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偶然の出会いと別れ

第一話 訳ありのダンジョン

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朝早くから冒険者ギルドを訪れると、何やらいつ
もの受付け嬢が何故か不自然な位にそわそわして
いた。

「どうかしたのかい?」
「いえ、なんでもないです。気を付けて行ってら
 っしゃい」
「あぁ、行ってくる」

エリーゼに声をかけられて嬉しそうだ。

「エリーゼさんって、やっぱり人気ですね」
「カナデ、それは言わないで欲しい。今は領主様
 の護衛騎士に過ぎないんだ」
「それでも、みんなから一目置かれてるって凄い
 と思いますよ」
「ナルサス、お前に言われても嬉しくないがな」

ナルサスにはいつも手厳しい。

可愛らしい見た目の神崎から話を振ると、エリー
ゼはなんでも教えてくれた。

ナルサスは神崎の奴隷なので、いつも手厳しい。
そしてナルサスはたまに騎士に混じって訓練をし
ているらしい。

「昨日も帰ってから訓練に混じっていたんですよ
 ね?」
「え、あぁ、もっと強くならなければ奏を護れな
 いからな」
「今でも強いのに……」
「此奴を甘やかさない方がいいと思うぞ。私に比
 べたらひよっこのようなものだからな。カナデ
 のバフがなければ他の騎士にもギリギリだった
 だろう」
「それは……ルイーズ領の騎士はエリーゼ様に扱
 かれているせいで他の騎士に比べて桁違いに強
 いんですからっ!」
「言い訳とは見苦しいぞ」

エリーゼには敵わないと言う事らしい。

今日はまだクリアされていないダンジョンへと向
かう事になっていた。
ただ、ちょっと訳ありらしく、あまり受ける人が
少ないという。

その理由は、行ってみて理解した。

場所はさほど遠くはない。
だが、問題はその場所に問題があった。

海辺の海岸沿いだったのだ。
潮が引いた時だけ現れるダンジョン。

潮が満ちてくれば、海に沈むとあって、時間制限
が課せられていたのだった。

「だったら、バフをかけて一気に行くのはどうで
 すか?」
「それでは、奏に負担がかかってしまうじゃない
 か?」
「そうだ!私だけにかけてくれ。すぐに倒してこ
 よう」

エリーゼが胸を張って言うものだから、ナルサス
が反論した。

「それなら俺が行きますよ!」
「いーや。私だ!」

二人とも引く気はないらしい。

「もう、一緒に行けばいいでしょ!」
「それは……カナデに負荷かがかかりすぎるから」
「そうですよ、前の事だって……」

二人とも、心配してくれるのは嬉しいが、これでは
レベルも一向に上がらないのだった。

「もう、俺が決めるから!二人とも、喧嘩しなで!」
「分かった」
「すまない」

本当にこう言う時はエリーゼさんが子供のように見
えてくる。

よっぽど神崎のかけたバフ状態が気に入ったのだろ
う。
前にも言っていたが、『癖になる』と。

「じゃ~、みんなで入って、すぐに倒して出てくる!
 いい?」
「はい」
「分かった」

二人が頷くと、ナルサスは奏を抱え上げた。

その間に、スピードバフ、強化バフ、防御バフ。
全部を一気にかけていく。

効き目は15分。
切れるまでどこまでいけるかが、問題であった。

あまり広くないといいのだが……。
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