弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ？〜

賢者の実験

第十二話 命の重さ

事の始まりは、隣国の亜人の国で起こった。

いきなり大きな花火が夜に上がり、城内が騒がしく
なった時だった。

王城の一室で大事に育てられてきた、皇女が無惨に
も惨殺されたのだった。

物音がして兵士が駆けつけた時には、黒装束の男が
その場に立っていたと言う。
捕まえると、牢に入れて尋問が始まった。

もちろん、奴隷紋が付いていたので主人以外の命令
など聞かない。

そこで、奴隷紋の魔力でよく使われている商人を調
べると奴隷売買をしているアルスラ帝国を突き止め
たというわけだった。

もちろん、それこそが弘前の作戦だった。

魔術でズタズタにして弘前はその場を逃げ、奴隷を
そこに残した。

多分、そのまま殺されるだろうが、そんな事はどう
でもいいのだ。

大量の命を取れる口実が欲しいのだ。

それには、戦が一番効率がいい。

命を荒稼ぎするなら、これほどうってつけの場所は
ない。
そして、今回も賢者が参戦すると公表したのだった。

兵士達の指揮も高まり、いつでも出陣できるように
と準備をしていたのだった。


帝国中に知らせが行くと、各地の貴族達や、領主達
が私兵を送り込んできた。

迎え撃つのは森の中では、分が悪い。
弘前はあえて先に出ると、森の付近一体を焼き尽く
したのだった。

焼け野原と化した戦場に敵の姿を見つけた。
兵士の数は向こうのが多い上に、身体能力も亜人の
方が高い。

ただ唯一、こちらの強みは賢者の魔法だった。

戦が始まって、1日が経たないうちに決着がついた
のだった。

これは戦いではない。
虐殺だった。

弘前は炎など使えない。
ただ、少し火を起こしてそれを一気に燃え上がらせ
るだけだった。

それと同様で、光の一瞬で最前列にいた兵士達の目
を奪った。
そのうちに氷の刃がいく層にも重なって飛んで行っ
た。

辺りは死体の山になっていた。

命が尽きる瞬間、何かの力が働き、賢者の手元に吸
い寄せられるように何かが入っていく。

城に伝令の知らせが届いたのは夕刻になる頃だった。

『賢者様のお力で完全勝利』

と、知らせが入ったのだった。
最後まで足掻いたせいで、生き残った者はおらず、
全て弘前の思惑通りになったのだった。

残された住民には攻めてきた責任を負わせる為に、
重税を化した。

帰ってきた弘前の手の中に握られていた石は大きく
なっており、前に見た時よりも輝きが増していたの
だった。