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賢者の実験

第二十一話 神崎奏

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それから、少女は神崎奏の真似をさせられる事に
なった。
何度も言葉遣いや、行動を直され、話し方も矯正
された。

「神崎くん、これから森の奥に行くけど一緒に行
 く?」
「いや……わ……俺はここに残るよ……」
「一人で?ここは付いて行くって言うところでし
 ょ?」
「あ……うん…付いてくよ?」
「そう、なら、行こうか」
「そう……だな」

まだ、しどろもどろな言い方だったが、一応は
ちゃんと弘前の言う通りに行動するようになっ
た。

「そうだ!今日は魔物と戦ってみようとおもうん
 だけど。」
「えっ……魔物!?」
「そうだよ、神崎くんなら、簡単でしょ?」
「……それは……怖いんだけど…」

神崎の身体は魔法も、腕力も並外れた強さがある。
だから、やる気になれば、そこらの魔物では歯が
立たないくらには強いはずだった。

だが、中の精神年齢が低いせいか恐怖を感じてい
るようだった。

まずは慣らす為にと小型の魔物との戦闘経験を積
ませる事にしたのだった。

「きゃっ……やだっ、来ないでっ!!」

ゴンッと殴り飛ばすと、向かって来たはずのスラ
イムが弾け飛んだのだった。

思いっきり叩けばそうなるだろう。

一瞬何が起こったのかと神崎奏はきょろきょろし
ていたが倒したのだと分かると、少し自信がつい
たらしい。

「大丈夫だっただろう?神崎くんは弱くない…だ
 から自信を持って」
「わた……俺は強いの?」
「そうだよ。ほら、あそこにホーンラビットがい
 るだろう?そこに魔法を打ってみよう」
「魔法?」
「そう、魔法だよ。手を出して」

優しく教えてくる弘前は中身の少女と言うより、
神崎奏を見ているのだろう。

杖の先にあたたかい温もりを感じる。

その温もりを引き出すように、外へと向かって放
った。

「ファイアーボール!」

火球が手のひらから飛び出して魔物を直撃した。
炎に包まれ一瞬にして絶命した。

「すごいっ……」
「よくやったね、神崎くん」

そう言って頭を撫でられると、少し嬉しい。
自信もついて来ると、自主的に魔法を使うように
なった。

「康介、あれも俺が倒して来ていい?」
「あぁ、いいよ。少し動きが早いから気をつけな
 さい」
「はーい!」

元気よく返事をすると、走って行く。
最初の時と全く違う関係が出来た気がする。

初めての時は、戸惑っていたが、弘前に褒められ
る度に感情が豊かになって行った。

攫われたという自覚がないのだろか?

今では自分が神崎奏とでも思っているかのように
弘前との暮らしに馴染んできていたのだった。

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