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気丈な振舞い

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珍しい事に土曜の朝、綾音からデートのお誘いがあった。
「遊園地にでも行かない?子供っぽかったかしら?」
小首を傾げた綾音に遼は目を輝かせながら頷いた。
「全然。行ってみたい!遊園地なんて行ったことないから行ってみたい!」
「良かったー。実は私も初めてなの。涼風は何度も行ってるみたいだけどね?」
綾音にとっても初めての場所だった。
幼少期は貧乏で行ける訳もなく、引き取られてからは期待に答えるべく東大に行くために必死で勉強したのだ。
現在東大生になり大学で学んではいるが友達と呼べる人間は一人もいなかった。
それにはバックが余りにも大きかったせいもあった。
その為、誰かと遊びに行くということはないのである。
「行きたい所はピックアップしておいてね?」
「全部がいい。どれも乗ってみたい。コレが最後になるかも知んないなら選べねーもん。」
「・・・」
自分で言っておいて酷な選択をさせてしまっていた。
ただ、最初は心臓の提供者としか見ていなかったがだんだんとなついてくるに連れて情が沸いてきたのだ。
綾音と七海になついている彼を殺さなくてはならない。
いっそのこと自分を憎んでくれたらいいのに。
そうすれば心置きなく殺せるのに・・・。
勿論、相沢の適合者を他に探していないわけではない。
彼をいじめていた他の生徒にも検査をしてから臓器をばらして死体は海に流した。
勿論バラバラにしてミンチ状にして流してあるため足はつかない。
行方不明になっている5人も今ごろは魚の餌になっていることだろう。
福岡の妹に関しては薬ずけにしたあとお店で客を取っている。
もう、逆らう気力さえない。
昨日のうちに内田、水野、澤部にいたっては拉致させて拷問にかけている。
指の爪を剥いでいって、失神させない程度にトゲのあるムチで全身を打ち付けた。
大人だというのに泣き叫びながら命乞いをしていたっけ? 
大事そうにしていた遼のレイプビデオを流しながらその度に指を切り落としたりもした。
両方の手足の指が無くなる頃には声は枯れて掠れた悲鳴が呻き声のように漏れていた。
舌を切り取ると出血多量で死ぬ前にと病院へと運んだ。
勿論、臓器を取り出すためだった。
遼はそんな事は知らない。
知る必要もない。
車に乗ると七海が運転手として同行した。
助手席には名武修一もいる。
遊園地に着くとチケットを手渡された。
「坊ちゃん、いってらっしゃいませ。私どもはここでお待ちしております。」
「まだ、その呼び方を言うの?」
「はははっ。確かに合わねーな?」
遼は笑いながら不服そうな綾音の手を取ると駆け出した。
「行こーぜ!またなっ!」
元気に七海に手を振ると駆け出したのだった。
それにつられるように綾音も駆け出していた。
無邪気な二人の後ろ姿を眺めながら修一は溜め息を漏らす。
「はぁ、困ったもんですな!」
「そうですか?綾音様も昔に比べたらお元気そうで何よりですが?それに遼さんの明るさが必要なのですよ?」
七海は遠くに写る二人を眺めながら言った。
「七海は分かっていないな!綾音様が彼に惹かれはじめているのですよ。貴方のようにね?」
「俺は・・・そのような事は。」
「そうですか?まぁ、いいでしょう。しかし、悩みどころでしょうな!初恋の相手を助ける為には今の生活を壊す必要があるのですから。それでも相沢の心は綾音様には向いていない。生きていてもただ、生きているだけ・・・。自分を見向きもしない相手を縛りつけても良いことなど有りはしない。それは涼風様の一件で分かっただろうに・・・」
「あれは妹が殺したのでは?」
「いや、食事をずっと断っていたのだ。自分の意思で・・・ささやかな抵抗というか、自殺だよ。」
何とも言えない状況だった。
駆けつけた時には一足遅く、息を引き取った後だった。
涼風は呆然とそれを眺めながら暫く何もしようともしなかった。
それから数日後、妹の管理を徹底するように言われた。
毎日やっていたセックスも止め、ロープで縛り付けると狭い篭に閉じ込めたのだ。
口には猿轡をさせると食事以外は自由にはさせなかった。
それを見ていられなかった。
お腹には死んだ彼の子供がいるのだ。
妹に実の兄の子供を宿らせていたのだ。
その子供を取り出せばお払い箱にする予定でいるのだ。
それまでは自殺すら許されない状況にしている。
涼風にはそれでも彼の子供が欲しかったのだ。
そんなねじ曲がった愛情を受け止められる人などいない。
でも、遼なら綾音の気持ちを分かってあげられる。
相沢が決して認めなかった体の関係も、心も惹かれあっているのだ。
「いっそのこと相沢が死んでいれば良かったのだ!」
苦々しく修一は噛み締めた。
「だったら遼さんとは会って居なかったかもしれませんね?」
七海はそっと付け加えると二人を追うように監視に向かった。 
修一は車に戻ると公園内の監視カメラの映像を確認し出した。
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