る途中の道に淡い光を見つけ、なに? と確かめるために近づいてみると気付けば落ちていて、ぽん、と異世界に放り出された大学生が、年下の騎士に拾われる話。 生活脳力のある主人公が、生活能力のない年下騎士の抜けてるとこや、美しく格好いいのにかわいいってなんだ!? とギャップにもだえながら、ゆるく仲良く暮らしていきます。 何もかも、ふわふわゆるゆる。ですが、描写はなくても主人公は受け、騎士は攻めです。

転生して勇者を倒すために育てられた俺が、いつの間にか勇者の恋人になっている話

ぶんぐ
BL
俺は、平凡なサラリーマンだったはずだ…しかしある日突然、自分が前世プレイしていたゲームの世界の悪役に転生していることに気が付いた! 勇者を裏切り倒される悪役のカイ…俺は、そんな最期は嫌だった。 俺はシナリオを変えるべく、勇者を助けることを決意するが──勇者のアランがなぜか俺に話しかけてくるんだが…… 溺愛美形勇者×ツンデレ裏切り者剣士(元平凡リーマン) ※現時点でR-18シーンの予定はありませんが、今後追加する可能性があります。 ※拙い文章ですが、お付き合い頂ければ幸いです。

巨人族の1/3の花嫁〜王様を一妃様と二妃様と転生小人族の僕の三妃で幸せにします〜〈完結〉

クリム
BL
一回めは処刑された老臣、二回めは鬼教官、三回めは教師、そして四回めの転生は異世界で小人族ですか。身長一メート僕タークは、御信託で巨人族にお嫁入りです。王様はどう見ても三メートルはあります。妖精族のソニン様、獣人族のロキと一緒に王様になりたてのガリウス様を幸せにします。まず、王様のイチモツ、入りますかね? 三人分の前世の記憶と、豆知識、そして貪欲な知識欲を満たすため、異世界王宮改革をしていく三妃タークの物語。 ※はご高覧注意です。 『小説家になろう』にも同時連載。

平凡な男子高校生が、素敵な、ある意味必然的な運命をつかむお話。

しゅ
BL
平凡な男子高校生が、非凡な男子高校生にベタベタで甘々に可愛がられて、ただただ幸せになる話です。 基本主人公目線で進行しますが、1部友人達の目線になることがあります。 一部ファンタジー。基本ありきたりな話です。 それでも宜しければどうぞ。

好きなあいつの嫉妬がすごい

カムカム
BL
新しいクラスで新しい友達ができることを楽しみにしていたが、特に気になる存在がいた。それは幼馴染のランだった。 ランはいつもクールで落ち着いていて、どこか遠くを見ているような眼差しが印象的だった。レンとは対照的に、内向的で多くの人と打ち解けることが少なかった。しかし、レンだけは違った。ランはレンに対してだけ心を開き、笑顔を見せることが多かった。 教室に入ると、運命的にレンとランは隣同士の席になった。レンは心の中でガッツポーズをしながら、ランに話しかけた。 「ラン、おはよう!今年も一緒のクラスだね。」 ランは少し驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返した。「おはよう、レン。そうだね、今年もよろしく。」

処理中です...