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2話 痴漢と女子高生
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洗濯物を干すと、そろそろ時間も迫って来ていた。
妹の美咲は食事を食べて流し台に置くと鞄と弁当を持って
元気よく出て行く。
2階から限界を開ける音がしてバタンッと閉まる。
歩夢もそろそろ受験生だった。
のんびりなどしていられない。
「おっと、その前に……行って来ます」
仏陀に手を合わせると制服に着替えて家を出る。
電車にかけ乗ると、セーフとばかり胸を撫で下ろす。
「おーい、水城~、今日もギリギリだったな~」
「仕方ないだろ?色々とやる事があるんだよ」
「そうそう、今日小テストあるの覚えてるか?」
「あぁ、昨日言ってたしな、昨日までの範囲で出題するっ
て言ってた奴だろ?」
「くぅ~、水城はいいよな~、勉強できてさ~」
別に初めからできるわけではない。
家庭教師や塾に行く時間もないので自分でなんでもやるし
かないのだ。
こんな環境じゃなかったら……きっと。
そう考えるが、すぐに自分の考えをかき消した。
「綾野、勉強は日頃からやってれば慌てないだろ?」
「うーーーー!」
『勘でいいから範囲絞れねーかな~』
「………範囲なら大体絞れると思うから今からでも暗記す
ればいいんじゃないか?」
「おぉーー。マジか!さすが親友だ!」
『おぉーー。マジか!心の友よ!親友よ!』
清々しいほど心の声が漏れている男だった。
電車中はいろんな場所から声が聞こえてくる。
もちろんおしゃべりなどもあるが、本音と建前がはっき
り聞こえるので、昔は苦痛でしかなかった。
それでも長くこの声を聞くうちに、あまり気にしなくな
った。
『そういえばあそこの人かっこいいな~』
『腹減ったな~、朝抜くんじゃなかったな~』
『今日こそは先輩に告白するんだからっ!』
それぞれに朝はまだどんな事でも意気込みが感じられた。
帰りなどは疲れ切った声が多く、ネガティブな声が多いか
らだった。
「おい、水城~降りるぞ?」
「あぁ、忘れるところだった、ありがとう」
「何かあったのか?勉強のし過ぎか?」
「あはははっ……ちょっと心配があって、気にしないでい
いよ」
「何か悩みはあるなら聞くぞ?」
「うん、平気だから……ほら、降りるんでしょ?」
『助けて……どうしよう……怖い……』
歩夢が降りよとした瞬間、微かな声が届いた。
声にならない、心に悲鳴。
電車の中を見て回る。
もうすぐ駅に着く。
このまま降りていいのだろうか?
いや、この耳に届く声を放置ができない。
「綾野っ!待って……」
「どうした?」
「先に行ってて……ごめん用事思い出したかも…」
「はぁ?おい、ちょっ……水城っ!」
降りたがすぐに一番混んでいる車両へと入って行く。
さっきの声の主はどこにいるのだろう。
今にも消え入りそうな声だった。
そして奥に追いやられるように壁際に居た女子高生を見つ
けたのだった。
見えないように男の陰に隠されるようにいる彼女からの声
に間違いなかった。
「すいませーん。ちょっとどいてもらっていいですか?」
「んあ?お前誰だ?」
「そこの子の連れだけど?」
「はぁ?おいっ!」
そう言って彼女の手を握るとすぐに閉まりかけたドアに向
かう。
運悪く、ちょうどドアが閉まってしまった。
「あっ…」
「おいおい、勝手に彼女連れてってんじゃねーよ?お前誰
だよ?」
いきなりそんな事を言って来ても誰が信じれるか!
電車内ではどっちが嘘なんかわかりやしない。
「あっ……あのっ……」
『助けて……いや、こんな人知らない……お願い……たすっ」
「大丈夫、絶対に君を見捨てないから……」
「……」
「おい、何言ってんだ?俺の女を勝手に触るんじゃねーよ!」
『このガキは何邪魔してんだよ…正義の味方のつもりかよ?
どーせそいつは何も言えないだろ?さっきも声すら出せな
かったからな』
この男は分かって気の弱そうな彼女を選んだらしかった。
妹の美咲は食事を食べて流し台に置くと鞄と弁当を持って
元気よく出て行く。
2階から限界を開ける音がしてバタンッと閉まる。
歩夢もそろそろ受験生だった。
のんびりなどしていられない。
「おっと、その前に……行って来ます」
仏陀に手を合わせると制服に着替えて家を出る。
電車にかけ乗ると、セーフとばかり胸を撫で下ろす。
「おーい、水城~、今日もギリギリだったな~」
「仕方ないだろ?色々とやる事があるんだよ」
「そうそう、今日小テストあるの覚えてるか?」
「あぁ、昨日言ってたしな、昨日までの範囲で出題するっ
て言ってた奴だろ?」
「くぅ~、水城はいいよな~、勉強できてさ~」
別に初めからできるわけではない。
家庭教師や塾に行く時間もないので自分でなんでもやるし
かないのだ。
こんな環境じゃなかったら……きっと。
そう考えるが、すぐに自分の考えをかき消した。
「綾野、勉強は日頃からやってれば慌てないだろ?」
「うーーーー!」
『勘でいいから範囲絞れねーかな~』
「………範囲なら大体絞れると思うから今からでも暗記す
ればいいんじゃないか?」
「おぉーー。マジか!さすが親友だ!」
『おぉーー。マジか!心の友よ!親友よ!』
清々しいほど心の声が漏れている男だった。
電車中はいろんな場所から声が聞こえてくる。
もちろんおしゃべりなどもあるが、本音と建前がはっき
り聞こえるので、昔は苦痛でしかなかった。
それでも長くこの声を聞くうちに、あまり気にしなくな
った。
『そういえばあそこの人かっこいいな~』
『腹減ったな~、朝抜くんじゃなかったな~』
『今日こそは先輩に告白するんだからっ!』
それぞれに朝はまだどんな事でも意気込みが感じられた。
帰りなどは疲れ切った声が多く、ネガティブな声が多いか
らだった。
「おい、水城~降りるぞ?」
「あぁ、忘れるところだった、ありがとう」
「何かあったのか?勉強のし過ぎか?」
「あはははっ……ちょっと心配があって、気にしないでい
いよ」
「何か悩みはあるなら聞くぞ?」
「うん、平気だから……ほら、降りるんでしょ?」
『助けて……どうしよう……怖い……』
歩夢が降りよとした瞬間、微かな声が届いた。
声にならない、心に悲鳴。
電車の中を見て回る。
もうすぐ駅に着く。
このまま降りていいのだろうか?
いや、この耳に届く声を放置ができない。
「綾野っ!待って……」
「どうした?」
「先に行ってて……ごめん用事思い出したかも…」
「はぁ?おい、ちょっ……水城っ!」
降りたがすぐに一番混んでいる車両へと入って行く。
さっきの声の主はどこにいるのだろう。
今にも消え入りそうな声だった。
そして奥に追いやられるように壁際に居た女子高生を見つ
けたのだった。
見えないように男の陰に隠されるようにいる彼女からの声
に間違いなかった。
「すいませーん。ちょっとどいてもらっていいですか?」
「んあ?お前誰だ?」
「そこの子の連れだけど?」
「はぁ?おいっ!」
そう言って彼女の手を握るとすぐに閉まりかけたドアに向
かう。
運悪く、ちょうどドアが閉まってしまった。
「あっ…」
「おいおい、勝手に彼女連れてってんじゃねーよ?お前誰
だよ?」
いきなりそんな事を言って来ても誰が信じれるか!
電車内ではどっちが嘘なんかわかりやしない。
「あっ……あのっ……」
『助けて……いや、こんな人知らない……お願い……たすっ」
「大丈夫、絶対に君を見捨てないから……」
「……」
「おい、何言ってんだ?俺の女を勝手に触るんじゃねーよ!」
『このガキは何邪魔してんだよ…正義の味方のつもりかよ?
どーせそいつは何も言えないだろ?さっきも声すら出せな
かったからな』
この男は分かって気の弱そうな彼女を選んだらしかった。
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