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26話
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どうしてだろう。
すごく不安になる。
上田のことを思い出しかけるといつも、頭痛が酷く
なった。
彼は必死に何かを思い出して欲しそうだった。
いつも一人ぼっちの自分に何度もで話しかけてくれ
た。
クラスでも、災いを招くと誰も近寄らないのに……。
彼だけは違った。
そして、昔も……。
いつも一人でいる自分を連れ出してくれた。
意地悪する兄から逃げるように庭の隅で泣いていると、
毎回彼は見つけてくれた。
いつだって側にいて、励ましてくれた。
一人になりたくない夜も、一緒のベッドに寝てくれて…。
ずっと……一緒に……居て………。
それで………血まみれになった彼が………。
自分に手を差し伸べる彼の手が真っ赤に染まっていく。
ハッとして目を覚ますと、横で眠るようにうとうとした
彼が座っていたのだった。
「上田…………」
「あぁ、起きた?気分はどう?どこか痛くない?」
「あ……うん……平気……」
「そう、ならよかった」
雅人は手を伸ばすと上田を掴む。
どうしてだか自分でもわからない。
ただ、そうしなければならない気がしたからだった。
「どうした?霧島……どこか痛いのか?」
心配されるのは分かっていた。
でも、自分でもわからなかった。
「わからないけど……昔そうしたかった気がして……」
「そっか、ゆっくりでもいい。思い出して行こう」
「うん……」
一般的にドッペルゲンガーと言われるモノがある。
それは本人に非常にそっくりで、本人が見てしまうと、
死をもたらすと言われていた。
「あの影はもしかしたら……でも、そうしたらおかしい
よな~」
上田はまだ悩んでいた。
影が殺すのは霧島雅人ではなく、彼に危害を加え良いと
した人なのだ。
そして彼と目が合ったのは、兄の永人が死んだその時だ
けだった。
霧島はその時の記憶を失った。
そこにはどんな因果関係があるのだろう。
いつも真っ直ぐで真面目な霧島を人から遠ざけてまで、
何を考えているのだろう。
母親はそんな彼を見ていつも怯えていた。
霧島には昔は優しかったという。
が、信じられなかった。
屋敷に来てからは、殺意の籠った目で、いつも睨んで
いた所しか見た事がなかった。
いつかは、手を出すのではないかと思っていた。
そして、その時が来た時は、この人を守ろう。そう子
供ながらに思っていた。
いつも泣きながら一人でいる、彼を支えてやりたかっ
た。
そして、もう一人の彼の影も。
誰にも見えず。
ただ存在しているだけの存在。
それを認知出来るのは上田だけだったから……。
霧島も知らない、もう一人の霧島雅人。
上田はずっとそう思ってきたのだった。
すごく不安になる。
上田のことを思い出しかけるといつも、頭痛が酷く
なった。
彼は必死に何かを思い出して欲しそうだった。
いつも一人ぼっちの自分に何度もで話しかけてくれ
た。
クラスでも、災いを招くと誰も近寄らないのに……。
彼だけは違った。
そして、昔も……。
いつも一人でいる自分を連れ出してくれた。
意地悪する兄から逃げるように庭の隅で泣いていると、
毎回彼は見つけてくれた。
いつだって側にいて、励ましてくれた。
一人になりたくない夜も、一緒のベッドに寝てくれて…。
ずっと……一緒に……居て………。
それで………血まみれになった彼が………。
自分に手を差し伸べる彼の手が真っ赤に染まっていく。
ハッとして目を覚ますと、横で眠るようにうとうとした
彼が座っていたのだった。
「上田…………」
「あぁ、起きた?気分はどう?どこか痛くない?」
「あ……うん……平気……」
「そう、ならよかった」
雅人は手を伸ばすと上田を掴む。
どうしてだか自分でもわからない。
ただ、そうしなければならない気がしたからだった。
「どうした?霧島……どこか痛いのか?」
心配されるのは分かっていた。
でも、自分でもわからなかった。
「わからないけど……昔そうしたかった気がして……」
「そっか、ゆっくりでもいい。思い出して行こう」
「うん……」
一般的にドッペルゲンガーと言われるモノがある。
それは本人に非常にそっくりで、本人が見てしまうと、
死をもたらすと言われていた。
「あの影はもしかしたら……でも、そうしたらおかしい
よな~」
上田はまだ悩んでいた。
影が殺すのは霧島雅人ではなく、彼に危害を加え良いと
した人なのだ。
そして彼と目が合ったのは、兄の永人が死んだその時だ
けだった。
霧島はその時の記憶を失った。
そこにはどんな因果関係があるのだろう。
いつも真っ直ぐで真面目な霧島を人から遠ざけてまで、
何を考えているのだろう。
母親はそんな彼を見ていつも怯えていた。
霧島には昔は優しかったという。
が、信じられなかった。
屋敷に来てからは、殺意の籠った目で、いつも睨んで
いた所しか見た事がなかった。
いつかは、手を出すのではないかと思っていた。
そして、その時が来た時は、この人を守ろう。そう子
供ながらに思っていた。
いつも泣きながら一人でいる、彼を支えてやりたかっ
た。
そして、もう一人の彼の影も。
誰にも見えず。
ただ存在しているだけの存在。
それを認知出来るのは上田だけだったから……。
霧島も知らない、もう一人の霧島雅人。
上田はずっとそう思ってきたのだった。
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