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覚醒編
16話 ヒーラーの役割
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どんなに言っても、ルイスは引かなかった。
最近、ジェイムスの体調がすぐれなかったので、
あえて避けていた。
その理由はルイスに負担をかけない為でもあっ
た。
だが。
どうしても怠くなってくる身体はどうにもなら
なかった。
そんな時、慌てて飛び出して来たルイスにばっ
たり会ったのだった。
ぶつかった拍子に抱き止めたが、その瞬間すう
っと気怠さが消えて行くのを感じた。
「ルイスっ!今……何をしたんだ!」
咄嗟に捕まえるとしっかり腕を掴むと逃がさな
いと、言わんばかりに問い詰めた。
「今日は、冒険者の依頼を受けに行くんでしょ?
僕も連れていってよ」
「それは……」
「それなら安全でしょ?」
回復術師を雇おうと思うと、結構ぼったくられる。
それは一人でダンジョンに行った時に、パーティ
ーを組んだ仲間に結構取られたからだ。
稼ぎの半分は回復術師に持って行かれた。
その理由は、毒などの状態異常にかかって全員が
ピンチになってもすぐに建て直せる事と、そんな
危機を乗り切れたのは誰のおかげかと言われると、
どうにも反論できないからだった。
確かに、ルイスがいればその問題は解決したよう
なものだった。
「だが……ダンジョンは薬草取りと違って危ない
んだぞ?」
「でも、そこへジェイムス兄さんも行くんでしょ?」
「……それは」
何を言っても無駄そうだった。
それに、ルイスがいなかったら、今頃また倒れて
いるところだった。
そう考えると問い詰めるどころか、感謝しても足
りないくらいだ。
ジェイムスはなかば諦めるように、ため息を漏ら
すと心を決めたのだった。
「分かった。だが、ルイスお前も登録してこい。
それが条件だ」
「うん。分かった」
ルイスもただ、授業を聞いているだけではなかっ
た。
授業で学んだ事を実際に作っていたのだ。
魔物に聞く催眠効果のある薬剤や、火に燃える石。
そして、空気に触れて数秒で爆発する薬品など。
結構実用的なものまで作っていた。
急いでカバンに詰めるとジェイムスの待ってい
る校門まで急いだ。
「お待たせ~」
「おぉ…って何を持って来たんだ?遊びじゃな
いんだぞ?」
「分かってるって…、ほら、行こう兄さん」
ギルドにいくと、まずは登録を済ませた。
あとは依頼を受けると、近場のダンジョンへと入
るだけだった。
「今日はここの一階層だけな……」
「うん。楽しみだな~」
「そんなに楽しいもんじゃないぞ?」
「でも、兄さんと一緒にいけるんだもん、いつも
僕の事避けてたでしょ?寂しいじゃん」
「それはだな……」
「体調悪いなら、それはちゃんと言ってよ。倒れ
てからじゃこっちも心配になるじゃん」
「それでもだ。俺は……もう王の座に着く気はな
いからな…」
「兄さん……」
なんだが、決意は固いとでも言うような言葉だっ
た。
そこへ、兄さんの知り合いっぽい女性が声をかけ
てきたのだった。
「ジェイムスさーん。久しぶりじゃない?今日は
一緒に行ってあげてもいいわよ?そこの坊やと
二人じゃ頼りないでしょ?」
色っぽく露出度の高い服を着ていて、肌をわざと
見せつけるようにしてくる。
「あの、すいませんが、僕が兄さんと一緒に行く
ので結構です」
「何よ?この子、知らないの?ダンジョンでは
ヒーラーが大事なの。いると居ないとでは大
きく生存が変わるのよぉ~」
自分を連れて行った方がいいとでも言っている
ようだった。
この世界のヒーラーは回復しかできない。
戦わず、ただヒールして稼ぎの半分を持て行く。
かなりのぼったくりなのだ。
「結構だ。行くぞルイス」
「はい」
前に雇ったことのあるジェイムスはその時に嫌と
いうほど思い知らされた。
だが、今はルイスがいる。
普通のヒーラーなどとは比べようもないくらいに
回復量が多いのだ。
うしろでまだ何か騒いでいる彼女を置いてダンジ
ョンへと向かったのだった。
最近、ジェイムスの体調がすぐれなかったので、
あえて避けていた。
その理由はルイスに負担をかけない為でもあっ
た。
だが。
どうしても怠くなってくる身体はどうにもなら
なかった。
そんな時、慌てて飛び出して来たルイスにばっ
たり会ったのだった。
ぶつかった拍子に抱き止めたが、その瞬間すう
っと気怠さが消えて行くのを感じた。
「ルイスっ!今……何をしたんだ!」
咄嗟に捕まえるとしっかり腕を掴むと逃がさな
いと、言わんばかりに問い詰めた。
「今日は、冒険者の依頼を受けに行くんでしょ?
僕も連れていってよ」
「それは……」
「それなら安全でしょ?」
回復術師を雇おうと思うと、結構ぼったくられる。
それは一人でダンジョンに行った時に、パーティ
ーを組んだ仲間に結構取られたからだ。
稼ぎの半分は回復術師に持って行かれた。
その理由は、毒などの状態異常にかかって全員が
ピンチになってもすぐに建て直せる事と、そんな
危機を乗り切れたのは誰のおかげかと言われると、
どうにも反論できないからだった。
確かに、ルイスがいればその問題は解決したよう
なものだった。
「だが……ダンジョンは薬草取りと違って危ない
んだぞ?」
「でも、そこへジェイムス兄さんも行くんでしょ?」
「……それは」
何を言っても無駄そうだった。
それに、ルイスがいなかったら、今頃また倒れて
いるところだった。
そう考えると問い詰めるどころか、感謝しても足
りないくらいだ。
ジェイムスはなかば諦めるように、ため息を漏ら
すと心を決めたのだった。
「分かった。だが、ルイスお前も登録してこい。
それが条件だ」
「うん。分かった」
ルイスもただ、授業を聞いているだけではなかっ
た。
授業で学んだ事を実際に作っていたのだ。
魔物に聞く催眠効果のある薬剤や、火に燃える石。
そして、空気に触れて数秒で爆発する薬品など。
結構実用的なものまで作っていた。
急いでカバンに詰めるとジェイムスの待ってい
る校門まで急いだ。
「お待たせ~」
「おぉ…って何を持って来たんだ?遊びじゃな
いんだぞ?」
「分かってるって…、ほら、行こう兄さん」
ギルドにいくと、まずは登録を済ませた。
あとは依頼を受けると、近場のダンジョンへと入
るだけだった。
「今日はここの一階層だけな……」
「うん。楽しみだな~」
「そんなに楽しいもんじゃないぞ?」
「でも、兄さんと一緒にいけるんだもん、いつも
僕の事避けてたでしょ?寂しいじゃん」
「それはだな……」
「体調悪いなら、それはちゃんと言ってよ。倒れ
てからじゃこっちも心配になるじゃん」
「それでもだ。俺は……もう王の座に着く気はな
いからな…」
「兄さん……」
なんだが、決意は固いとでも言うような言葉だっ
た。
そこへ、兄さんの知り合いっぽい女性が声をかけ
てきたのだった。
「ジェイムスさーん。久しぶりじゃない?今日は
一緒に行ってあげてもいいわよ?そこの坊やと
二人じゃ頼りないでしょ?」
色っぽく露出度の高い服を着ていて、肌をわざと
見せつけるようにしてくる。
「あの、すいませんが、僕が兄さんと一緒に行く
ので結構です」
「何よ?この子、知らないの?ダンジョンでは
ヒーラーが大事なの。いると居ないとでは大
きく生存が変わるのよぉ~」
自分を連れて行った方がいいとでも言っている
ようだった。
この世界のヒーラーは回復しかできない。
戦わず、ただヒールして稼ぎの半分を持て行く。
かなりのぼったくりなのだ。
「結構だ。行くぞルイス」
「はい」
前に雇ったことのあるジェイムスはその時に嫌と
いうほど思い知らされた。
だが、今はルイスがいる。
普通のヒーラーなどとは比べようもないくらいに
回復量が多いのだ。
うしろでまだ何か騒いでいる彼女を置いてダンジ
ョンへと向かったのだった。
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