4 / 99
4話 ルイスの境遇
しおりを挟む
セシリアは地方貴族の出身だった。
中央貴族と違い、金銭的にも裕福とは決して言え
ない。
平民ほどではないにしろ、普通の貴族のようにな
んでも無造作に買うお金などないはずだった。
代わりに攻略対象にドレスやアクセサリーを買っ
て貰い、パーティーに出る事が必須だ。
その為にも、歓迎パーティーまでには1着でもド
レスをプレゼントして貰う為に、好感度を上げな
ければならないのだが……。
「セシリア、さっき第一王子が探してたけど?」
「ジェイムスくん?うん、なんかずっとしつこい
のよね~!」
「えっ、しつこいって……、歓迎パーティー用の
ドレスあるの?」
「あるわよ、お母さんの形見があるわ。私はそれ
を着て出るの!」
まさか、そんな展開になるとは思わなかった。
必ず攻略対象からプレゼントされなければ行けな
いのだと思っていた。
いや、そう設定したはずだった。
これは裕太達がプログラムした内容のはずだ。
なのに、キャラ達が勝手に動き出してしまってい
た。
「どうなってるんだ?」
「ルイスくん、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。そっかドレス持ってる
ならよかったよ」
「ルイスくんは着て行く服ある?なかったらお父
さんのでも貸そうか?」
「大丈夫だよ、僕はきっと……」
参加できないのだから…。
パーティーの初めに国王の挨拶があるのだ。
そこで第二王子の顔など見たくないと参加をし
ないようにと言い渡されていたからだった。
それが国王自身の言葉なのか、王妃の言葉なの
かは定かではない。
だからルイスはその日部屋から出てはいけない
のだ。
昔は仲のよかった兄とも、会っていない。
話す事さえも許されていないのだ。
その理由はきっと王妃の命令だと思う。
妾の子であるルイスに王城を彷徨かれては困るし、
家臣たちに、余計な考えをさせないためだろう。
聖女であるセシリアは皇后にも気に入られ、それ
をルイスは良く思わなかったはずだった。
でも、今のルイスはそんな事を考える事はしない。
なぜならば、無事に生きて成り行きを見守りたい
からだった。
「歓迎パーティー、気をつけていってきて。もし、
女性達から誘われても付いてっちゃダメだよ?
いいね?」
「なんだかルイスくん、お母さんみたい~。ふふ
っ分かったわ。じゃ~、パーティーでね!」
そう言って、立ち去って行く。
これでいい。
あまり関わらない方がいい。
ルイスは部屋に戻ると、食事が運ばれて来るまで
部屋の中でおとなしくしていたのだった。
夜遅くにやっと使用人が運んできた食事は質素な
物だった。
硬いパンとシャビシャビのスープ。
いつもの事ながら、これが王族の食事なのだろう
か?
それでも、叱られるよりはまだマシだった。
今日は、歓迎パーティーと題してセントラルアカ
デミーの講堂で盛大なパーティーが開催される事
になっていた。
きっと豪勢な食事も出ている事だろう。
クローゼットには一応、質素だが、しっかりした
生地の正装が仕舞われている。
使用人が着付けてくれるわけではないので、自分
で着れば行けない事もない。
チラリと食事を眺めると、考えなおしたくもなる
ほどの雑な食事に一瞬とある考えが頭をよぎった。
「ちょっとくらい見に行くだけなら……」
ルイスはクローゼットを開けると自分で着替えた
のだった。
中央貴族と違い、金銭的にも裕福とは決して言え
ない。
平民ほどではないにしろ、普通の貴族のようにな
んでも無造作に買うお金などないはずだった。
代わりに攻略対象にドレスやアクセサリーを買っ
て貰い、パーティーに出る事が必須だ。
その為にも、歓迎パーティーまでには1着でもド
レスをプレゼントして貰う為に、好感度を上げな
ければならないのだが……。
「セシリア、さっき第一王子が探してたけど?」
「ジェイムスくん?うん、なんかずっとしつこい
のよね~!」
「えっ、しつこいって……、歓迎パーティー用の
ドレスあるの?」
「あるわよ、お母さんの形見があるわ。私はそれ
を着て出るの!」
まさか、そんな展開になるとは思わなかった。
必ず攻略対象からプレゼントされなければ行けな
いのだと思っていた。
いや、そう設定したはずだった。
これは裕太達がプログラムした内容のはずだ。
なのに、キャラ達が勝手に動き出してしまってい
た。
「どうなってるんだ?」
「ルイスくん、どうしたの?」
「いや、なんでもないよ。そっかドレス持ってる
ならよかったよ」
「ルイスくんは着て行く服ある?なかったらお父
さんのでも貸そうか?」
「大丈夫だよ、僕はきっと……」
参加できないのだから…。
パーティーの初めに国王の挨拶があるのだ。
そこで第二王子の顔など見たくないと参加をし
ないようにと言い渡されていたからだった。
それが国王自身の言葉なのか、王妃の言葉なの
かは定かではない。
だからルイスはその日部屋から出てはいけない
のだ。
昔は仲のよかった兄とも、会っていない。
話す事さえも許されていないのだ。
その理由はきっと王妃の命令だと思う。
妾の子であるルイスに王城を彷徨かれては困るし、
家臣たちに、余計な考えをさせないためだろう。
聖女であるセシリアは皇后にも気に入られ、それ
をルイスは良く思わなかったはずだった。
でも、今のルイスはそんな事を考える事はしない。
なぜならば、無事に生きて成り行きを見守りたい
からだった。
「歓迎パーティー、気をつけていってきて。もし、
女性達から誘われても付いてっちゃダメだよ?
いいね?」
「なんだかルイスくん、お母さんみたい~。ふふ
っ分かったわ。じゃ~、パーティーでね!」
そう言って、立ち去って行く。
これでいい。
あまり関わらない方がいい。
ルイスは部屋に戻ると、食事が運ばれて来るまで
部屋の中でおとなしくしていたのだった。
夜遅くにやっと使用人が運んできた食事は質素な
物だった。
硬いパンとシャビシャビのスープ。
いつもの事ながら、これが王族の食事なのだろう
か?
それでも、叱られるよりはまだマシだった。
今日は、歓迎パーティーと題してセントラルアカ
デミーの講堂で盛大なパーティーが開催される事
になっていた。
きっと豪勢な食事も出ている事だろう。
クローゼットには一応、質素だが、しっかりした
生地の正装が仕舞われている。
使用人が着付けてくれるわけではないので、自分
で着れば行けない事もない。
チラリと食事を眺めると、考えなおしたくもなる
ほどの雑な食事に一瞬とある考えが頭をよぎった。
「ちょっとくらい見に行くだけなら……」
ルイスはクローゼットを開けると自分で着替えた
のだった。
128
お気に入りに追加
189
あなたにおすすめの小説

異世界で勇者をやったら執着系騎士に愛された
よしゆき
BL
平凡な高校生の受けが異世界の勇者に選ばれた。女神に美少年へと顔を変えられ勇者になった受けは、一緒に旅をする騎士に告白される。返事を先伸ばしにして受けは攻めの前から姿を消し、そのまま攻めの告白をうやむやにしようとする。

これはハッピーエンドだ!~モブ妖精、勇者に恋をする~
ツジウチミサト
BL
現実世界からRPGゲームの世界のモブ妖精として転生したエスは、魔王を倒して凱旋した勇者ハルトを寂しそうに見つめていた。彼には、相思相愛の姫と結婚し、仲間を初めとした人々に祝福されるというハッピーエンドが約束されている。そんな彼の幸せを、好きだからこそ見届けられない。ハルトとの思い出を胸に、エスはさよならも告げずに飛び立っていく。
――そんな切ない妖精に教えるよ。これこそが、本当のハッピーエンドだ!
※ノリと勢いで書いた30分くらいでさくっと読めるハッピーエンドです。全3話。他サイトにも掲載しています。
責任とってもらうかんな?!
たろ
BL
聖女として召喚された妹に巻き込まれた兄へ、「元の世界へ還りたいか?」と召喚した魔術師が問いかける。
還るために交わした契約。ただ、それだけのはずだった。
自由人魔術師×後ろ向き気味な一般人お兄ちゃん。
※作者はハピエンのつもりですが、人によってはメリバかもしれないです。
ムーン・エブでも掲載中です。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

ゲーム世界の貴族A(=俺)
猫宮乾
BL
妹に頼み込まれてBLゲームの戦闘部分を手伝っていた主人公。完璧に内容が頭に入った状態で、気がつけばそのゲームの世界にトリップしていた。脇役の貴族Aに成り代わっていたが、魔法が使えて楽しすぎた! が、BLゲームの世界だって事を忘れていた。
転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。
克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります!
辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる