弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也

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賢者の実験

第十話 賢者という人物

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地下で賢者に会ってから、日比野は弘前の手足とし
て動いていた。

食事は適当に済ませていたのか、この部屋からあま
り出る事もないようだった。

この前はたまたま、出かけただけに過ぎなかったら
しい。

そして、賢者の弟子として城の中に個人の実験室を
置かせて貰っているらしい。

そして不思議な事に、弘前はだいぶんと前からここ
にいる事になっているようだった。

それも、召喚される前の大きな戦争にも参加してい
たという。

訓練中に賢者の事を聞いた時に、他の兵士達の反応
は様々だったからだ。

「今日は来てくれてよかったです、一緒に訓練頑張
 りましょうね。」
「この前は心配かけてしまい……」
「日比野様が元気になってくれてよかったです。そ
 れで聞きたい事とは?」

あらかじめ話が聞きたいと言っておいたせいか気軽
に教えてくれるつもりらしかった。

「聞きたいのは賢者様の事です。この城に住んでま
 すよね?」

賢者の名前を出すと、嬉しそうに語ってくれた。

「賢者様はこの国の恩人のような方ですよ。負けると
 思われた戦争も、勝利に導いてくださったし、負傷
 者も少なく済みました。王族も生きて捕らえるだけ
 でなく、生かしておいて奴隷として働かせていると
 か!本当に慈悲深い方です」

奴隷を容赦なく殺した弘前とは思えない話だった。

圧倒的武力で勝利したとあったが詳しく聞くと、広範
囲魔法で一瞬のうちに、戦況をひっくり返したのだと
いう。

「それって……戦いって言うんですか?」
「どちらかが負けを認めないと戦は終わりませんから
 ね~、それに攻めて来たのは向こうですから、自業
 自得ですよ」
「あれ?そうだっけ?隣接した農村から食糧を調達し
 ようとして断ったから攻めたんじゃ……」
「あれ?そうだっけ?でも。弱小国家が逆らう方が悪
 いだろ?」

兵士にとっては英雄的な存在らしい。

ただ、歴代の賢者達は、決して国同士の戦には手を出
さなかったという。

前回の戦に参戦したのが始めての戦いになったと言う。
火力が違いすぎて、話にならなかったと誰もが言った。

「どうして前回だけ、賢者様は戦に参戦したんでしょ
 うか?」
「それは分かりませんが、丁度その時に賢者様の師匠
 が倒れられて、この国の面倒になっていたと聞きま
 した」
「なるほど……一宿一飯の恩という事ですかね?」
「賢者様はお優しいお方ですから」

今の弘前からは優しさのかけらも垣間見る事はなかっ
た。
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