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18話 決意と覚悟
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次の日には数人の兵士が王宮からこっそり消され
たのだった。
それは王妃がよく使っていた兵士達だった。
夜のうちに地下牢に運ばれてくる手はずだったル
イスが、なぜか王と面談していた。
それを知って自分の息子であるジェイムスの仕業
であると報告を受けたのだった。
イザベラは朝からイライラして、落ち着かなかっ
た。
ずっとルイスを虐め抜いていただけに、これがバ
レれば、ただじゃ済まない。
もしかしたら、王妃の座も危うくなる。
いや、もう一人のエリス王妃は寝たきりで、もう
時期亡くなる手はずになっている。
そうなれば、自分を排除できないだろうと考えた
のだった。
だから、食事の時に、ジェイムスの横に座るルイ
スの姿を見た時、咄嗟に取り乱したのだった。
「なぜお前がここにいるっ……」
「イザベラ、私が呼んだのだ。昨日も言ったであ
ろう」
「ですがっ……この者は体調がすぐれず…安静に
するべきかと」
「それは兵士に暴行させていたせいでか?」
王の言葉に、イザベラ王妃は言葉を失った。
昨日捕らえられた兵士が朝食前に並べられた。
両腕を切断されていて、止血はされているものの、
もう長くはないだろう。
「こんな悍ましい事を誰が……」
「俺ですよ、母様。ルイスの腕を折った罰です。
そしてルイスに怪我を負わせ、死なせるところ
でした。そして… もう一人……」
そう言われて連れて来られたのは、イザベラ付き
のメイドだった。
縄に縛られて必死で抵抗して見せた。
「違います、私は何も……」
「この者はルイスに毎日ご飯を運んでいた者です。
しかも、囚人へ与えるような食事を与え、自分
は豪華な食事をとっていたのです。そして……
瀕死になったルイスを放置して、助ける事もし
なかった罪で処刑したいと思います」
ジェイムスの言葉に絶句した。
そこまでするのか……と。
だが、王族にしたその他の行為は許されるべき事
じゃなかった。
「いいだろう。だが……そこのメイドよ、お前は
自分の意思でやったのか?」
「いいえ、違います。わたしは………」
「こほんっ……、まさか宮中のメイドがそんな事
を勝手にしていたなんて常識知らずにも程があ
るわ。即刻処刑になさい」
イザベラはそれ以上言うなと、メイドに鋭い視線
を投げかけたのだった。
一度は黙ったが、すぐに意を決すると、口を開く。
「違います。王妃様に命じられてやった事です。
毎日虐待したあとも、手当などせず、放置し
ろと。そして、死んだらそれまでだとも言わ
れました」
「なっ!メイドの分際で……」
「母様、見苦しいです。」
ジェイムスははっきりとした態度で言った。
「ジェイムス、なぜそのような事を言うのです。
母はあなたの為に」
「俺の為にルイスを虐めていたのですか?そん
な事は望んでいません。もし、母様のせいで
王位を追われようとも、俺は…後悔しません」
「兄さん………」
「やっと。兄と呼んでくれたな、ルイス。」
ジェイムスは嬉しそうに、ルイスの髪を撫でた。
たのだった。
それは王妃がよく使っていた兵士達だった。
夜のうちに地下牢に運ばれてくる手はずだったル
イスが、なぜか王と面談していた。
それを知って自分の息子であるジェイムスの仕業
であると報告を受けたのだった。
イザベラは朝からイライラして、落ち着かなかっ
た。
ずっとルイスを虐め抜いていただけに、これがバ
レれば、ただじゃ済まない。
もしかしたら、王妃の座も危うくなる。
いや、もう一人のエリス王妃は寝たきりで、もう
時期亡くなる手はずになっている。
そうなれば、自分を排除できないだろうと考えた
のだった。
だから、食事の時に、ジェイムスの横に座るルイ
スの姿を見た時、咄嗟に取り乱したのだった。
「なぜお前がここにいるっ……」
「イザベラ、私が呼んだのだ。昨日も言ったであ
ろう」
「ですがっ……この者は体調がすぐれず…安静に
するべきかと」
「それは兵士に暴行させていたせいでか?」
王の言葉に、イザベラ王妃は言葉を失った。
昨日捕らえられた兵士が朝食前に並べられた。
両腕を切断されていて、止血はされているものの、
もう長くはないだろう。
「こんな悍ましい事を誰が……」
「俺ですよ、母様。ルイスの腕を折った罰です。
そしてルイスに怪我を負わせ、死なせるところ
でした。そして… もう一人……」
そう言われて連れて来られたのは、イザベラ付き
のメイドだった。
縄に縛られて必死で抵抗して見せた。
「違います、私は何も……」
「この者はルイスに毎日ご飯を運んでいた者です。
しかも、囚人へ与えるような食事を与え、自分
は豪華な食事をとっていたのです。そして……
瀕死になったルイスを放置して、助ける事もし
なかった罪で処刑したいと思います」
ジェイムスの言葉に絶句した。
そこまでするのか……と。
だが、王族にしたその他の行為は許されるべき事
じゃなかった。
「いいだろう。だが……そこのメイドよ、お前は
自分の意思でやったのか?」
「いいえ、違います。わたしは………」
「こほんっ……、まさか宮中のメイドがそんな事
を勝手にしていたなんて常識知らずにも程があ
るわ。即刻処刑になさい」
イザベラはそれ以上言うなと、メイドに鋭い視線
を投げかけたのだった。
一度は黙ったが、すぐに意を決すると、口を開く。
「違います。王妃様に命じられてやった事です。
毎日虐待したあとも、手当などせず、放置し
ろと。そして、死んだらそれまでだとも言わ
れました」
「なっ!メイドの分際で……」
「母様、見苦しいです。」
ジェイムスははっきりとした態度で言った。
「ジェイムス、なぜそのような事を言うのです。
母はあなたの為に」
「俺の為にルイスを虐めていたのですか?そん
な事は望んでいません。もし、母様のせいで
王位を追われようとも、俺は…後悔しません」
「兄さん………」
「やっと。兄と呼んでくれたな、ルイス。」
ジェイムスは嬉しそうに、ルイスの髪を撫でた。
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