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27話 暗殺

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城の中は慌ただしくメイド達が動き回っていた。

「ジェイムス兄さん、ケントはどこにいるんだ
 ろう」

「そうだな…毒薬と言ったが無色無臭なんだろ?
 それを飲ませるとしたら……食堂か、それとも
 貯蔵庫か…」

「食前酒?」

「そうか、必ず一本空ける。それなら確実に飲ま
 せられる!行くぞ」

ジェイムスの後についてルイスとセシリアがつい
て行く。


ワインセラーは室温を一定にしてある為、人の出
入りが少ない。

「今日の食事に出すワインは……」

見るとワインのコルクに何か小さな穴を開けた跡
が見て取れる。
あきらかに何かを入れたであろう跡だった。

それを手に取ると、まずは一旦出た。

「本当にこれだけかな………ケントの事だし一つ
 だけとは限らないかも……」

ルイスの言葉にも頷ける。
しかし、毒味でもわからない毒物となると、どう
やって見抜けばいいのだろう。

次の日になってからしか反応が出ないので、毒味
役も気づくことができないだろう。

気づいた時には全身から血を噴き出し、死に至る
らしい。

一体どうしたらいい?

明日は兄の誕生日を祝う祝祭が催される。

それに合わせてのテロ行為なのだ。

いっそケントを見つけられれば……。
そう思いながら通り過ぎる人を眺めると、ある
メイドと目があった。

メイドの方もルイスを見て驚いた顔をして、す
ぐに顔を伏せると逃げるように出て行く。

「あれ?………」

「どうした?行くぞ……」

「待って…」

どうしてだろう。
何かが引っ掛かる。
城にはメイドなどたくさんいるのだ。

多少目があったからって……いや、メイドが
そんな反応をするはずがないのだ。
だったら……さっきのは……。

「ケントだっ!」

「何っ!どこだ?」

「さっきの…メイドの格好してたけど、間違い
 ないよ」

「クソッ……そうきたか……」

城中のメイドの数は多い。
どこへでも入れて、メイド服ってだけで、好き
勝手に動けるのだ。

どこへ行ってきたかなど、調べるには範囲が広
すぎて今日中には無理そうだった。

「どうしよう……僕のせいだよね……」

「違う!ルイスのせいなんかじゃない。もう何
 か仕掛けているかもしれないからな、さっき
 のワインも処理したし、今日届いた食材も全
 部処理しておいた方がいいかもしれないな…」

過去の自分がやった事だとはわかっているが、
ちゃんと始末しておかなかった自分を責めた。
ルイスには、家族を恨む理由があった。

だけど、それは今の裕太には関係ない。

確かに幼い子供が耐えられないほどの仕打ちだ
ったが、これはフィクションなのだ。

実際の事じゃない。
今は、現実のような痛みはあるが、きっとクリ
アすれば元に戻れる。
そう思うしかなかった。

それにはセシリアに聖女として覚醒してもらわ
なければならない。

明日のジェイムスの誕生日に、王である父が亡
くなる。
そして、セシリアが覚醒するのだ。

ジェイムスは皇太子として学園を出て国の運営
に携わる。

それでも、セシリアに会いに夜中にこっそりと
アカデミーにお忍びでくるのだ。

その相引きシーンがとても綺麗に描かれていた
のを思い出す。

食材も、ワインも口に入るものは全部処理した。
これで王様が亡くなる事は防げただろうか?

もし、ルイスが本気で賛同していたのなら、今
のように捕まることもないし、ジェイムスに助
け出される事もなかったのだろう。

そう、考えると不思議とストーリーを変えてし
まっているのは自分なのではと思ってしまうの
だった。

自分という異分子が物語の結果を捻じ曲げてし
まっていると思うと、申し訳ない気がする。
それでも、誰かが死ぬと分かっているのだった
ら、それを阻止したいとおもってしまうのは甘
いだろうか……。
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