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覚醒編

28話 別れの挨拶

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黙ってしまったルイスにケントは聖女を攫って
自国へと帰ると言い出したのだった。

「俺はこのまま国に帰るよ。国王が死んで原因
 もわからず戸惑っているところに、俺が……
 唯一の王位継承権を持った王が現れれば民衆
 の期待は俺に向くだろう?隣国同士仲良くや
 れると思わないか?まぁ、聖女に逃げられた
 国としての汚名を着て貰う事になるがな」

「それって聖女を連れ出すって事?無理だよ?」

「無理じゃね~よ。教会への根回しは済んでるん
 だ。教皇が聖女を連れてくれば、すぐにでもこ
 こを出る。ルイスお前はどうするんだ?このま
 まこの国を乗っ取る気がないなら、一緒にくる
 か?」

ケントはルイスの唯一の友人と言える存在だと書
かれていた。
だが、それもゲームだった時までだ。

実際に現実になって仕舞えばはちゃめちゃな男
なのだ。

実の家族を手にかけたのだ。
ルイスも未遂だったが、その計画に一枚噛んで
いるのも否めない。

「僕は…行かない。何があっても僕はジェイム
 ス兄さんの側に居たいから」

「ふ~ん、まぁいいけど。じゃ~な。俺を止め
 るなら今だぞ?」

「止めないよ。自分のやった責任は自分で取る
 のが普通でしょ?ケント、これまでいい友人
 ではなかったけど…それでも、誰かの犠牲の
 上に成り立つ平和なんて長くは続かないよ」

「まさかルイスからそんな言葉が出るとはな…
 …元気でな」

立ち去っていくケントを見送ると、アスラと二
人っきりになってしまった。

この状況ではすごく気まずい。

「王子だったんだな……って事は兄さんっていう
 の第一王子のジェイムス殿下か……まさか冒険
 者としてダンジョンにいるとは思わねーよな…
 ……あわよくばあのポーション作って貰おうと
 思ったのによっ!」

「それってこの前使った奴?」

「そう、威力半端なかったからな~。それに眠ら
 せるやつもあれ、速攻だっただろ?あんなもん
 見た事ねーよ」

「それなら誰でも作れるよ?まぁ、教えないけど」

「だよな~」

一瞬、目が輝いたが、すぐに落ち込んだのだった。

それもそうだろう。
どこにでもある薬草で作ったものだと聞いたらさ
ぞ驚く事だろう。

誰もが同じ材料を入手する事には困らない。
ただ、ちょっと違うのは作った時の効能だろう。

同じもので作って違いが出る理由は、その製法に
ある。

時間がかかる催眠効果のある薬品は誰にでも作れ
る。
煙を浴びた瞬間即座に眠ってしまうような強力な
ものは聖女として目覚めてから作ったものだった。

要は聖女補正という奴だった。

実際に作ってから使うまでは半信半疑だったが、
実際目にして威力を理解したのだった。

「これなら、渡せるけど?」

それは回復ポーションだった。
重度の怪我にも対応可能な代物だった。

普通の怪我用ポーションと違うのは、あきらか
だった。
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