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5話 兄弟
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少し時間はかかったが、自分で着替えると、早速
部屋を抜け出したのだった。
歓迎パーティーは一年生を歓迎するものでルイス
もその一人なのだ。
こっそり会場に入ると、煌びやかな食事と、中央
には着飾った女性達に囲まれる第一王子のジェイ
ムスの姿もあった。
隅っこではセシリアが食事に舌鼓を打っていた。
「セシリア、こんばんわ」
「ルイス、来てくれたのね!ここのお肉美味しい
わよ!」
「うん、本当に美味しそうだ。」
セシリアはルイスの事を平民だと思っているのか、
肉を取り分けてくれると、山のように盛った。
「食べれる時にしっかり食べないとね。あ、持っ
て帰るんだったらこれ貸そうか?」
セシリアは鞄の中からパックを取り出すと詰め込
みだしたのだった。
これはマナー的にどうなのだろう。
貴族がやる事ではなかった。
「セシリアは踊らなくていいの?」
「いいわよ。だって、私は……ダンス苦手なの」
ふわっと笑って見せたが、これはミニゲームでや
ったやつだった。
相手のステップに合わせて、コマンドを動かして
パートナーとダンスを踊ろう。
だったはずだ。
「ルイスくんも踊れないんでしょう?なら、一緒
だね?」
勝手に平民は踊れないと思っているようだった。
一応これでも第二王子なのだ。
教養は一通り叩き込まれている。
「なら、一曲…」
ルイスはセシリアに手を出すと、片膝をついた。
そして手の甲にキスをする。
「まぁ。ルイスくんったら……いいわよ、踊りま
しょ」
苦手だと言っていた割には様になっていた。
位が高い男性と踊るのは、こういう場では自分を
高めることに繋がる。
だから、あえて平民と踊ろうとする貴族はいない。
それが、第一王子のジェイムスに気に入られてい
るにもかかわらず、名も知らぬ平民と踊るセシリア
は、物好きだと言われる事だろう。
そう、それが本当に平民であったならの話だが…。
踊り終わると、少し疲れた。
「ルイスくんと踊ると、楽しいわ」
「それはよかった」
「ダンス踊れたのね!とってもサマになってい
たわ」
「それは……」
「セシリアっ!」
そこに聞き慣れた声が聞こえてきた。
ずっと避けてきたジェイムスの声だった。
ルイスの後ろから聞こえた声に、ビクッ反応
すると、すぐにその場を逃げようとした。
「ルイス?…待ちなさいっ……」
セシリアに用事があるはずのジェイムスは逃
げようとするルイスの腕を掴むと強く握り締
めてきたのだった。
「あのっ……痛いです」
「なぜ逃げるんだ?」
「それは……僕がこの場にふさわしくないから
です、殿下」
「……くっ……その呼び方で呼ぶなと言ったは
ずだが?」
こんな公の場で『兄さん』となど呼べるはずも
ない。
「殿下、お許しください」
「ジェイムスくん、やめてあげてよ。私が誘っ
たの!」
「セシリア、ルイスの事を知ってて誘ったのか?」
「ルイスくんの事?えぇ、分かってるわ。ここで
は貴族も平民もない、みんな平等だと聞いたわ」
一歩も譲らないセシリアにジェイムスはため息を
漏らしたのだった。
「そうだったな、だが……ルイス、少し付いて来
なさい。話があるんだ」
「待ってください、僕は………」
必死に抵抗するが、これ以上目立ちたくはなかっ
た為、おとなしく付いて行くことにした。
真っ暗な部屋に連れ込まれると、いきなり突き飛
ばされた。
「ぎゃっ……」
「ルイス、どうして俺を避けるんだ?」
「それは………僕とは身分も違うし…それに…」
王妃様がルイスを嫌っているから。
なんて言えなかった。
「昔はよく一緒にいたじゃないか?もう、何年話
していないと思っているんだ?なぜ朝の食事に
も来ないんだ?」
「……」
どれも許されていないからだった。
ジェイムスに話しかける事も、一緒に食事に来る事
も禁じられていた。
「明日の朝はちゃんときなさい。分かったな?」
「……それは」
「これないようなら、迎えに行く。話はそれだけだ」
ジェイムスはルイスを置いて出ていってしまったの
だった。
部屋を抜け出したのだった。
歓迎パーティーは一年生を歓迎するものでルイス
もその一人なのだ。
こっそり会場に入ると、煌びやかな食事と、中央
には着飾った女性達に囲まれる第一王子のジェイ
ムスの姿もあった。
隅っこではセシリアが食事に舌鼓を打っていた。
「セシリア、こんばんわ」
「ルイス、来てくれたのね!ここのお肉美味しい
わよ!」
「うん、本当に美味しそうだ。」
セシリアはルイスの事を平民だと思っているのか、
肉を取り分けてくれると、山のように盛った。
「食べれる時にしっかり食べないとね。あ、持っ
て帰るんだったらこれ貸そうか?」
セシリアは鞄の中からパックを取り出すと詰め込
みだしたのだった。
これはマナー的にどうなのだろう。
貴族がやる事ではなかった。
「セシリアは踊らなくていいの?」
「いいわよ。だって、私は……ダンス苦手なの」
ふわっと笑って見せたが、これはミニゲームでや
ったやつだった。
相手のステップに合わせて、コマンドを動かして
パートナーとダンスを踊ろう。
だったはずだ。
「ルイスくんも踊れないんでしょう?なら、一緒
だね?」
勝手に平民は踊れないと思っているようだった。
一応これでも第二王子なのだ。
教養は一通り叩き込まれている。
「なら、一曲…」
ルイスはセシリアに手を出すと、片膝をついた。
そして手の甲にキスをする。
「まぁ。ルイスくんったら……いいわよ、踊りま
しょ」
苦手だと言っていた割には様になっていた。
位が高い男性と踊るのは、こういう場では自分を
高めることに繋がる。
だから、あえて平民と踊ろうとする貴族はいない。
それが、第一王子のジェイムスに気に入られてい
るにもかかわらず、名も知らぬ平民と踊るセシリア
は、物好きだと言われる事だろう。
そう、それが本当に平民であったならの話だが…。
踊り終わると、少し疲れた。
「ルイスくんと踊ると、楽しいわ」
「それはよかった」
「ダンス踊れたのね!とってもサマになってい
たわ」
「それは……」
「セシリアっ!」
そこに聞き慣れた声が聞こえてきた。
ずっと避けてきたジェイムスの声だった。
ルイスの後ろから聞こえた声に、ビクッ反応
すると、すぐにその場を逃げようとした。
「ルイス?…待ちなさいっ……」
セシリアに用事があるはずのジェイムスは逃
げようとするルイスの腕を掴むと強く握り締
めてきたのだった。
「あのっ……痛いです」
「なぜ逃げるんだ?」
「それは……僕がこの場にふさわしくないから
です、殿下」
「……くっ……その呼び方で呼ぶなと言ったは
ずだが?」
こんな公の場で『兄さん』となど呼べるはずも
ない。
「殿下、お許しください」
「ジェイムスくん、やめてあげてよ。私が誘っ
たの!」
「セシリア、ルイスの事を知ってて誘ったのか?」
「ルイスくんの事?えぇ、分かってるわ。ここで
は貴族も平民もない、みんな平等だと聞いたわ」
一歩も譲らないセシリアにジェイムスはため息を
漏らしたのだった。
「そうだったな、だが……ルイス、少し付いて来
なさい。話があるんだ」
「待ってください、僕は………」
必死に抵抗するが、これ以上目立ちたくはなかっ
た為、おとなしく付いて行くことにした。
真っ暗な部屋に連れ込まれると、いきなり突き飛
ばされた。
「ぎゃっ……」
「ルイス、どうして俺を避けるんだ?」
「それは………僕とは身分も違うし…それに…」
王妃様がルイスを嫌っているから。
なんて言えなかった。
「昔はよく一緒にいたじゃないか?もう、何年話
していないと思っているんだ?なぜ朝の食事に
も来ないんだ?」
「……」
どれも許されていないからだった。
ジェイムスに話しかける事も、一緒に食事に来る事
も禁じられていた。
「明日の朝はちゃんときなさい。分かったな?」
「……それは」
「これないようなら、迎えに行く。話はそれだけだ」
ジェイムスはルイスを置いて出ていってしまったの
だった。
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