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27話
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影はいつも霧島の側にいた。
霧島が話しかけると、影も同じように話しかけてくる。
同じ顔で、同じような仕草で。
でも、話す事は多少違う。
まるで別人のような、違う考え方をしていた。
上田はそれが、霧島の影だとずっと思ってきた。
記憶が鮮明に戻ってきたから思い出すのは、昔の霧島と
影との時間だった。
「あれ……影ってまさか本当に別人なんじゃ……でも、
あんなにそっくりって……」
『そう言えば奥様は双子を孕っていたんですって……で
もね~、片方はほら……まぁ、ご無理をなさったみた
いよ?』
『あぁ、知ってるわ。片方は死産で産まれたんですって
…それでも今の坊ちゃんよりは、もう一人が生きてい
た方がよかった気もしますが……』
使用人の言葉が引っかかっる。
双子の片割れ。
そう、霧島は双子だったのだ。
もう一人がそっくりでもおかしくはない。
では、影はドッペルゲンガーではなく……死産で産まれ
たもう一人という事になる。
それなら、尚のことわからない事だらけだった。
自分の兄弟を守る理由がわからなかった。
実の兄に殺されそうになった時、どうして見えたのか?
たまに彼に身体に入って警告してくる理由も不明だっ
たのだ。
「やっぱり本人に直接聞くしかないかぁ~~~」
上田の悩みはまだ、続きそうだった。
霧島が退院してからというもの、秘書の言いなりになって
会社経営に関するノウハウを叩き込まれていた。
これでは遊ぶ時間もないし、学校での勉強も完全におざな
りになってしまっていた。
今大事なのは、経営に関する事。
そう教え込まれていた。
「あの……もう少し時間を遅らせて貰えませんか?」
「これでも時間が足りないくらいなので、無理です」
「ですが……学校の行事で明日から遅くなりそうなんです」
「それは学校の事情でしょ?あなたは霧島家を継いだのです、
そんな小さな事などにかまっている時間はないんですよ」
「あ……はい……」
学校では文化祭の準備で遅くなる日が多くなる。
それさえも、関われないとなると、どうやってクラスメイト
にいえばいいのだろう。
雅人は自分じゃどうしようもない事に悩まされていた。
いっそ、上田に相談しようか?
「いや…これ以上迷惑は……かけちゃいけないよな……」
その様子を眺めていたモノがいた。
父親の死から数ヶ月。
もう、忘れかけていた頃、突然の秘書の事故に見舞われた
のだった。
霧島を送った帰り道で突然交差点に突っ込んで行ったとい
う。
ドライブレコーダーには慌てる姿と、ブレーキを必死に踏
む姿が映っていたという。
が、結局必死に踏んでいたのはアクセルだったのだと分か
った。
不思議な事が立て続けに起きて、会社の株もだいぶんと下
がってしまった。
「霧島っ……ちょっと話があるんだ」
「上田……いいよ、暫くは時間も持てそうだし…」
「それなんだけど、秘書の人が死んだ日、なにしてた?」
「それって僕を疑ってるの?」
「違う……そうじゃないけど……あの日体調悪くならなかっ
たかなって」
確かに、あの日非常に眠かった気がする。
夜はしっかり寝ているのに、身体が疲れていた気がする。
「でも……ただ疲れていただけって事もあるし……」
「霧島…よく聞いてくれ……君には双子の……」
『黙れ』
一瞬、上田の言葉が止まった。
その理由を雅人は知らない。
上田にだけ聞こえる声。
これは低く、低音で頭の中に直に聞こえてきたのだった。
霧島が話しかけると、影も同じように話しかけてくる。
同じ顔で、同じような仕草で。
でも、話す事は多少違う。
まるで別人のような、違う考え方をしていた。
上田はそれが、霧島の影だとずっと思ってきた。
記憶が鮮明に戻ってきたから思い出すのは、昔の霧島と
影との時間だった。
「あれ……影ってまさか本当に別人なんじゃ……でも、
あんなにそっくりって……」
『そう言えば奥様は双子を孕っていたんですって……で
もね~、片方はほら……まぁ、ご無理をなさったみた
いよ?』
『あぁ、知ってるわ。片方は死産で産まれたんですって
…それでも今の坊ちゃんよりは、もう一人が生きてい
た方がよかった気もしますが……』
使用人の言葉が引っかかっる。
双子の片割れ。
そう、霧島は双子だったのだ。
もう一人がそっくりでもおかしくはない。
では、影はドッペルゲンガーではなく……死産で産まれ
たもう一人という事になる。
それなら、尚のことわからない事だらけだった。
自分の兄弟を守る理由がわからなかった。
実の兄に殺されそうになった時、どうして見えたのか?
たまに彼に身体に入って警告してくる理由も不明だっ
たのだ。
「やっぱり本人に直接聞くしかないかぁ~~~」
上田の悩みはまだ、続きそうだった。
霧島が退院してからというもの、秘書の言いなりになって
会社経営に関するノウハウを叩き込まれていた。
これでは遊ぶ時間もないし、学校での勉強も完全におざな
りになってしまっていた。
今大事なのは、経営に関する事。
そう教え込まれていた。
「あの……もう少し時間を遅らせて貰えませんか?」
「これでも時間が足りないくらいなので、無理です」
「ですが……学校の行事で明日から遅くなりそうなんです」
「それは学校の事情でしょ?あなたは霧島家を継いだのです、
そんな小さな事などにかまっている時間はないんですよ」
「あ……はい……」
学校では文化祭の準備で遅くなる日が多くなる。
それさえも、関われないとなると、どうやってクラスメイト
にいえばいいのだろう。
雅人は自分じゃどうしようもない事に悩まされていた。
いっそ、上田に相談しようか?
「いや…これ以上迷惑は……かけちゃいけないよな……」
その様子を眺めていたモノがいた。
父親の死から数ヶ月。
もう、忘れかけていた頃、突然の秘書の事故に見舞われた
のだった。
霧島を送った帰り道で突然交差点に突っ込んで行ったとい
う。
ドライブレコーダーには慌てる姿と、ブレーキを必死に踏
む姿が映っていたという。
が、結局必死に踏んでいたのはアクセルだったのだと分か
った。
不思議な事が立て続けに起きて、会社の株もだいぶんと下
がってしまった。
「霧島っ……ちょっと話があるんだ」
「上田……いいよ、暫くは時間も持てそうだし…」
「それなんだけど、秘書の人が死んだ日、なにしてた?」
「それって僕を疑ってるの?」
「違う……そうじゃないけど……あの日体調悪くならなかっ
たかなって」
確かに、あの日非常に眠かった気がする。
夜はしっかり寝ているのに、身体が疲れていた気がする。
「でも……ただ疲れていただけって事もあるし……」
「霧島…よく聞いてくれ……君には双子の……」
『黙れ』
一瞬、上田の言葉が止まった。
その理由を雅人は知らない。
上田にだけ聞こえる声。
これは低く、低音で頭の中に直に聞こえてきたのだった。
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