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聖剣と聖女と聖木と
29話 子供の存在
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遠征軍が帰って来てから、騒がしい日々が続いて
いた。
ルイスの姿は一向に見つけられなかった。
城の中にはもう、いないのではないかとさえ噂さ
れていた。
ルイスが消えたのはジェイムスが朝早くに遠征に
行った日だった。
一緒に戦った兵士に聞いても見かけていないとい
っていた。
どうにもおかしいとしか言いようがなかった。
部屋は、ちょっと出かけたかのような、荷物も全
部残ったままで何も手をつけられてはいなかった。
あれから部屋に帰っていないのだろう。
ジェイムスを廃嫡したせいで、王位継承権を持つ
者が居なくなった事が問題だった。
先日の聖女誘拐といい、何か一大事の前触れだと
いう事くらいは誰にでも理解できた。
そして反対に隣国では、王の突然の急死。
国を動かしていた根幹にある大臣たちは次々と謎
の死を遂げたらしい。
そして、のちに立ち上がったのが、かつてルイス
と仲の良かったケント・イスラットだった。
兄王が死んで全権を握ると、民衆をまとめ上げて
立ち上がったのだった。
それはもう、英雄でも出て来たかの盛り上がりだ
ったらしい。
そう、報告がなされていた。
聖女のお披露目パレードの最中、ジェイムスは国
を出ていった。
連れて行ったのは、女一名だけだという。
「すぐにルイスを探せっ!絶対にこの国を出さ
せるな」
聖女を国外へなど行かせるわけには行かない。
ましてや、一応一国の王子という身分まである
のだ。
もう、勝手に遊ばせておく時間はない。
早く婚儀を進めなくてはならなかった。
そんななか、検問を通り過ぎると、堂々と隣国へ
と向かっていたジェイムスとルイスはそのまま旅
を楽しむようにバリウス国へと入国した。
入国の際は冒険者ギルドのカードを出して身分を
証明する事ができたので、手続きもスムーズに終
わった。
あとは………。
途中で合流したスラン一向と一緒にバリウス国に
入ったのだった。
「城の方に直接来ていただけますか?」
「構わない。ルイス俺から離れるなよ?」
「はいっ…兄さん…」
スランの妹イーナは衰弱していて、今にも消えて
しまいそうなくらいに痩せ細っていた。
医者が匙を投げたとあってか、王族の死に立ち会
いたくないと、誰もが離れて行ったらしい。
「もう、頼れる人がいないんだ。済まないが、助
けて欲しい。」
必死なスランの言葉にルイスが頷く。
ジェイムスを経由して魔力増幅の魔道具を受け取
っておいて正解だったと思った。
こんな状態では、治すのも結構な魔力を消費して
しまいそうだったからだ。
聖女の祈りをありったけ注ぎ込むと、みるみるう
ちに顔色が良くなって行く。
そして、全く目を覚まさなかったイーナの眉が僅
に震えたのだった。
ゆっくりと目を覚ますと兄のスランはすぐに妹の
手を取ったのだった。
駆けつけた王は歓喜に満ち、ジェイムスとルイス
を歓迎した。
その日は歓迎の宴を催し、冒険者ギルドでの優遇
を提案してくれたが、丁重に断った。
夜は豪華な客室に通されると、隣の部屋には浴室
も完備されていた。
「一緒に入るか?」
「ジェイムス兄さんっ……//////」
「もう、兄弟じゃないだろ?俺はルイスさえいれ
ばいいから」
「うん……」
少し煮え切らないような返事を返した。
実は世界樹の浄化から気になっている事があった。
神と名乗った人も言っていたが、ルイスの中にい
るものから魔力を貰ったと言っていた。
それは……ルイスのお腹の中に新しい命があると
いう事だった。
これをどう言っていいのか迷う。
産まれてもしばらくは魔力を持たない人として生
活する事になるだろう。
それはルイスの魔力が少なかったせいだなんて情
けなくて仕方がない。
もっと、みんなと交わっていれば魔力も増えてい
て、子供の将来も、魔法という力を奪わずに済ん
だかもしれなかった。
分かってはいるけど、ジェイムスだけに一途にな
りたかった。
そんな裕太の気持ちが、どうしてもルイスの中に
あったからだった。
いた。
ルイスの姿は一向に見つけられなかった。
城の中にはもう、いないのではないかとさえ噂さ
れていた。
ルイスが消えたのはジェイムスが朝早くに遠征に
行った日だった。
一緒に戦った兵士に聞いても見かけていないとい
っていた。
どうにもおかしいとしか言いようがなかった。
部屋は、ちょっと出かけたかのような、荷物も全
部残ったままで何も手をつけられてはいなかった。
あれから部屋に帰っていないのだろう。
ジェイムスを廃嫡したせいで、王位継承権を持つ
者が居なくなった事が問題だった。
先日の聖女誘拐といい、何か一大事の前触れだと
いう事くらいは誰にでも理解できた。
そして反対に隣国では、王の突然の急死。
国を動かしていた根幹にある大臣たちは次々と謎
の死を遂げたらしい。
そして、のちに立ち上がったのが、かつてルイス
と仲の良かったケント・イスラットだった。
兄王が死んで全権を握ると、民衆をまとめ上げて
立ち上がったのだった。
それはもう、英雄でも出て来たかの盛り上がりだ
ったらしい。
そう、報告がなされていた。
聖女のお披露目パレードの最中、ジェイムスは国
を出ていった。
連れて行ったのは、女一名だけだという。
「すぐにルイスを探せっ!絶対にこの国を出さ
せるな」
聖女を国外へなど行かせるわけには行かない。
ましてや、一応一国の王子という身分まである
のだ。
もう、勝手に遊ばせておく時間はない。
早く婚儀を進めなくてはならなかった。
そんななか、検問を通り過ぎると、堂々と隣国へ
と向かっていたジェイムスとルイスはそのまま旅
を楽しむようにバリウス国へと入国した。
入国の際は冒険者ギルドのカードを出して身分を
証明する事ができたので、手続きもスムーズに終
わった。
あとは………。
途中で合流したスラン一向と一緒にバリウス国に
入ったのだった。
「城の方に直接来ていただけますか?」
「構わない。ルイス俺から離れるなよ?」
「はいっ…兄さん…」
スランの妹イーナは衰弱していて、今にも消えて
しまいそうなくらいに痩せ細っていた。
医者が匙を投げたとあってか、王族の死に立ち会
いたくないと、誰もが離れて行ったらしい。
「もう、頼れる人がいないんだ。済まないが、助
けて欲しい。」
必死なスランの言葉にルイスが頷く。
ジェイムスを経由して魔力増幅の魔道具を受け取
っておいて正解だったと思った。
こんな状態では、治すのも結構な魔力を消費して
しまいそうだったからだ。
聖女の祈りをありったけ注ぎ込むと、みるみるう
ちに顔色が良くなって行く。
そして、全く目を覚まさなかったイーナの眉が僅
に震えたのだった。
ゆっくりと目を覚ますと兄のスランはすぐに妹の
手を取ったのだった。
駆けつけた王は歓喜に満ち、ジェイムスとルイス
を歓迎した。
その日は歓迎の宴を催し、冒険者ギルドでの優遇
を提案してくれたが、丁重に断った。
夜は豪華な客室に通されると、隣の部屋には浴室
も完備されていた。
「一緒に入るか?」
「ジェイムス兄さんっ……//////」
「もう、兄弟じゃないだろ?俺はルイスさえいれ
ばいいから」
「うん……」
少し煮え切らないような返事を返した。
実は世界樹の浄化から気になっている事があった。
神と名乗った人も言っていたが、ルイスの中にい
るものから魔力を貰ったと言っていた。
それは……ルイスのお腹の中に新しい命があると
いう事だった。
これをどう言っていいのか迷う。
産まれてもしばらくは魔力を持たない人として生
活する事になるだろう。
それはルイスの魔力が少なかったせいだなんて情
けなくて仕方がない。
もっと、みんなと交わっていれば魔力も増えてい
て、子供の将来も、魔法という力を奪わずに済ん
だかもしれなかった。
分かってはいるけど、ジェイムスだけに一途にな
りたかった。
そんな裕太の気持ちが、どうしてもルイスの中に
あったからだった。
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