上 下
25 / 75

25話 郁也のセフレ

しおりを挟む
郁也に触れられた肩が今も熱い。

どうしてなのかは分からない。部屋の温度を少し下げた
けど、全く変わらなかった。

真横から息がかかると余計に緊張する。

「ん?どこが分からないんだ?」
『手が止まったなぁ~、何かに躓いたのか?』

「あ……別に大丈夫……」

「勉強中によそごとを考えるなよ?」
『こんなに間近で見れるのも新鮮だな~』 

「はい」

「よし、続きと行こうか」
『可愛いなぁ~横から見ると腰も細いし…抱き寄せたら
 簡単に押し倒せそうだな~、いっそその唇を吸って、
 言葉を無くさせてるうちに脱がせたら……いやいや、
 歩夢は弟だ……だがな~』

迷っている事が気になって勉強どころではない。

「あのさ……ここでの勉強やめて、家に帰る事にするよ」

「そうか?なら、送るよ、一緒に帰るか」

「……」

もう、それで妥協するしかなさそうだった。
家ならここまで近くはないはずだった。

図書館を出ると、数人の女性とすれ違った。

「あ、山尾くんじゃ~ん。こんな所で何してるの?」
『あ、郁也くん、こんな所で会うなんてラッキー』 

「あぁ、ちょっと勉強見てたんだ」
『そういえば、こいつもここよく使ったっけ…面倒だな』

「へ~、なら終わったのよね?これからどう?」
『何この子?まぁいいわ。夜は楽しめそうだわ』

「いや、この子を送ってくからまた今度」

「えぇー。私達とじゃ不満なの~?」
『3P好きだったじゃない?そんなどこにでもいそうなモ
 ブ顔どうでもよさそうね』

言いたい放題の声に、聞いているだけでストレスになる。

「はははっ、悪いね。」
『面倒な奴』

「郁也兄さん、この人達は誰?」

「あぁ、大学の知り合いつーか……ただのセフレ?」

「お兄ちゃ………ん!!」
『嘘でしょ!全然顔違うじゃん』

さっきまで誘っていた女性達が予想通りの反応を見せる。

こんなモブ顔ですからね。
それほど、顔が良いとは思わないけど、それほど悪くも
ないはずだ。

それを好き放題言われたんだ、黙っているのも癪だった。

「セフレ?この前はすっごく綺麗なお姉さんと一緒だっ
 たのに…最近は見た目で選ばないようにしたの?」

「ブッ!!」

いきなりの歩夢の言葉に郁也が噴き出していた。
さっきの女性達も顔を真っ赤にして去っていった。

「歩夢、お前凄い事言うな~…か弱い子を助けるくせに、
 ああ言う奴らにはしっかり反撃できるんだな?やっぱり
 歩夢は面白いわ。俺が好きになっただけはあるな」

「あっそ……」

スタスタと前を歩く歩夢を見てハッと気づく。

今、郁也は声に出して話していたのだ。
それも弟の歩夢の前で直接好きだと言ったのだ。

気がついてしまうとこれほど恥ずかしいことはない。

だが、当の歩夢は恥ずかしげもなく、平然を装っている。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

灰色の天使は翼を隠す

めっちゃ抹茶
BL
ヒトの体に翼を持つ有翼種と翼を持たない人間、獣性を持つ獣人と竜に変化できる竜人が共存する世界。 己の半身であるただ一人の番を探すことが当たり前の場所で、ラウルは森の奥に一人で住んでいる。変わらない日常を送りながら、本来の寿命に満たずに緩やかに衰弱して死へと向かうのだと思っていた。 そんなある日、怪我を負った大きな耳と尻尾を持つ獣人に出会う。 彼に出会ったことでラウルの日常に少しずつ変化が訪れる。 ファンタジーな世界観でお送りします。ふんわり設定。登場人物少ないのでサクッと読めます。視点の切り替わりにご注意ください。 本編全6話で完結。予約投稿済みです。毎日1話ずつ公開します。 気が向けば番外編としてその後の二人の話書きます。

エスポワールで会いましょう

茉莉花 香乃
BL
迷子癖がある主人公が、入学式の日に早速迷子になってしまった。それを助けてくれたのは背が高いイケメンさんだった。一目惚れしてしまったけれど、噂ではその人には好きな人がいるらしい。 じれじれ ハッピーエンド 1ページの文字数少ないです 初投稿作品になります 2015年に他サイトにて公開しています

職業寵妃の薬膳茶

なか
BL
大国のむちゃぶりは小国には断れない。 俺は帝国に求められ、人質として輿入れすることになる。

当たって砕けていたら彼氏ができました

ちとせあき
BL
毎月24日は覚悟の日だ。 学校で少し浮いてる三倉莉緒は王子様のような同級生、寺田紘に恋をしている。 教室で意図せず公開告白をしてしまって以来、欠かさずしている月に1度の告白だが、19回目の告白でやっと心が砕けた。 諦めようとする莉緒に突っかかってくるのはあれ程告白を拒否してきた紘で…。 寺田絋 自分と同じくらいモテる莉緒がムカついたのでちょっかいをかけたら好かれた残念男子 × 三倉莉緒 クールイケメン男子と思われているただの陰キャ そういうシーンはありませんが一応R15にしておきました。 お気に入り登録ありがとうございます。なんだか嬉しいので載せるか迷った紘視点を追加で投稿します。ただ紘は残念な子過ぎるので莉緒視点と印象が変わると思います。ご注意ください。 お気に入り登録100ありがとうございます。お付き合いに浮かれている二人の小話投稿しました。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

友達が僕の股間を枕にしてくるので困る

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
僕の股間枕、キンタマクラ。なんか人をダメにする枕で気持ちいいらしい。

【完結】魔法薬師の恋の行方

つくも茄子
BL
魔法薬研究所で働くノアは、ある日、恋人の父親である侯爵に呼び出された。何故か若い美人の女性も同席していた。「彼女は息子の子供を妊娠している。息子とは別れてくれ」という寝耳に水の展開に驚く。というより、何故そんな重要な話を親と浮気相手にされるのか?胎ました本人は何処だ?!この事にノアの家族も職場の同僚も大激怒。数日後に現れた恋人のライアンは「あの女とは結婚しない」と言うではないか。どうせ、男の自分には彼と家族になどなれない。ネガティブ思考に陥ったノアが自分の殻に閉じこもっている間に世間を巻き込んだ泥沼のスキャンダルが展開されていく。

こっそりバウムクーヘンエンド小説を投稿したら相手に見つかって押し倒されてた件

神崎 ルナ
BL
バウムクーヘンエンド――片想いの相手の結婚式に招待されて引き出物のバウムクーヘンを手に失恋に浸るという、所謂アンハッピーエンド。 僕の幼なじみは天然が入ったぽんやりしたタイプでずっと目が離せなかった。 だけどその笑顔を見ていると自然と僕も口角が上がり。 子供の頃に勢いに任せて『光くん、好きっ!!』と言ってしまったのは黒歴史だが、そのすぐ後に白詰草の指輪を持って来て『うん、およめさんになってね』と来たのは反則だろう。   ぽやぽやした光のことだから、きっとよく意味が分かってなかったに違いない。 指輪も、僕の左手の中指に収めていたし。 あれから10年近く。 ずっと仲が良い幼なじみの範疇に留まる僕たちの関係は決して崩してはならない。 だけど想いを隠すのは苦しくて――。 こっそりとある小説サイトに想いを吐露してそれで何とか未練を断ち切ろうと思った。 なのにどうして――。 『ねぇ、この小説って海斗が書いたんだよね?』 えっ!?どうしてバレたっ!?というより何故この僕が押し倒されてるんだっ!?(※注 サブ垢にて公開済みの『バウムクーヘンエンド』をご覧になるとより一層楽しめるかもしれません)

処理中です...