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闇の中

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面会室では畑中要治とその息子の畑中幸司がガラスを境に向かい合っていた。
息子の秘書の強姦事件として大きく取り上げられ議員辞職することになったのである。
「お前はどこまで私の足を引っ張れば気がすむんだ。どうしてあんなことをやったんだ!」
「んー楽しそうだったから?だって、自分だって楽しんでたじゃん!だから皆にもおっそわけ?みたいな~、それにとんだ淫乱秘書だったじゃん。男咥えながら腰振って喜んでんだぜ?傑作だろ!」
けたけたと笑う幸司に畑中要治は親子の縁を切ることを通告した。
「もう、二度と私の前に現れるな。いいな?」
「ちょっとまってよ、それは酷いんじゃない?この計画は佳代が言い出したことだし?それにレイプシーンはビデオにとって佳代の元に行ってるぜ?何でも販売用にするっていってたし、それに佳代の彼氏も混ざってたしな!」
予想外の事実に要治は頭が痛くなってきていた。
とんだ腐った子供だと、本気で思った。
そのまま家に帰宅すると佳代の部屋へと踏み込んでパソコンを秘書にいじらせると中に鍵のかかったファイルが存在し、生年月日で開くというセキュリティがおごそかな始末であった。
開くとそこに写っていたのは遼が凌辱される一部始終が写されていた。
それだけではなく、他にも同じような被害にあっている女性や綺麗な男性のもあった。
「これはっ・・・見つかれば犯罪だぞ!」
すぐに人を走らせ佳代を捕まえると部屋に監禁することになった。
畑中要治は人生の破滅だった。
なぜ気づくのが遅くなったかというと、いつもなら確認している全部屋の監視カメラをオフにして出雲構造と長話をしていたからだった。
話を終えていつものように確認していると吉野が部屋で倒れているのを発見したのである。
どこの部屋をみても遼の姿はなく息子の姿も部屋になかった。
切り替えていくといつも使っている部屋で何人かの男達に凌辱されている遼を発見したのだ。
最初は趣味に撮っておこうと思ったのだがやることがエスカレートしていっているし、体にボディーピアスも空いていた。
人数が人数なので度を過ぎるとほんとに人殺しにでもなってしまいそうだった為に否応なく警察へと連絡したのだった。
勿論警察の上層部に顔を利かせて穏便に済まそうとしたのだがそうもいっていられなくなった。
遼が意識不明で病院へと担ぎ込まれた時にマスコミにリークされていたのだ。
「不愉快だ。どうしてこうなったんだ。」
一人、部屋で机を殴り付ける。
もう、返ってこない立場を虚空に描きながら。


吉野によって緊急に運ばれてから今だ眠っている。
骨折はギブスでカチカチに固め身体中に打撲の跡や鬱血が散っていた。
誰がみても乱暴されたと分かる状態だった。
看護師は哀れんだような目で眺め、「まだ、若いのに・・・」と口走る。
彼を誰の目にも触れさせたくなくて、そして守ることすら出来ずにいる自分に腹が立った。
「すまない。まただ、僕は無力だ・・・」
毎日夜遅くに綾音は遼の病室に来ていた。
「遼の様子は?」
「いえ、全く意識が戻らず・・・体は順調に治っているのですが。」
「そう、行かせるんじゃなかった・・・説得は上手くいったわ。でも、こんなこと望んでなかった・・・」
ポツリ溢した言葉に、きっとこれが本音なのだろうと吉野は思った。
ただ、祈るしかない現実に苛立ちを募らせていったのだった。


暗闇の中をひたすらぬかるんだ地面を歩いていた。
前も見えない暗闇。
心は疲れはて休んでしまおうかと思い始める。
足を止めると次第にぬかるみは足に絡み付き沈んでいくような感覚さえする。
ーまだ、会いたいやつがいるんだ!こんなところで止まってられるかよっ!ー
また再度歩き出すとピタリと足が止まる。
ーあれ、誰に会いたいんだっけ?ー
考えても思い付かない。
ー何で前に進むんだっけ?俺はどうしてここにいるんだ・・・ー
疑問は次々に沸き起こる。
ー焦らなくても、ここで沈めば楽なんじゃ・・・ー
歩みは心の揺らぎでその場に立ち止まる。
沈み出す足元を見つめるが何も浮かんでこない。
ー俺は何がしたかったんだろう?、俺は一体誰だ?ー
暗闇に支配され何もわからなくなっていった。
次第に歩み出す事も出来ないくらい沈み込んでしまい、腰を動かすことすら出来ない。
胸の辺りまで沈み込んでいくと抗うことすら億劫になってただ、その場に身を任せていった。
『・りょ・・・・りょう・・・ぃて・・・・ぉね・・ぃ・・・めを・・まして・・』
ー誰だろう?どうでもいいか・・・だって俺は・・・ー 
一瞬だけフラッシュバックしたように光が見えた気がした。
遼の目の前に若い男の姿が現れたのだ。
ーあ、兄貴・・・あれ・・・?何で知ってるんだ・・・俺はー 
手を差し出す兄の姿に咄嗟に腕を伸ばして抗った。
肩まで浸かっていて腕を出すのさえ必死だったがそれでも掴もうと伸ばした。
もうすこしで掴めるというところで光は掻き消えてしまった。
愕然とする遼に暗闇が落ちていく。
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