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7話
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雅人は咄嗟に逃げ出していた。
多分上田の側にいてはいけない。
本能的にそう感じてしまっていた。
優しい奴だ。
雅人と気が合って、話しやすく。
そして、何より自分を避けないようなそんな奴なのだ。
失いたくない。
もう、大事な人を亡くしたくなかった。
息が切れるくらいに走ると、やっと足を止めた。
上田の背中には大きな傷があった。
あれは普通の怪我なんかじゃない。
命に関わるほどの大怪我だったに違いない。
そんな彼を危険になんて晒せない。
「おい、待てって…」
後ろから聞こえる声に振り返ると、目の前には追いかけてきた
上田の姿があった。
「なんで……」
「なんでじゃねーよ、なんで逃げるんだよ。まったく~……!」
そう言った矢先、ヒュンっと音がして窓ガラスが落下して来たの
だった。
普通落ちてくるようなものではない。
それは上田の真上からではない。
雅人の真上にだった。
上田が咄嗟に飛びつき、もつれるように転がった。
少し擦りむいたくらいで酷い怪我はなかった。
「大丈夫か?」
「え……あ、うん」
「今、あきらかに誰かいたよな?」
上を見て言う上田に雅人は疑問に思う。
「どうして…?」
「何言ってんだよ?危なかったのは霧島の方だろ?」
確かに言われてみればそうなのだが、朧げに雅人は思ってしま
う。
きっと今回も、無事に済むのだろう……と。
それなのに、上田は必死に庇おうとしていた。
そこまで自分にする意味がわからなかった。
「おい、しっかりしろよ?危なかったんだぞ?もし直撃して
いたら……」
「うん……そうだね、ありがとう」
気もない返事に上田は少し不思議に思ったであろう。
それでも、放かってはおけなかったのだった。
わざわざ、大掛かりな事をしたのに、全くの無傷だった。
学校で窓ガラスを外し、落としてやった。
永人に言われた通りに雅人を狙った筈だった。
それなのに、いきなり横から現れた人物によって、くしくも
失敗に終わった。
「全くなんなんだよ、あいつ……」
校庭を抜けて駐車場へと向かう。
そこには通学で使っているバイクが停めてある。
今頃は、きっと大騒ぎになっている事だろう。
すぐに離れると、まずはアリバイだけ作って帰ろうと考えると
駐車場まで来たのだった。
ちょうど靴紐が解けているのに気づきしゃがみ込むと縛り直し
たのだった。
業者のトラックが学校へと入ってくる。
荷物を下ろすためにバックで駐車場へと入って来て、しゃがみ
込んだ生徒には一向に気づかぬまま一気にバックしたのだった。
バックミラーに立ち上がった生徒を見つけると、慌ててブレーキ
を踏み込んだ。
そう、ブレーキを踏み込むつもりが、アクセルを一気にふかして
いたのだった。
ドンッと大きな音がして生徒ごと壁にぶつかっていったのだった。
多分上田の側にいてはいけない。
本能的にそう感じてしまっていた。
優しい奴だ。
雅人と気が合って、話しやすく。
そして、何より自分を避けないようなそんな奴なのだ。
失いたくない。
もう、大事な人を亡くしたくなかった。
息が切れるくらいに走ると、やっと足を止めた。
上田の背中には大きな傷があった。
あれは普通の怪我なんかじゃない。
命に関わるほどの大怪我だったに違いない。
そんな彼を危険になんて晒せない。
「おい、待てって…」
後ろから聞こえる声に振り返ると、目の前には追いかけてきた
上田の姿があった。
「なんで……」
「なんでじゃねーよ、なんで逃げるんだよ。まったく~……!」
そう言った矢先、ヒュンっと音がして窓ガラスが落下して来たの
だった。
普通落ちてくるようなものではない。
それは上田の真上からではない。
雅人の真上にだった。
上田が咄嗟に飛びつき、もつれるように転がった。
少し擦りむいたくらいで酷い怪我はなかった。
「大丈夫か?」
「え……あ、うん」
「今、あきらかに誰かいたよな?」
上を見て言う上田に雅人は疑問に思う。
「どうして…?」
「何言ってんだよ?危なかったのは霧島の方だろ?」
確かに言われてみればそうなのだが、朧げに雅人は思ってしま
う。
きっと今回も、無事に済むのだろう……と。
それなのに、上田は必死に庇おうとしていた。
そこまで自分にする意味がわからなかった。
「おい、しっかりしろよ?危なかったんだぞ?もし直撃して
いたら……」
「うん……そうだね、ありがとう」
気もない返事に上田は少し不思議に思ったであろう。
それでも、放かってはおけなかったのだった。
わざわざ、大掛かりな事をしたのに、全くの無傷だった。
学校で窓ガラスを外し、落としてやった。
永人に言われた通りに雅人を狙った筈だった。
それなのに、いきなり横から現れた人物によって、くしくも
失敗に終わった。
「全くなんなんだよ、あいつ……」
校庭を抜けて駐車場へと向かう。
そこには通学で使っているバイクが停めてある。
今頃は、きっと大騒ぎになっている事だろう。
すぐに離れると、まずはアリバイだけ作って帰ろうと考えると
駐車場まで来たのだった。
ちょうど靴紐が解けているのに気づきしゃがみ込むと縛り直し
たのだった。
業者のトラックが学校へと入ってくる。
荷物を下ろすためにバックで駐車場へと入って来て、しゃがみ
込んだ生徒には一向に気づかぬまま一気にバックしたのだった。
バックミラーに立ち上がった生徒を見つけると、慌ててブレーキ
を踏み込んだ。
そう、ブレーキを踏み込むつもりが、アクセルを一気にふかして
いたのだった。
ドンッと大きな音がして生徒ごと壁にぶつかっていったのだった。
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