27 / 32
27話
しおりを挟む
影はいつも霧島の側にいた。
霧島が話しかけると、影も同じように話しかけてくる。
同じ顔で、同じような仕草で。
でも、話す事は多少違う。
まるで別人のような、違う考え方をしていた。
上田はそれが、霧島の影だとずっと思ってきた。
記憶が鮮明に戻ってきたから思い出すのは、昔の霧島と
影との時間だった。
「あれ……影ってまさか本当に別人なんじゃ……でも、
あんなにそっくりって……」
『そう言えば奥様は双子を孕っていたんですって……で
もね~、片方はほら……まぁ、ご無理をなさったみた
いよ?』
『あぁ、知ってるわ。片方は死産で産まれたんですって
…それでも今の坊ちゃんよりは、もう一人が生きてい
た方がよかった気もしますが……』
使用人の言葉が引っかかっる。
双子の片割れ。
そう、霧島は双子だったのだ。
もう一人がそっくりでもおかしくはない。
では、影はドッペルゲンガーではなく……死産で産まれ
たもう一人という事になる。
それなら、尚のことわからない事だらけだった。
自分の兄弟を守る理由がわからなかった。
実の兄に殺されそうになった時、どうして見えたのか?
たまに彼に身体に入って警告してくる理由も不明だっ
たのだ。
「やっぱり本人に直接聞くしかないかぁ~~~」
上田の悩みはまだ、続きそうだった。
霧島が退院してからというもの、秘書の言いなりになって
会社経営に関するノウハウを叩き込まれていた。
これでは遊ぶ時間もないし、学校での勉強も完全におざな
りになってしまっていた。
今大事なのは、経営に関する事。
そう教え込まれていた。
「あの……もう少し時間を遅らせて貰えませんか?」
「これでも時間が足りないくらいなので、無理です」
「ですが……学校の行事で明日から遅くなりそうなんです」
「それは学校の事情でしょ?あなたは霧島家を継いだのです、
そんな小さな事などにかまっている時間はないんですよ」
「あ……はい……」
学校では文化祭の準備で遅くなる日が多くなる。
それさえも、関われないとなると、どうやってクラスメイト
にいえばいいのだろう。
雅人は自分じゃどうしようもない事に悩まされていた。
いっそ、上田に相談しようか?
「いや…これ以上迷惑は……かけちゃいけないよな……」
その様子を眺めていたモノがいた。
父親の死から数ヶ月。
もう、忘れかけていた頃、突然の秘書の事故に見舞われた
のだった。
霧島を送った帰り道で突然交差点に突っ込んで行ったとい
う。
ドライブレコーダーには慌てる姿と、ブレーキを必死に踏
む姿が映っていたという。
が、結局必死に踏んでいたのはアクセルだったのだと分か
った。
不思議な事が立て続けに起きて、会社の株もだいぶんと下
がってしまった。
「霧島っ……ちょっと話があるんだ」
「上田……いいよ、暫くは時間も持てそうだし…」
「それなんだけど、秘書の人が死んだ日、なにしてた?」
「それって僕を疑ってるの?」
「違う……そうじゃないけど……あの日体調悪くならなかっ
たかなって」
確かに、あの日非常に眠かった気がする。
夜はしっかり寝ているのに、身体が疲れていた気がする。
「でも……ただ疲れていただけって事もあるし……」
「霧島…よく聞いてくれ……君には双子の……」
『黙れ』
一瞬、上田の言葉が止まった。
その理由を雅人は知らない。
上田にだけ聞こえる声。
これは低く、低音で頭の中に直に聞こえてきたのだった。
霧島が話しかけると、影も同じように話しかけてくる。
同じ顔で、同じような仕草で。
でも、話す事は多少違う。
まるで別人のような、違う考え方をしていた。
上田はそれが、霧島の影だとずっと思ってきた。
記憶が鮮明に戻ってきたから思い出すのは、昔の霧島と
影との時間だった。
「あれ……影ってまさか本当に別人なんじゃ……でも、
あんなにそっくりって……」
『そう言えば奥様は双子を孕っていたんですって……で
もね~、片方はほら……まぁ、ご無理をなさったみた
いよ?』
『あぁ、知ってるわ。片方は死産で産まれたんですって
…それでも今の坊ちゃんよりは、もう一人が生きてい
た方がよかった気もしますが……』
使用人の言葉が引っかかっる。
双子の片割れ。
そう、霧島は双子だったのだ。
もう一人がそっくりでもおかしくはない。
では、影はドッペルゲンガーではなく……死産で産まれ
たもう一人という事になる。
それなら、尚のことわからない事だらけだった。
自分の兄弟を守る理由がわからなかった。
実の兄に殺されそうになった時、どうして見えたのか?
たまに彼に身体に入って警告してくる理由も不明だっ
たのだ。
「やっぱり本人に直接聞くしかないかぁ~~~」
上田の悩みはまだ、続きそうだった。
霧島が退院してからというもの、秘書の言いなりになって
会社経営に関するノウハウを叩き込まれていた。
これでは遊ぶ時間もないし、学校での勉強も完全におざな
りになってしまっていた。
今大事なのは、経営に関する事。
そう教え込まれていた。
「あの……もう少し時間を遅らせて貰えませんか?」
「これでも時間が足りないくらいなので、無理です」
「ですが……学校の行事で明日から遅くなりそうなんです」
「それは学校の事情でしょ?あなたは霧島家を継いだのです、
そんな小さな事などにかまっている時間はないんですよ」
「あ……はい……」
学校では文化祭の準備で遅くなる日が多くなる。
それさえも、関われないとなると、どうやってクラスメイト
にいえばいいのだろう。
雅人は自分じゃどうしようもない事に悩まされていた。
いっそ、上田に相談しようか?
「いや…これ以上迷惑は……かけちゃいけないよな……」
その様子を眺めていたモノがいた。
父親の死から数ヶ月。
もう、忘れかけていた頃、突然の秘書の事故に見舞われた
のだった。
霧島を送った帰り道で突然交差点に突っ込んで行ったとい
う。
ドライブレコーダーには慌てる姿と、ブレーキを必死に踏
む姿が映っていたという。
が、結局必死に踏んでいたのはアクセルだったのだと分か
った。
不思議な事が立て続けに起きて、会社の株もだいぶんと下
がってしまった。
「霧島っ……ちょっと話があるんだ」
「上田……いいよ、暫くは時間も持てそうだし…」
「それなんだけど、秘書の人が死んだ日、なにしてた?」
「それって僕を疑ってるの?」
「違う……そうじゃないけど……あの日体調悪くならなかっ
たかなって」
確かに、あの日非常に眠かった気がする。
夜はしっかり寝ているのに、身体が疲れていた気がする。
「でも……ただ疲れていただけって事もあるし……」
「霧島…よく聞いてくれ……君には双子の……」
『黙れ』
一瞬、上田の言葉が止まった。
その理由を雅人は知らない。
上田にだけ聞こえる声。
これは低く、低音で頭の中に直に聞こえてきたのだった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
FLY ME TO THE MOON
如月 睦月
ホラー
いつもの日常は突然のゾンビ大量発生で壊された!ゾンビオタクの格闘系自称最強女子高生が、生き残りをかけて全力疾走!おかしくも壮絶なサバイバル物語!
虫喰いの愛
ちづ
ホラー
邪気を食べる祟り神と、式神の器にされた娘の話。
ダーク和風ファンタジー異類婚姻譚です。
三万字程度の短編伝奇ホラーなのでよろしければお付き合いください。
テーマは蛆虫とメンヘラ(?)
蛆虫などの虫の表現、若干の残酷描写がありますので、苦手な方はご注意ください。
『まぼろしの恋』終章で登場する蝕神さまの話です。『まぼろしの恋』を読まなくても全然問題ないです。
また、pixivスキイチ企画『神々の伴侶』https://dic.pixiv.net/a/%E7%A5%9E%E3%80%85%E3%81%AE%E4%BC%B4%E4%BE%B6(募集終了済み)の十月の神様の設定を使わせて頂いております。
表紙はかんたん表紙メーカーさんより使わせて頂いております。
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
何度も母を殺す夢
真ん中のペダル
ホラー
冴えない高校生が大嫌いな母を何度も殺す夢のお話。毎回必ず母は死にますし、周りも巻き込まれたりするかもしれません。
少しばかり激しい表現があります。
カテゴリーなんなんだろうか……。
叫ぶ家と憂鬱な殺人鬼(旧Ver
Tempp
ホラー
大学1年の春休み、公理智樹から『呪いの家に付き合ってほしい』というLIMEを受け取る。公理智樹は強引だ。下手に断ると無理やり呪いの家に放りこまれるかもしれない。それを避ける妥協策として、家の前まで見に行くという約束をした。それが運の悪い俺の運の尽き。
案の定俺は家に呪われ、家にかけられた呪いを解かなければならなくなる。
●概要●
これは呪いの家から脱出するために、都合4つの事件の過去を渡るホラーミステリーです。認識差異をベースにした構成なので多分に概念的なものを含みます。
文意不明のところがあれば修正しますので、ぜひ教えてください。
●改稿中
見出しにサブ見出しがついたものは公開後に改稿をしたものです。
2日で1〜3話程度更新。
もともと32万字完結を22万字くらいに減らしたい予定。
R15はGの方です。人が死ぬので。エロ要素は基本的にありません。
定期的にホラーカテゴリとミステリカテゴリを行ったり来たりしてみようかと思ったけど、エントリの時点で固定されたみたい。
岬ノ村の因習
めにははを
ホラー
某県某所。
山々に囲われた陸の孤島『岬ノ村』では、五年に一度の豊穣の儀が行われようとしていた。
村人達は全国各地から生贄を集めて『みさかえ様』に捧げる。
それは終わらない惨劇の始まりとなった。
冀望島
クランキー
ホラー
この世の楽園とされるものの、良い噂と悪い噂が混在する正体不明の島「冀望島(きぼうじま)」。
そんな奇異な存在に興味を持った新人記者が、冀望島の正体を探るために潜入取材を試みるが・・・。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる