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賢者の実験
第二十話 心の作り方
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弘前は店の少女をロープで縛ると、神崎に休むよ
うに言った。
勿論、今の神崎に言っても意味が分からないのか
弘前の横に座り込むだけだった。
神崎の身体の中には賢者の石が埋め込まれている。
これには何千、何万もの命が注ぎ込まれ作られた
物だ。
だから疲れる事も、眠る事もしなくても平気だっ
た。
いくら平気といえど、見ている方が疲れるので、
ちゃんと休憩を取らせるようにしている。
「神崎くん、せめて横になって目を瞑って。眠く
なければ無理に寝なくてもいいからさ…」
弘前は目の前のもう一個のベッドを指さしていう。
のそのそと立ち上がると、本当に横にはなった。
ただ、何かするわけでもなく。
ただ、垂直に横になっただけだった。
朝になってもそのままだった事には、笑えて来た。
「神崎くん。起きていいいよ。少しは疲れが取れ
た?」
「……」
「そっか、今日は昨日の子を使って君に心を入れ
ようと思うんだ~」
そう言うと、すでに目を覚ましていた少女を見下
ろしたのだった。
「お客さんっ……なんなんですか!ここはどこで
すか!どうしてこんな……」
声が震えているのがわかる。
「君から見て彼はどうかな?」
「彼って……こ…こわいです……だって一言も話
してないじゃないですか?もしかして話せない
の?」
「そうだね…。彼には心がないんだよ。だから、
君がその心になって欲しいんだ。言っただろう
?出前を頼みたいって…」
「……」
ゴクリッと唾を飲み込むと、弘前はにっこりと
不適な笑顔を見せた。
そして、杖の先が光ると少女の意識は遠のいて
行った。
次に目を覚ました時には、拘束されていた手足
が自由になっていた。
「あれ……逃げれるっ……」
少女は立ち上がると外に向かった飛び出した。
まだ街のそばだと思っていた。
だから、走ればすぐに店に戻れる。
そう考えていた。
だが、外に出た瞬間見た事もないような景色を
目にする事になった。
家は崖の上に建っており、その周りを鬱蒼とし
た森に囲まれていた。
どこまで行っても森で、街の影すら見えない。
王都の一角に店はあったはずだった。
それなのに、王都の側にこんな深い森はなかっ
たはずだ。
その場に崩れるように座り込むと、違和感を覚
えた。
視線が高い…?
さっきまでいた家に入ると鏡を覗き込んだ。
すると、そこに写っているのは、昨日まで無表
情だったあの客の連れの顔だった。
「うそっ……そんな……」
声も低い男の声だ。
少女は戸惑っていた。
こんな姿で戻っても、自分だと分かってくれる
だろうか?
いや、それよりもこれは一体どうなっているの
だろう。
夢なのだろうか?
「神崎くん。起きたかい?」
「お客さん!こんなの酷いです!私、こんな姿」
「神崎くん、君は自分の事を私とは言わないよ?
俺だっただろう?」
いきなりの鋭い声に、ビクッと身体が震えた。
「君は神崎奏。そうだろう?ほら、僕のことは
康介って呼んでよ?いいね?」
笑顔のはずが、目は笑ってはいなかった。
うに言った。
勿論、今の神崎に言っても意味が分からないのか
弘前の横に座り込むだけだった。
神崎の身体の中には賢者の石が埋め込まれている。
これには何千、何万もの命が注ぎ込まれ作られた
物だ。
だから疲れる事も、眠る事もしなくても平気だっ
た。
いくら平気といえど、見ている方が疲れるので、
ちゃんと休憩を取らせるようにしている。
「神崎くん、せめて横になって目を瞑って。眠く
なければ無理に寝なくてもいいからさ…」
弘前は目の前のもう一個のベッドを指さしていう。
のそのそと立ち上がると、本当に横にはなった。
ただ、何かするわけでもなく。
ただ、垂直に横になっただけだった。
朝になってもそのままだった事には、笑えて来た。
「神崎くん。起きていいいよ。少しは疲れが取れ
た?」
「……」
「そっか、今日は昨日の子を使って君に心を入れ
ようと思うんだ~」
そう言うと、すでに目を覚ましていた少女を見下
ろしたのだった。
「お客さんっ……なんなんですか!ここはどこで
すか!どうしてこんな……」
声が震えているのがわかる。
「君から見て彼はどうかな?」
「彼って……こ…こわいです……だって一言も話
してないじゃないですか?もしかして話せない
の?」
「そうだね…。彼には心がないんだよ。だから、
君がその心になって欲しいんだ。言っただろう
?出前を頼みたいって…」
「……」
ゴクリッと唾を飲み込むと、弘前はにっこりと
不適な笑顔を見せた。
そして、杖の先が光ると少女の意識は遠のいて
行った。
次に目を覚ました時には、拘束されていた手足
が自由になっていた。
「あれ……逃げれるっ……」
少女は立ち上がると外に向かった飛び出した。
まだ街のそばだと思っていた。
だから、走ればすぐに店に戻れる。
そう考えていた。
だが、外に出た瞬間見た事もないような景色を
目にする事になった。
家は崖の上に建っており、その周りを鬱蒼とし
た森に囲まれていた。
どこまで行っても森で、街の影すら見えない。
王都の一角に店はあったはずだった。
それなのに、王都の側にこんな深い森はなかっ
たはずだ。
その場に崩れるように座り込むと、違和感を覚
えた。
視線が高い…?
さっきまでいた家に入ると鏡を覗き込んだ。
すると、そこに写っているのは、昨日まで無表
情だったあの客の連れの顔だった。
「うそっ……そんな……」
声も低い男の声だ。
少女は戸惑っていた。
こんな姿で戻っても、自分だと分かってくれる
だろうか?
いや、それよりもこれは一体どうなっているの
だろう。
夢なのだろうか?
「神崎くん。起きたかい?」
「お客さん!こんなの酷いです!私、こんな姿」
「神崎くん、君は自分の事を私とは言わないよ?
俺だっただろう?」
いきなりの鋭い声に、ビクッと身体が震えた。
「君は神崎奏。そうだろう?ほら、僕のことは
康介って呼んでよ?いいね?」
笑顔のはずが、目は笑ってはいなかった。
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