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賢者の実験
第十五話 消えたクラスメイト
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何も言葉に出来なかった。
弘前に問い詰められ、言い訳を考えていたのだが、
すぐに息が詰まった。
後ろに来ていた神崎の腕が日比野の心臓を貫き、真
っ赤に染まった手が日比野から生えていたからだっ
た。
「ぐふっ……うそ……だろ……」
「だって、もう日比野くんが生きてる理由がないん
だよ。」
少しの間、ただ生かされただけだったのだ。
考えないようにしていたけど…弘前には必要とはさ
れていなかった……そう言う事なのだろう。
考えていなかった訳ではない。
同郷というよしみで、見逃してくれると思っていた。
弘前とは仲も悪くないと、そう思っていた。
だが、ここではっきりしたのだった。
弘前にとって、大事なのはたった一人だけだったの
だ。
それを復活させられたのだから。もうなんの未練も
ないのだろう。
しかも、肉体強化をしていた江口をあっさりと倒し
てしまったのだから、普通じゃない。
弘前の言葉を遠くに聞きながら意識が遠のいていっ
た。
朝になって、日比野がいなくなったと騒ぎになった
が、誰も彼を見つける事は出来なかった。
弱気になって逃げ出したのだろう。
そう、噂されるようになっていった。
それと同時刻。
長野達は娼館に入り浸りになっていた江口の行方を
探していた。
いつもうし娘を指名しては、朝まで出てこない江口
だったが、流石に全く城に帰ってこないと言うのは
おかしかった。
お金が続くはずがないのだ。
「おい、洋介の奴最近見ないけど、どこにいるんだ?」
「そう言えば見てねーな…この前娼館の前で見かけ
て以来戻ってねーんじゃね?仁、気になるのか?」
上島は長野の言葉に、心配はいらないと付け加えた。
「子供じゃねーんだしよ。すぐに帰ってくるだろ?
俺ら最強っぽいしさ~」
ダンジョンでのことを言っている。
結局生きて帰ってこれたのは長野を含め3人だけだっ
た。
それ以外はすぐに脱落し、一人に関しては生きては
いるがそれも、長くはないだろう。
「そう言えば弘前の奴どこにいったんだろうな~。
あいつには奪われた恨みがあるからな~」
「そうだな…」
「仁は悔しくないのか?」
「悔しいが……今の俺たちじゃ敵わねーだろ?あい
つ絶対に何か隠してやがる気がすんだよ。」
「あぁ~、それなっ!でもさ~、俺らがここに来た
のってそう言えば弘前がやった事だよな?」
「……」
考え直すと、この世界に来るきっかけは弘前だった。
教室に書かれた落書きも。
光に包まれた時の魔法陣を発動させるきっかけも。
全部が、弘前を中心に動いていた。
「やっぱり、あいつを誘き寄せる何かがいるなっ!」
「何かってなんだよ?」
「あいつが言ってただろ?俺らから奪ったものはな
んだったか覚えてないのか?」
「星の雫のカケラだろ?赤いやつ」
「それを奪っておいて王には渡さなかったんだぞ?
なら、それを本当に欲しているのは誰だ?」
「なるほどな……弘前自身か……」
納得が行くと、再び城の外へと向かう。
向かった先は冒険者ギルドだった。
まだ未開発もしくは、クリアされていないダンジョ
ンを探せばいい。
ちょうど時間はたっぷりあるのだ。
遊びは今日までだ。
そう言いながら二人で冒険者ギルド登録と依頼を見
に行くのだった。
弘前に問い詰められ、言い訳を考えていたのだが、
すぐに息が詰まった。
後ろに来ていた神崎の腕が日比野の心臓を貫き、真
っ赤に染まった手が日比野から生えていたからだっ
た。
「ぐふっ……うそ……だろ……」
「だって、もう日比野くんが生きてる理由がないん
だよ。」
少しの間、ただ生かされただけだったのだ。
考えないようにしていたけど…弘前には必要とはさ
れていなかった……そう言う事なのだろう。
考えていなかった訳ではない。
同郷というよしみで、見逃してくれると思っていた。
弘前とは仲も悪くないと、そう思っていた。
だが、ここではっきりしたのだった。
弘前にとって、大事なのはたった一人だけだったの
だ。
それを復活させられたのだから。もうなんの未練も
ないのだろう。
しかも、肉体強化をしていた江口をあっさりと倒し
てしまったのだから、普通じゃない。
弘前の言葉を遠くに聞きながら意識が遠のいていっ
た。
朝になって、日比野がいなくなったと騒ぎになった
が、誰も彼を見つける事は出来なかった。
弱気になって逃げ出したのだろう。
そう、噂されるようになっていった。
それと同時刻。
長野達は娼館に入り浸りになっていた江口の行方を
探していた。
いつもうし娘を指名しては、朝まで出てこない江口
だったが、流石に全く城に帰ってこないと言うのは
おかしかった。
お金が続くはずがないのだ。
「おい、洋介の奴最近見ないけど、どこにいるんだ?」
「そう言えば見てねーな…この前娼館の前で見かけ
て以来戻ってねーんじゃね?仁、気になるのか?」
上島は長野の言葉に、心配はいらないと付け加えた。
「子供じゃねーんだしよ。すぐに帰ってくるだろ?
俺ら最強っぽいしさ~」
ダンジョンでのことを言っている。
結局生きて帰ってこれたのは長野を含め3人だけだっ
た。
それ以外はすぐに脱落し、一人に関しては生きては
いるがそれも、長くはないだろう。
「そう言えば弘前の奴どこにいったんだろうな~。
あいつには奪われた恨みがあるからな~」
「そうだな…」
「仁は悔しくないのか?」
「悔しいが……今の俺たちじゃ敵わねーだろ?あい
つ絶対に何か隠してやがる気がすんだよ。」
「あぁ~、それなっ!でもさ~、俺らがここに来た
のってそう言えば弘前がやった事だよな?」
「……」
考え直すと、この世界に来るきっかけは弘前だった。
教室に書かれた落書きも。
光に包まれた時の魔法陣を発動させるきっかけも。
全部が、弘前を中心に動いていた。
「やっぱり、あいつを誘き寄せる何かがいるなっ!」
「何かってなんだよ?」
「あいつが言ってただろ?俺らから奪ったものはな
んだったか覚えてないのか?」
「星の雫のカケラだろ?赤いやつ」
「それを奪っておいて王には渡さなかったんだぞ?
なら、それを本当に欲しているのは誰だ?」
「なるほどな……弘前自身か……」
納得が行くと、再び城の外へと向かう。
向かった先は冒険者ギルドだった。
まだ未開発もしくは、クリアされていないダンジョ
ンを探せばいい。
ちょうど時間はたっぷりあるのだ。
遊びは今日までだ。
そう言いながら二人で冒険者ギルド登録と依頼を見
に行くのだった。
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